中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」をめぐり、インドと中国の関係が悪化している。インド周辺国で、中国が道路や港湾の整備を支援し、影響力を強めているからだ。インド、中国、ブータン3カ国の国境付近での中印両国軍のにらみ合いは、26日で40日間になった。
従来、インドの勢力圏とみられてきたブータンへの中国の接近に、インドは抵抗しているが、事態解決の糸口は見えず、モディ印政権は対中外交で最大の試練を迎えている。
小規模衝突の可能性
【ニューデリー=岩田智雄】中印部隊のにらみ合いは、6月16日に始まった。中国人民解放軍が道路を建設している場所は、インド領ではなく、3カ国の境界周辺ドクラム地区のブータンと中国が領有権を主張している地域にある。中印は互いに、相手国軍の撤退を求めている。
シヤム・サラン元印外務次官は、ニューデリーでの講演で「中国は、インド軍のこれほどの反発を予想していなかった。中国はこれまでも、ブータン領を少しずつ削り取ってきたことに加え、南シナ海でも、第三国の本格的な抵抗には遭わず、成功を収めてきたからだ」と分析する。
インドが今回の道路建設に強く反発している理由は、現場南方の「シリグリ回廊」が、インドの主要部と北東部を結ぶ「ニワトリの首」とも呼ばれる細長い戦略的に重要な地域に当たり、中国軍の南下を許せば、国土が東西に分断されかねないことにあるが、
サラン氏は、「中国は重機と大量の兵員を送り込んでいる。ブータンとの係争地に永久的に居座ろうとしている兆候がある」と指摘し、「今後、小規模な衝突に発展する可能性もある」と警告した。
一方の中国は、道路建設を行っている地域は中国領だとして、インドに一歩も譲らない姿勢を明確にしている。そればかりか、中国軍報道官は、インドに対し「歴史の教訓から学び、戦争を求めるのをやめることを望む」と述べて、インドが中国に敗退した1962年の国境紛争の苦い経験を想起させている。
サラト・チャンド印陸軍副参謀長は25日のセミナーで、「中国は今後もインドにとり、脅威であり続ける」と反発した。
http://www.sankei.com/world/news/170726/wor1707260039-n1.html
【中印国境対峙40日】強硬姿勢崩さぬ中国 インフラで領有の既成事実化図る
【北京=藤本欣也】中国側は連日、官製メディアなどを通じてインドを激しく非難し、インド軍の撤退を要求している。
問題となっているドクラム地区での道路建設は、単なるインフラ整備ではなく、係争地を自国領に組み込む国策の一環との見方が強い。習近平政権は南シナ海における人工島の造成同様、断固として推進していく構えだ。
「何度も言っていることだが、問題を解決するには、中国領に不法に越境してきたインド部隊の撤退しかない」。中国外務省の陸慷報道官は26日の記者会見でこう強調した。
中国メディアも強硬だ。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は21日付の社説で、領土を失わない限り平和が得られないというなら、「14億の中国人民はそんな平和は要らない」と主張。
さらに「中国とインドの軍事費の格差は4対1、国内総生産(GDP)は5対1だ」と指摘した上で、「インドが1962年(の中印紛争)と同様の過ちを再び犯さないよう希望する」と警告した。
中国側が強硬姿勢を示す背景には、習国家主席が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」への参加を拒否するなど、中国の思い通りにならないインドへの反発が底流にある。
中国人民解放軍のシンクタンク、軍事科学院の趙小卓・大校(上級大佐)は26日付の中国英字紙、チャイナ・デーリーに寄稿し、「なぜ、インドは中国の道路建設に敏感なのか」と疑問を提示。
インドはインフラ整備を経済発展ではなく、軍事上の観点だけで見ているとして、一帯一路への参加を拒否する同国の姿勢をも批判した。
http://www.sankei.com/world/news/170726/wor1707260043-n1.html
(>>2以降に続く)
昨年10月、新興5カ国(BRICS)首脳会議に同席したインドのモディ首相と中国の習近平国家主席
従来、インドの勢力圏とみられてきたブータンへの中国の接近に、インドは抵抗しているが、事態解決の糸口は見えず、モディ印政権は対中外交で最大の試練を迎えている。
小規模衝突の可能性
【ニューデリー=岩田智雄】中印部隊のにらみ合いは、6月16日に始まった。中国人民解放軍が道路を建設している場所は、インド領ではなく、3カ国の境界周辺ドクラム地区のブータンと中国が領有権を主張している地域にある。中印は互いに、相手国軍の撤退を求めている。
シヤム・サラン元印外務次官は、ニューデリーでの講演で「中国は、インド軍のこれほどの反発を予想していなかった。中国はこれまでも、ブータン領を少しずつ削り取ってきたことに加え、南シナ海でも、第三国の本格的な抵抗には遭わず、成功を収めてきたからだ」と分析する。
インドが今回の道路建設に強く反発している理由は、現場南方の「シリグリ回廊」が、インドの主要部と北東部を結ぶ「ニワトリの首」とも呼ばれる細長い戦略的に重要な地域に当たり、中国軍の南下を許せば、国土が東西に分断されかねないことにあるが、
サラン氏は、「中国は重機と大量の兵員を送り込んでいる。ブータンとの係争地に永久的に居座ろうとしている兆候がある」と指摘し、「今後、小規模な衝突に発展する可能性もある」と警告した。
一方の中国は、道路建設を行っている地域は中国領だとして、インドに一歩も譲らない姿勢を明確にしている。そればかりか、中国軍報道官は、インドに対し「歴史の教訓から学び、戦争を求めるのをやめることを望む」と述べて、インドが中国に敗退した1962年の国境紛争の苦い経験を想起させている。
サラト・チャンド印陸軍副参謀長は25日のセミナーで、「中国は今後もインドにとり、脅威であり続ける」と反発した。
http://www.sankei.com/world/news/170726/wor1707260039-n1.html
【中印国境対峙40日】強硬姿勢崩さぬ中国 インフラで領有の既成事実化図る
【北京=藤本欣也】中国側は連日、官製メディアなどを通じてインドを激しく非難し、インド軍の撤退を要求している。
問題となっているドクラム地区での道路建設は、単なるインフラ整備ではなく、係争地を自国領に組み込む国策の一環との見方が強い。習近平政権は南シナ海における人工島の造成同様、断固として推進していく構えだ。
「何度も言っていることだが、問題を解決するには、中国領に不法に越境してきたインド部隊の撤退しかない」。中国外務省の陸慷報道官は26日の記者会見でこう強調した。
中国メディアも強硬だ。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は21日付の社説で、領土を失わない限り平和が得られないというなら、「14億の中国人民はそんな平和は要らない」と主張。
さらに「中国とインドの軍事費の格差は4対1、国内総生産(GDP)は5対1だ」と指摘した上で、「インドが1962年(の中印紛争)と同様の過ちを再び犯さないよう希望する」と警告した。
中国側が強硬姿勢を示す背景には、習国家主席が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」への参加を拒否するなど、中国の思い通りにならないインドへの反発が底流にある。
中国人民解放軍のシンクタンク、軍事科学院の趙小卓・大校(上級大佐)は26日付の中国英字紙、チャイナ・デーリーに寄稿し、「なぜ、インドは中国の道路建設に敏感なのか」と疑問を提示。
インドはインフラ整備を経済発展ではなく、軍事上の観点だけで見ているとして、一帯一路への参加を拒否する同国の姿勢をも批判した。
http://www.sankei.com/world/news/170726/wor1707260043-n1.html
(>>2以降に続く)
昨年10月、新興5カ国(BRICS)首脳会議に同席したインドのモディ首相と中国の習近平国家主席