【ハンブルク=宮下日出男、小雲規生】ドイツ北部ハンブルクで8日に閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会議は「米国第一」を掲げるトランプ政権下での国際協調の行方を占う試金石だった。
貿易や気候変動を中心に米欧や中露の関係は錯綜。浮かび上がったのは国際社会のリーダー役不在で世界が混沌とする姿だ。
争点となった貿易をめぐる初日7日の討議。欧州メディアによると、各首脳が自由貿易を話し合う中、トランプ氏は巨額の対中国赤字への不満を述べ、「公正な貿易」を訴えるなど不協和音が目立った。
「われわれは開かれた市場でなければならない」
主張したのは中国の習近平国家主席。プーチン露大統領も鉄鋼の輸入制限を検討する米国を批判した。気候変動では中露に、インドなど新興5カ国(BRICS)のメンバーが加勢。5首脳は事前に会合を開き、協調を確認していた。
「習氏が話すとき、トランプ氏は腕を組み、難しい顔をしていた」。欧州の外交筋は振り返る。
欧州なども自由貿易推進で歩調をそろえる。ただ、中露にはそれぞれの思惑もちらつく。
中国メディアによると、新たなグローバル化の“リーダー”を目指す習氏は経済圏構想「一帯一路」こそ「G20の目的」にかなうともアピール。プーチン氏は独紙で欧米の経済制裁を「隠れた保護主義」とし、「G20の原則に矛盾する」と牽制した。
ただ、G20では米国が孤立する「19対1」が唯一の構図だったわけではない。
「一部G20メンバーの偽善の証明だ」
7日の開幕直前、欧州連合(EU)のトゥスク大統領が批判した先は中露。EUは地中海を渡る移民船対策で密航業者への国連制裁の提案を目指したが、両国の反対で実現しなかった。大量の犠牲者がでる密航はEUには人道問題。中露とは気候変動などで組んでも価値観は共有できない。
一方、G20の中で結束して存在感を高める中露に対し、トランプ氏は独自に両国との間合いをとる。
シリア南西部の停戦に合意した7日のプーチン氏との初会談は2時間以上に及び、2人は一気に打ち解けた。「相手の言葉を十分に理解し、すぐに分析して答える」。トランプ氏に対するプーチン氏の“高評価”を披露したティラーソン米国務長官は満足げだ。
習氏とも最後まで正式日程が決まらなかった会談を帰国前のぎりぎりに設定。貿易問題で牽制しつつも、中国へのいらだちを募らせる北朝鮮への対応では「諦めない」と忍耐の姿勢だ。
トランプ氏がハンブルクで正式会談した首脳は7カ国。米露会談のため気候変動の討議を退席した。「1対1」を重視するトランプ氏に米紙ニューヨーク・タイムズは「孤立を楽しんでいるようだ」と皮肉った。
議長国ドイツのメルケル首相は8日の閉幕会見で、2008年に金融危機を受け第1回首脳会議が成果を出した歴史を想起し、「1人より共に行動する方が多くを達成できる。それは今も有効だ」と訴えた。
ただ、英紙フィナンシャル・タイムズは当時会議を主導した米国の求心力が低下する今、「戦後、これほど世界のリーダーシップが競われ、不透明だったことはない」と指摘している。
http://www.sankei.com/world/news/170709/wor1707090035-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170709/wor1707090035-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170709/wor1707090035-n3.html
アンゲラ・メルケル独首相(左)やドナルド・トランプ米大統領(右)と話すドナルド・トゥスク欧州連合(EU)大統領=8日、独ハンブルク(AP)
G20サミットでトルコのタイイップ・エルドアン大統領(左)と会話する露のウラジーミル・プーチン大統領=8日、独ハンブルク(ロイター)
関連記事
【G20】中国に擦り寄り、米と距離取ったドイツ…岐路に立つG20、日米欧の結束に揺らぎ
http://www.sankei.com/economy/news/170709/ecn1707090008-n1.html
貿易や気候変動を中心に米欧や中露の関係は錯綜。浮かび上がったのは国際社会のリーダー役不在で世界が混沌とする姿だ。
争点となった貿易をめぐる初日7日の討議。欧州メディアによると、各首脳が自由貿易を話し合う中、トランプ氏は巨額の対中国赤字への不満を述べ、「公正な貿易」を訴えるなど不協和音が目立った。
「われわれは開かれた市場でなければならない」
主張したのは中国の習近平国家主席。プーチン露大統領も鉄鋼の輸入制限を検討する米国を批判した。気候変動では中露に、インドなど新興5カ国(BRICS)のメンバーが加勢。5首脳は事前に会合を開き、協調を確認していた。
「習氏が話すとき、トランプ氏は腕を組み、難しい顔をしていた」。欧州の外交筋は振り返る。
欧州なども自由貿易推進で歩調をそろえる。ただ、中露にはそれぞれの思惑もちらつく。
中国メディアによると、新たなグローバル化の“リーダー”を目指す習氏は経済圏構想「一帯一路」こそ「G20の目的」にかなうともアピール。プーチン氏は独紙で欧米の経済制裁を「隠れた保護主義」とし、「G20の原則に矛盾する」と牽制した。
ただ、G20では米国が孤立する「19対1」が唯一の構図だったわけではない。
「一部G20メンバーの偽善の証明だ」
7日の開幕直前、欧州連合(EU)のトゥスク大統領が批判した先は中露。EUは地中海を渡る移民船対策で密航業者への国連制裁の提案を目指したが、両国の反対で実現しなかった。大量の犠牲者がでる密航はEUには人道問題。中露とは気候変動などで組んでも価値観は共有できない。
一方、G20の中で結束して存在感を高める中露に対し、トランプ氏は独自に両国との間合いをとる。
シリア南西部の停戦に合意した7日のプーチン氏との初会談は2時間以上に及び、2人は一気に打ち解けた。「相手の言葉を十分に理解し、すぐに分析して答える」。トランプ氏に対するプーチン氏の“高評価”を披露したティラーソン米国務長官は満足げだ。
習氏とも最後まで正式日程が決まらなかった会談を帰国前のぎりぎりに設定。貿易問題で牽制しつつも、中国へのいらだちを募らせる北朝鮮への対応では「諦めない」と忍耐の姿勢だ。
トランプ氏がハンブルクで正式会談した首脳は7カ国。米露会談のため気候変動の討議を退席した。「1対1」を重視するトランプ氏に米紙ニューヨーク・タイムズは「孤立を楽しんでいるようだ」と皮肉った。
議長国ドイツのメルケル首相は8日の閉幕会見で、2008年に金融危機を受け第1回首脳会議が成果を出した歴史を想起し、「1人より共に行動する方が多くを達成できる。それは今も有効だ」と訴えた。
ただ、英紙フィナンシャル・タイムズは当時会議を主導した米国の求心力が低下する今、「戦後、これほど世界のリーダーシップが競われ、不透明だったことはない」と指摘している。
http://www.sankei.com/world/news/170709/wor1707090035-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170709/wor1707090035-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170709/wor1707090035-n3.html
アンゲラ・メルケル独首相(左)やドナルド・トランプ米大統領(右)と話すドナルド・トゥスク欧州連合(EU)大統領=8日、独ハンブルク(AP)
G20サミットでトルコのタイイップ・エルドアン大統領(左)と会話する露のウラジーミル・プーチン大統領=8日、独ハンブルク(ロイター)
関連記事
【G20】中国に擦り寄り、米と距離取ったドイツ…岐路に立つG20、日米欧の結束に揺らぎ
http://www.sankei.com/economy/news/170709/ecn1707090008-n1.html