東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国は、北朝鮮と国交があり、歴史的に友好を維持してきた。
だが、今年2月、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害される事件が発生。起訴された女2人もインドネシアとベトナム国籍で、北朝鮮工作員が、この地域で活発に行動している実態が再確認された。
マレーシアは、北朝鮮への報復に、ビザ(査証)免除措置の中止や大使の国外追放を打ち出したが、断交には踏み込まなかった。北朝鮮人のビジネスに関わってきた与党幹部らもおり、「本気で怒らせるとまた何をするか分からない」(政府幹部)と配慮する。
一部メディアは今月、マレーシア政府が北朝鮮人への労働許可証発給中止を決めたと報じたが、ザヒド副首相兼内相は否定した。
東部サラワク州などでは、炭鉱などで多くの北朝鮮人労働者が集団で外貨を稼いできた。締め出せば圧力となるが、同州は労働行政の自治権を持つなど複雑だ。
東南アジアでは、「コリアン」と自称する北朝鮮人が韓国人と混同され、企業や社会に浸透している。
シンガポールでは2014年、キューバから武器を積み込んだ北朝鮮の船がパナマで拿捕された事件に関与したとして、シンガポールの運送会社や経営者が起訴(後に罰金刑)された。
ただ摘発は氷山の一角で、国境管理の甘さなどを突いた密輸の抜け道は多く、各地にある北朝鮮系レストランなどが、秘密会合の場にもなっていると指摘される。(シンガポール 吉村英輝)
http://www.sankei.com/world/news/170706/wor1707060049-n1.html
【抜け穴だらけの対北制裁】労働者派遣に在外公館賃貸…欧州でも外貨稼ぎ
北朝鮮にとって、欧州は貴重な外貨稼ぎの舞台だ。多くの労働者を送り込んで給与を“ピンはね”し、在外公館の一部も賃貸して収入源としている。
主な出稼ぎ先はポーランドとされ、オランダのライデン大アジア・センターは昨年、その調査報告書を公表した。それによると、労働許可を得た北朝鮮労働者は2010〜15年で2800人で、北朝鮮企業と契約した現地企業が受け入れ、造船工場などに派遣。許可内容への違反も目立った。
給与は不定期に現金で渡されるが、同センターは家賃や本国への送金分を合わせて7割以上が差し引かれているとみる。
労働基準は守られず、逃走しないようパスポートを取り上げられた上、関係者に監視されて自由も制限。本国では家族が「人質」とされており、同センターは労働者が「奴隷」状態にあると問題提起している。
同センターによると、欧州ではマルタをはじめ、ドイツやイタリア、オーストリアでも北朝鮮労働者が送り込まれ、その数は数千人に上るとみられるという。
一方、ベルリンでは北朝鮮が中心部の一等地にある大使館の施設を業者に賃貸し、割安ホテルとして運営させていた。
昨年11月の国連安全保障理事会の制裁決議を受け、ドイツ政府は閉鎖する方針とされるが、米メディアによると、ルーマニアやポーランド、ブルガリアでも北朝鮮は公館を商業目的に使い、各国が監視などを強めているという。(ベルリン 宮下日出男)
http://www.sankei.com/world/news/170706/wor1707060052-n1.html
(>>2以降に続く)