【ソウル=桜井紀雄】「どの大統領も成しえなかった北朝鮮の核問題解決で偉大な大統領になる」。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6月29日、米ホワイトハウスでの夕食会でこうトランプ大統領を持ち上げた。
米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」本格運用の事実上の先延ばしで米韓に生じた不協和音にふたをし、最大限、結束を演出した形だ。
聯合ニュースによると、文氏は「トランプ大統領の強力な力を基盤にした外交に全面的に共感する」とも述べ、トランプ氏が北朝鮮の核問題を最優先課題に掲げていることに「韓国国民の一人として希望を感じている」と強調した。
だが、現実には、2人の間には、対北観で隔たりがある上、文氏がTHAADの本格運用前に1年以上かかる環境影響評価の実施を指示したことに対する認識の差は、首脳会談直前まで埋まらなかった。
両政府は、THAAD問題が会談の主題にならないよう根回しを図ってきたが、韓国側高官は、両首脳が「懸案の大部分に言及した」としており、THAAD問題も議論したとみられる。
会談に先立ち、米上院議員18人がトランプ氏に書簡を送り、THAADの早期完全配備を求めていた。
一方、THAAD配備地の韓国・星州(ソンジュ)では、配備反対派が連日、資材の運び込みを妨害し、米軍が発電用の燃料も空輸せざるを得ない状況が続いている。
6月下旬には、ソウルの米国大使館を反対派が取り囲む大規模なデモがあり、大使館が韓国政府に抗議した。
配備の反対運動の拡大を招いたのは、朴槿恵(パク・クネ)前政権の米国との合意が「不透明だ」として見直しを主張した文氏の現与党だ。THAADをめぐる両国の疑心と不満は、文氏の帰国後も尾を引くことになりそうだ。
http://www.sankei.com/world/news/170630/wor1706300049-n1.html
【米韓首脳会談】トランプ政権「対話」余地なし 核開発凍結めぐり戦略にずれ
【ワシントン=加納宏幸】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領をホワイトハウスに迎えたトランプ米大統領は6月29日、北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したとして中国の銀行への二次的制裁に踏み切った。
核・ミサイル開発の資金を締め上げ、北朝鮮を核放棄に追い込む狙いがある。文氏が模索する北朝鮮との「対話」の余地はない。
「韓国大統領との非常に良い会談を終えた」
首脳会談に先立つ同日の夕食会後、トランプ氏はツイッターにこう書いた。初めて顔を合わせた文氏に大統領選での勝利を予想していたとも伝え、ポピュリスト(大衆迎合主義者)の色彩が強い指導者としての“連帯”を確認していた。
だが、軍事手段を含む北朝鮮への圧力強化で緊密に連携する日米と異なり、米韓間には北朝鮮核・ミサイル開発の「凍結」をめぐって戦略にずれがある。
韓国紙によると、文氏は米国への機中で「北朝鮮による核開発凍結が対話の入り口であり、出口は完全な核放棄だ」と述べた。
これに対し、トランプ政権は北朝鮮による核開発凍結の見返りに米韓合同軍事演習の中止などの果実を与えれば、北朝鮮が交渉の継続を理由に核兵器の小型化や大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を進めると考える。
あくまでも中国も含む圧力で核放棄をさせることが入り口であり出口だ。
マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は30日の首脳会談に先立ち、6月28日の講演で「(北朝鮮の)脅威により韓国国民は人質に取られている」との認識を示した。
紛争に発展すれば韓国の国民だけでなく在韓米軍要員にも犠牲が出る。北朝鮮との対話にこだわる文氏に圧力の輪に加わる覚悟を迫った形だ。
http://www.sankei.com/world/news/170630/wor1706300058-n1.html
29日、ホワイトハウスでトランプ米大統領(右)と握手を交わす韓国の文在寅大統領(ロイター)
ホワイトハウス前で記念写真に納まる韓国の文在寅大統領(左から2人目)夫妻とトランプ米大統領夫妻=29日、ワシントン(聯合=共同)