韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が30日、米ワシントンでトランプ大統領との初の首脳会談に臨む。最大の焦点は北朝鮮をめぐる協議の行方だ。
米大学生、オットー・ワームビア氏の死亡で対北世論が硬化した米国に対し、文政権は平昌五輪の共催案をはじめ、大統領自身が核凍結→核廃棄の「2段階論」案を発表するなど融和姿勢が顕著だ。
韓国は米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備を留保しているほか、文大統領が軍事同盟の要である戦時作戦統制権について「適切な時期に韓国に取り戻す」と宣言するなど同盟縮小を意図しているようにみえる。
訪米を前に複数の米メディアの取材に応じた文大統領は、その発言に対北融和をにじませていた。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の人物評を突っ込まれ、「彼は合理的な人間ではない」と述べたものの批判はせず、「彼は体制を守りたがっているのだ。核プログラムでハッタリを言っている」などとして5回にわたった核実験で大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載の小型化を目指してきた北朝鮮の核脅威への認識の甘さを露呈させた。
核問題の「凍結→廃棄」を目指すという「2段階論」では、「北朝鮮が交渉のテーブルに出てくるなら彼らを助ける用意があるというメッセージを出す必要がある」などと述べ、まず見返りありきを強調した。
米韓首脳会談を意識して、文大統領は「私とトランプ大統領の目標は同じだ。それは朝鮮半島の非核化」と繰り返したが、見返りについて「たとえば(南北経済協力事業の)開城工業団地の再開」と述べ、米記者から「国連制裁違反ではないか」と指摘される場面もあった。
文大統領はこれまでに国内向けには「北朝鮮が核、ミサイルの追加挑発を中止すれば条件なく対話に乗り出せる」と述べており、2段階論は事実上の「入り口にアメ、出口に凍結→廃棄」で、過去、北朝鮮が国際社会を欺いてきた“関与政策”そのものだ。
一方、米韓関係について文政権発の“同盟縮小発言”が相次いでいる。大統領直属の統一外交安保特別補佐官、文正任(ムン・ジョンイン)氏が米国で「北朝鮮が核凍結すれば米韓共同軍事演習縮小もある」(16日)と述べ、米側の怒りを買った。
また文大統領自身が米メディアに、戦時作戦統制権について「主権国家として適切な時期に取り戻す」と語っている。実現すれば米韓関係が決定的に転換する重大事項だが、同時に北朝鮮にとっては膝を打つような発言だろう。
戦時作戦統制権とは朝鮮半島有事に米韓連合軍を米軍が指揮する体制をいう。作戦統制権は戦時と平時があるが、朝鮮戦争時に米韓軍の軍事行動の一元化のため、韓国が1950年に米国に移譲し、平時に関しては既に韓国に返還されている。
北朝鮮の脅威が高まる中、いま戦時作戦統制権が韓国に移管されると、米韓合同司令部は解体となり、米韓軍の共同作戦はなくなる。これは事実上の同盟解消にもつながる。
韓国は親北進歩政権だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)時代にこの権利の韓国移管を米国に要求、いったん合意した。
しかし実行前に朴槿恵(パク・クネ)前政権が合意を撤回し事実上、無期延期していた。ただ文大統領は、大統領選挙時から公約に「任期中の移管」を挙げてきた。
文大統領は米韓関係重視を掲げているが、その対米姿勢には「米韓より南北」が目立っている。米韓関係の行方は、今後の北朝鮮情勢を左右することになる。(編集委員 久保田るり子)
http://www.sankei.com/world/news/170629/wor1706290023-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170629/wor1706290023-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170629/wor1706290023-n3.html
韓国の文在寅大統領
米大学生、オットー・ワームビア氏の死亡で対北世論が硬化した米国に対し、文政権は平昌五輪の共催案をはじめ、大統領自身が核凍結→核廃棄の「2段階論」案を発表するなど融和姿勢が顕著だ。
韓国は米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備を留保しているほか、文大統領が軍事同盟の要である戦時作戦統制権について「適切な時期に韓国に取り戻す」と宣言するなど同盟縮小を意図しているようにみえる。
訪米を前に複数の米メディアの取材に応じた文大統領は、その発言に対北融和をにじませていた。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の人物評を突っ込まれ、「彼は合理的な人間ではない」と述べたものの批判はせず、「彼は体制を守りたがっているのだ。核プログラムでハッタリを言っている」などとして5回にわたった核実験で大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載の小型化を目指してきた北朝鮮の核脅威への認識の甘さを露呈させた。
核問題の「凍結→廃棄」を目指すという「2段階論」では、「北朝鮮が交渉のテーブルに出てくるなら彼らを助ける用意があるというメッセージを出す必要がある」などと述べ、まず見返りありきを強調した。
米韓首脳会談を意識して、文大統領は「私とトランプ大統領の目標は同じだ。それは朝鮮半島の非核化」と繰り返したが、見返りについて「たとえば(南北経済協力事業の)開城工業団地の再開」と述べ、米記者から「国連制裁違反ではないか」と指摘される場面もあった。
文大統領はこれまでに国内向けには「北朝鮮が核、ミサイルの追加挑発を中止すれば条件なく対話に乗り出せる」と述べており、2段階論は事実上の「入り口にアメ、出口に凍結→廃棄」で、過去、北朝鮮が国際社会を欺いてきた“関与政策”そのものだ。
一方、米韓関係について文政権発の“同盟縮小発言”が相次いでいる。大統領直属の統一外交安保特別補佐官、文正任(ムン・ジョンイン)氏が米国で「北朝鮮が核凍結すれば米韓共同軍事演習縮小もある」(16日)と述べ、米側の怒りを買った。
また文大統領自身が米メディアに、戦時作戦統制権について「主権国家として適切な時期に取り戻す」と語っている。実現すれば米韓関係が決定的に転換する重大事項だが、同時に北朝鮮にとっては膝を打つような発言だろう。
戦時作戦統制権とは朝鮮半島有事に米韓連合軍を米軍が指揮する体制をいう。作戦統制権は戦時と平時があるが、朝鮮戦争時に米韓軍の軍事行動の一元化のため、韓国が1950年に米国に移譲し、平時に関しては既に韓国に返還されている。
北朝鮮の脅威が高まる中、いま戦時作戦統制権が韓国に移管されると、米韓合同司令部は解体となり、米韓軍の共同作戦はなくなる。これは事実上の同盟解消にもつながる。
韓国は親北進歩政権だった盧武鉉(ノ・ムヒョン)時代にこの権利の韓国移管を米国に要求、いったん合意した。
しかし実行前に朴槿恵(パク・クネ)前政権が合意を撤回し事実上、無期延期していた。ただ文大統領は、大統領選挙時から公約に「任期中の移管」を挙げてきた。
文大統領は米韓関係重視を掲げているが、その対米姿勢には「米韓より南北」が目立っている。米韓関係の行方は、今後の北朝鮮情勢を左右することになる。(編集委員 久保田るり子)
http://www.sankei.com/world/news/170629/wor1706290023-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170629/wor1706290023-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170629/wor1706290023-n3.html
韓国の文在寅大統領