当の日本のメディアはこれをどう報じたか調べると、NHKは同氏が「日本政府に対し、メディアの独立性を強化するため法律を改正すべきだなどと勧告しました。日本政府は『表現の自由や知る権利は憲法で最大限保障されている』と反論しました」(13日)と淡々としていた。
ほかも概して切迫感や危機感のない報道が多かった。
ケイ氏の報告の直後、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の伊原純一大使は「わが国の説明や立場に対し、正確な理解のないまま記述されている点があることは遺憾だ」などと強く反論している。
公表された報告書に目を通してみた。研究者同士のピアレビュー(査読)の観点から批評(批判ではない)をすれば、確かに重要な論点は提起しているものの、基礎知識の不足や収集データの偏り、論拠や論理の飛躍などが多い。
まともな学会での研究報告であれば相当厳しい突っ込みは免れず、公刊はおぼつかないレベルだ。この程度の報告が国連文書に残るとすると、特別報告者の制度の信頼性そのものも揺らぎかねないと感じた。
報告書を案の段階から注視し、主張で「嘘まき散らすのは何者か」(2日付)と題し「いわれなき対日非難」に真っ向から異を唱えたのは産経だった。
読売の社説は「杜撰(ずさん)極まりない代物である。日本の一部の偏った市民運動家らに依拠した見解ではないか」(14日付)と強い疑問を投げかけた。
一方、毎日の記事は「『国連vs日本』の様相を呈している…特別報告者が立て続けに、報道の自由とプライバシー権をめぐる日本の現状に『レッドカード』を突きつけているからだ」(12日付夕刊)などとし、特別報告者の意見が国連の総意であるかのように取り上げていた。
今どきはやりの言葉を使うならば、この手の“国連報告書”が日本の“印象操作”に利用されることは多い。先の読売社説は「報告書に強制力はないが、放置すれば、日本に対する誤解が国際社会に広がりかねない」と指摘する。
ケイ氏には日本政府の説明や反論に、耳を傾けようとする姿勢がみられない。批判している相手だとの理由かもしれないが、逆にその意気込みや独立の報告者としてのプライドが、安易な公権力批判に利用されてはいないだろうか。
同じ学者としてケイ氏のプロフェッショナリズムに疑問を禁じ得ない部分は多いが、当事者である日本のメディアも自らの沽券(こけん)にかけてもっと議論をしてしかるべきだろう。
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【プロフィル】星野俊也
ほしの・としや 昭和34年群馬県出身。上智大卒。大阪大大学院博士。国連日本政府代表部公使参事官、大阪大副学長など歴任。
http://www.sankei.com/column/news/170625/clm1706250008-n1.html
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デービッド・ケイ国連特別報告者