韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、2018年2月に開催する平昌冬季五輪の一部競技を北朝鮮国内で行う計画を明らかにした。
北朝鮮は国際社会の反発を無視してミサイル発射実験を繰り返し、6回目の核実験の準備を進めているとされる。
国連安全保障理事会は北朝鮮に対する制裁決議を繰り返している。米中首脳会談では米側が中国に「一層強く経済的、外交的圧力をかける責任がある」と迫った。
米国は現在、不当に拘束された大学生の死亡により、北朝鮮に対する怒りが沸点にある。そんなまっただ中の南北共催案である。
実現すれば北朝鮮を外貨で潤す制裁破りの愚挙であり、実現不可能を前提とする政治的宣伝であれば、あまりに無責任である。何よりその国際感覚を疑う。
韓国の都鍾煥(ト・ジョンファン)文化体育観光相は20日、平昌五輪で一部のスキー競技を「北朝鮮東部の馬息嶺(マシクリョン)スキー場を活用する方向で検討する」と述べた。併せて聖火リレーを平壌や開城(ケソン)を経由させる案や、アイスホッケー女子の南北合同チーム構想も披瀝(ひれき)した。
馬息嶺スキー場は金正恩朝鮮労働党委員長の肝煎りで建設されたとされるが、国際大会の実績はなく、移送、宿泊施設の状況も不明である。
大会主催者は、参加選手や関係者、観客の安全を保証し、良好な競技環境を整える義務を負う。
だが平昌五輪は来年に迫っており、すでに冬季の競技シーズンを終えているため、プレ大会などで検証する機会さえない。
五輪招致時に南北共催を掲げていれば、平昌が選択されていたかも疑問である。
文大統領は今月末にトランプ米大統領との首脳会談に臨み、7月初めには訪韓する国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との会談を予定している。
こうした席上で唐突な共催案が受け入れられるとは到底考えられないが、世界のスポーツ界は事態の推移を静観せず、自主的に反対の声を上げるべきではないか。
特に冬季の各競技団体や、日本をはじめとする各国の五輪委員会は、大会の成否にかかわる無謀な共催案に対して明確な態度を示す必要がある。
五輪は、平和の祭典である。だからこそ、国際政治と無縁ではいられないはずだ。
http://www.sankei.com/column/news/170623/clm1706230001-n1.html
2017.6.23 05:02