人民元を米ドルと並ぶ「基軸通貨」に押し上げようとした中国の野望は「風前の灯火」になりつつある。
5月末から6月初めに元相場は大幅上昇し、約半年ぶりの元高ドル安水準を記録。背景には、中国当局が対ドル取引の「基準値」の算出手法見直しを公表したことがある。
元安による資本流出に歯止めをかけたい当局のもくろみはひとまず成功したが、当局の裁量の余地が広がる恐れがあり、市場関係者からは「元国際化に逆行する動き」と批判の声が高まる。
吹き飛んだ“建前”
中国人民銀行(中央銀行)傘下の中国外貨取引センターは5月26日、対ドル取引の基準値の決定に新手法を導入すると発表した。
市場心理の揺らぎや「群集効果」で、相場が一方向へ極度に振れるのを防ぐのが目的とみられるが、具体的な手法は開示されていない。
人民銀は2015年8月、元を唐突に切り下げた。無理に高く保ってきた元相場を市場実勢に近づけるとして基準値の算出方法を変更したためで、「市場の前日終値を参考にする」と表明。
その後も多くの通貨からなる「通貨バスケット」も加味するルールを取り入れるなど、実勢に沿う相場形成を目指すとしていた。
こうした“改革”が功を奏し、元は昨年10月、ドルやユーロ、円、ポンドに続き、国際通貨基金(IMF)の仮想通貨「特別引き出し権(SDR)」に組み込まれた。今年3月には、李克強首相が政府活動報告で、「国際通貨としてお墨付きを得た」と成果を強調したほどだ。
とはいえ、当局は相場を管理し、基準値から1日当たり上下2%の変動しか認めていなかった。それでも前日終値をもとに基準値を決めることで、「完全な変動相場制へ移行する過渡期」との説明が成り立っていた。
だが、今回の制度変更でそんな建前は吹き飛んでしまった。
党大会前に相場を安定
背景には、元安や資本流出圧力の高まりがある。昨年11月の米大統領選でトランプ氏が当選。元安戦術による中国の輸出拡大を批判し、「為替操作国」に指定すると公言したが、投資家は米中為替戦争に不安を抱き、むしろ元を売る動きを強めた。
さらに、米国で利上げが進んだ結果、ドルと元の金利差が意識され、元はますます売られやすくなった。中国景気の減速懸念も意識されつつあり、年末年始には「1ドル=7元台」の元安水準に迫ったほどだ。
元安が行き過ぎると、中国の富裕層や企業は保有資産を低金利の元建てではなく、高金利のドル建てに変更しようとするため、資本流出の懸念が高まってしまう。中国企業のドル建て債務が元換算時に膨らんでしまうというデメリットも出てきた。
さらに、5月下旬に米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中国国債の格付けを引き下げたことも中国当局をいらだたせた。格下げで国債が売られれば、資本流出に拍車が掛かってしまうからだ。
共産党首脳の人事を決める党大会を今秋に控える中、経済や相場の安定が迫られていた。
今回、大なたをふるったことで、元相場は当面安定しそうだ。足元の対ドル相場は1ドル=6.7〜6.8元台で推移し、7元の大台は遠のいた。
ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司氏は「元安が加速度的に進むと(輸入品などの)物価が上がり、混乱する」と今回の措置に理解を示す。
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n2.html
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n3.html
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n4.html
(>>2以降に続く)
中国人民銀行(中央銀行)=中国・北京(ロイター)
中国の人民元。当局が公表した制度変更に対し「国際化に逆行する」との批判も高まっている(ロイター)
5月末から6月初めに元相場は大幅上昇し、約半年ぶりの元高ドル安水準を記録。背景には、中国当局が対ドル取引の「基準値」の算出手法見直しを公表したことがある。
元安による資本流出に歯止めをかけたい当局のもくろみはひとまず成功したが、当局の裁量の余地が広がる恐れがあり、市場関係者からは「元国際化に逆行する動き」と批判の声が高まる。
吹き飛んだ“建前”
中国人民銀行(中央銀行)傘下の中国外貨取引センターは5月26日、対ドル取引の基準値の決定に新手法を導入すると発表した。
市場心理の揺らぎや「群集効果」で、相場が一方向へ極度に振れるのを防ぐのが目的とみられるが、具体的な手法は開示されていない。
人民銀は2015年8月、元を唐突に切り下げた。無理に高く保ってきた元相場を市場実勢に近づけるとして基準値の算出方法を変更したためで、「市場の前日終値を参考にする」と表明。
その後も多くの通貨からなる「通貨バスケット」も加味するルールを取り入れるなど、実勢に沿う相場形成を目指すとしていた。
こうした“改革”が功を奏し、元は昨年10月、ドルやユーロ、円、ポンドに続き、国際通貨基金(IMF)の仮想通貨「特別引き出し権(SDR)」に組み込まれた。今年3月には、李克強首相が政府活動報告で、「国際通貨としてお墨付きを得た」と成果を強調したほどだ。
とはいえ、当局は相場を管理し、基準値から1日当たり上下2%の変動しか認めていなかった。それでも前日終値をもとに基準値を決めることで、「完全な変動相場制へ移行する過渡期」との説明が成り立っていた。
だが、今回の制度変更でそんな建前は吹き飛んでしまった。
党大会前に相場を安定
背景には、元安や資本流出圧力の高まりがある。昨年11月の米大統領選でトランプ氏が当選。元安戦術による中国の輸出拡大を批判し、「為替操作国」に指定すると公言したが、投資家は米中為替戦争に不安を抱き、むしろ元を売る動きを強めた。
さらに、米国で利上げが進んだ結果、ドルと元の金利差が意識され、元はますます売られやすくなった。中国景気の減速懸念も意識されつつあり、年末年始には「1ドル=7元台」の元安水準に迫ったほどだ。
元安が行き過ぎると、中国の富裕層や企業は保有資産を低金利の元建てではなく、高金利のドル建てに変更しようとするため、資本流出の懸念が高まってしまう。中国企業のドル建て債務が元換算時に膨らんでしまうというデメリットも出てきた。
さらに、5月下旬に米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中国国債の格付けを引き下げたことも中国当局をいらだたせた。格下げで国債が売られれば、資本流出に拍車が掛かってしまうからだ。
共産党首脳の人事を決める党大会を今秋に控える中、経済や相場の安定が迫られていた。
今回、大なたをふるったことで、元相場は当面安定しそうだ。足元の対ドル相場は1ドル=6.7〜6.8元台で推移し、7元の大台は遠のいた。
ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司氏は「元安が加速度的に進むと(輸入品などの)物価が上がり、混乱する」と今回の措置に理解を示す。
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n2.html
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n3.html
http://www.sankei.com/premium/news/170615/prm1706150003-n4.html
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![【経済】人民元「基軸通貨」中国の野望は“風前の灯火”…国際化・自由化に逆行する制度変更に非難囂々[6/15] [無断転載禁止]©2ch.net YouTube動画>1本 ->画像>5枚](http://www.sankei.com/images/news/170615/prm1706150003-p1.jpg)
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中国人民銀行(中央銀行)=中国・北京(ロイター)
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中国の人民元。当局が公表した制度変更に対し「国際化に逆行する」との批判も高まっている(ロイター)