■担当者「ゆっくりでも、前に」
北方領土交渉をめぐる日露間の駆け引きが続いている。日本政府は北方四島での共同経済活動に向け、官民調査団を露サハリン州に派遣して露政府の動きを促しているが、プーチン露大統領は北方領土の軍事的重要性を強調して揺さぶりをかけてきた。
ロシアの大統領選も近づき、交渉進展はなかなか見通せない。日本側はプーチン氏再選後をにらんで環境整備を図る持久戦を余儀なくされている。(大橋拓史)
「露外務省は国内調整が大変なんだろう。細かい話が出ると『では、それについて調べる』みたいな感じで全然進まない」
北方四島の共同経済活動に向けた協議を進める日本側交渉担当者はこう明かす。
安倍晋三首相とプーチン氏は4月の首脳会談で、5月中に現地調査団を派遣することで合意したが、調整が難航して先延ばしされた。露政府内では外務省、経済発展省、極東発展省など関係機関の権限争いが複雑に絡むとされる。
こうした事態を打開するため、日本政府は5月30日からサハリン州に官民調査団を派遣した。
団長の長谷川栄一首相補佐官は31日のコジェミャコ州知事との会談で、「本日の意見交換をもって現地調査がキックオフされたと受け止める」と呼びかけた。コジェミャコ氏は「日本との貿易高はサハリン州全体の4割を占める。これを増やしたい」と応じた。
北方四島を管轄するサハリン州としては、日本からの投資は魅力的に映る。現地調査は6月末の見通しだが、日露交渉筋は「露政府がまた日程を変えると言い出したら、日本が言うよりも知事に『困る』と言ってもらったほうがいい」と期待を込める。
一方、プーチン氏は今月1日の各国通信社との会見で、北方領土を日本に引き渡した場合、現地に米軍が展開する可能性があると主張。北方領土で軍備増強を進めるのも、米主導のミサイル防衛網に対抗するためだとした。
プーチン氏の発言を額面通り受け止めれば、「領土返還は難しい」との認識を示したといえる。
ただ、日本政府内には「北方領土での米軍展開が問題になるのは、返還が前提の話だ。これをチャンスと受け止め、積極的に日露間の議題としたい」(外務省幹部)との意見もある。
北方領土交渉が短期間のうちに大きく前進するとの見通しはたたない。
来年3月に露大統領選が予定されており、交渉担当者は「選挙期間中は外交上の決断は指導者としてやりにくい。選挙が終わるまで、ゆっくりでもいいから一歩でも前に進めることが大事だ」と語る。
日本政府は7月と9月にも日露首脳会談を行いたい考えだ。
安倍首相がイタリアで先月開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)でロシアとの協力の重要性を強調したのも、北方領土交渉の環境づくりの一環といえる。しばらくは秋波を送りつつ露側の出方をうかがう状況が続きそうだ。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170605/soc1706050025-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170605/soc1706050025-n2.html
ロシア極東サハリン州のコジェミャコ知事(左端)と会談する長谷川栄一首相補佐官(右端)=5月31日、ユジノサハリンスク(大橋拓史撮影)
北方領土交渉をめぐる日露間の駆け引きが続いている。日本政府は北方四島での共同経済活動に向け、官民調査団を露サハリン州に派遣して露政府の動きを促しているが、プーチン露大統領は北方領土の軍事的重要性を強調して揺さぶりをかけてきた。
ロシアの大統領選も近づき、交渉進展はなかなか見通せない。日本側はプーチン氏再選後をにらんで環境整備を図る持久戦を余儀なくされている。(大橋拓史)
「露外務省は国内調整が大変なんだろう。細かい話が出ると『では、それについて調べる』みたいな感じで全然進まない」
北方四島の共同経済活動に向けた協議を進める日本側交渉担当者はこう明かす。
安倍晋三首相とプーチン氏は4月の首脳会談で、5月中に現地調査団を派遣することで合意したが、調整が難航して先延ばしされた。露政府内では外務省、経済発展省、極東発展省など関係機関の権限争いが複雑に絡むとされる。
こうした事態を打開するため、日本政府は5月30日からサハリン州に官民調査団を派遣した。
団長の長谷川栄一首相補佐官は31日のコジェミャコ州知事との会談で、「本日の意見交換をもって現地調査がキックオフされたと受け止める」と呼びかけた。コジェミャコ氏は「日本との貿易高はサハリン州全体の4割を占める。これを増やしたい」と応じた。
北方四島を管轄するサハリン州としては、日本からの投資は魅力的に映る。現地調査は6月末の見通しだが、日露交渉筋は「露政府がまた日程を変えると言い出したら、日本が言うよりも知事に『困る』と言ってもらったほうがいい」と期待を込める。
一方、プーチン氏は今月1日の各国通信社との会見で、北方領土を日本に引き渡した場合、現地に米軍が展開する可能性があると主張。北方領土で軍備増強を進めるのも、米主導のミサイル防衛網に対抗するためだとした。
プーチン氏の発言を額面通り受け止めれば、「領土返還は難しい」との認識を示したといえる。
ただ、日本政府内には「北方領土での米軍展開が問題になるのは、返還が前提の話だ。これをチャンスと受け止め、積極的に日露間の議題としたい」(外務省幹部)との意見もある。
北方領土交渉が短期間のうちに大きく前進するとの見通しはたたない。
来年3月に露大統領選が予定されており、交渉担当者は「選挙期間中は外交上の決断は指導者としてやりにくい。選挙が終わるまで、ゆっくりでもいいから一歩でも前に進めることが大事だ」と語る。
日本政府は7月と9月にも日露首脳会談を行いたい考えだ。
安倍首相がイタリアで先月開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)でロシアとの協力の重要性を強調したのも、北方領土交渉の環境づくりの一環といえる。しばらくは秋波を送りつつ露側の出方をうかがう状況が続きそうだ。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170605/soc1706050025-n1.html
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170605/soc1706050025-n2.html
![【日露】北方領土交渉“持久戦”へ 来年のロシア大統領選控え進展見通せず…「国内調整が大変なんだろう」[6/05] [無断転載禁止]©2ch.net->画像>6枚](http://www.zakzak.co.jp/images/news/170605/soc1706050025-p1.jpg)
ロシア極東サハリン州のコジェミャコ知事(左端)と会談する長谷川栄一首相補佐官(右端)=5月31日、ユジノサハリンスク(大橋拓史撮影)