【国際情勢分析】
韓国が「軍事ロボット大国」へと歩みを進めている。北朝鮮国境の非武装地帯を自動化された軍備で防衛するニーズを背景に、「ロボット機関銃」やドローン(無人機)などの開発、製品化を加速させている。日本には「軍事大国化」の懸念をあらわにする一方、防衛と民生の双方に応用可能なデュアルユース(軍民両用)が進む韓国は、ロボット技術に関連した軍備品の販売や輸出を拡大させている。
「北朝鮮は1000機のドローン(無人機)を保有しており、化学・生物兵器を搭載する可能性がある」
韓国政府系シンクタンク「韓国統一研究院」は3月下旬、そんな内容のリポートを発表した。空軍の航空戦力では韓国側に遠く及ばない北朝鮮が、能力差を「相殺するため無人機開発に注力している」という。
以前、国境近くに北朝鮮のドローンが落下していたため、韓国はかねて北朝鮮のドローン攻撃を警戒。侵入しようとするドローンを、網に引っかけて撃退するドローンの開発・運用なども検討してきた。
南北の非武装地帯では、「ドローン対ドローン」の戦闘が現実のものになりつつある。4月上旬には、韓国国防省が、非武装地帯を監視するドローンを5月にも運用開始すると明らかにしている。
核・ミサイルばかりでなく、北朝鮮からの侵入を日常的な脅威とする韓国軍にとっては、ロボット技術は喫緊の課題となってきた。
実際、非武装地帯の守りに韓国製の「ロボット機関銃」が実用化されている。数キロ先までの敵を自動追尾し、銃撃するシステム「スーパー・イージス2」だ。2010年に初公開された同システムは韓国軍事機器ベンチャーのドダム・システムズが開発した。英BBC放送(電子版)によると、同システムは輸出先の中東地域でも使用されている「ベストセラー」という。
同社はさらに、敵兵と味方を識別するソフトウエア開発などに取り組み、「爆発物を着用しているか」も判別できるようにするという。同社幹部はBBCの取材に「北朝鮮という国境を接する敵があるため、韓国は軍事ロボット分野でリーダーとなった」と語った。
こうした開発、運用状況を踏まえ、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は韓国について、「殺人ロボット」を製造する能力があると指摘。米国や中国などと並び、開発能力がある6カ国のうちの一つに位置づけている。
軍事目的のロボット技術開発で韓国は、政府主導の投資計画にも取り組む。昨年11月に防衛事業庁が明らかにした計画では、2020年までに200億ウォン(約20億円)を投じて、兵士が着用するパワードスーツを開発、実用化するという。
装着すれば、最大70キロの重さを持ち上げることができ、重い火器などの装備を持ち運びながら活動できるという。開発主体は国防省傘下の研究機関、国防科学研究所(ADD)と、韓国の軍事企業のLIGネックスワンだ。
聯合ニュース(日本語電子版)によると、同庁の関係者は「民間と国防技術能力を結集し実用性の高い着用型筋力増強ロボット技術を開発し、確保された技術は民間と共有していく」と説明。軍事開発した技術を民間転用する考えを示した。福祉施設で高齢者の移動などに使用することも念頭に置いているとみられる。
こうした人体補助機能を持つロボットの開発は、日本では民間主導で進んでいる。出遅れた感のある韓国だが、軍事目的の開発資金が基礎的な技術開発を後押しする側面も期待される。
韓国が北朝鮮のドローンに対処する目的で開発を進めるドローンでも、韓国随一のエリート科学大学であるKAIST(カイスト=韓国科学技術院)の開発に、国防省系機関が出資している。
このKAISTのロボット開発技術の高さが証明されたのが、15年6月、米国防総省傘下の国防高等研究計画(DARPA)が主催した災害ロボットコンテストで優勝したことだ。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170516/frn1705160925008-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170516/frn1705160925008-n2.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170516/frn1705160925008-n3.htm
2017.05.16
韓国が「軍事ロボット大国」へと歩みを進めている。北朝鮮国境の非武装地帯を自動化された軍備で防衛するニーズを背景に、「ロボット機関銃」やドローン(無人機)などの開発、製品化を加速させている。日本には「軍事大国化」の懸念をあらわにする一方、防衛と民生の双方に応用可能なデュアルユース(軍民両用)が進む韓国は、ロボット技術に関連した軍備品の販売や輸出を拡大させている。
「北朝鮮は1000機のドローン(無人機)を保有しており、化学・生物兵器を搭載する可能性がある」
韓国政府系シンクタンク「韓国統一研究院」は3月下旬、そんな内容のリポートを発表した。空軍の航空戦力では韓国側に遠く及ばない北朝鮮が、能力差を「相殺するため無人機開発に注力している」という。
以前、国境近くに北朝鮮のドローンが落下していたため、韓国はかねて北朝鮮のドローン攻撃を警戒。侵入しようとするドローンを、網に引っかけて撃退するドローンの開発・運用なども検討してきた。
南北の非武装地帯では、「ドローン対ドローン」の戦闘が現実のものになりつつある。4月上旬には、韓国国防省が、非武装地帯を監視するドローンを5月にも運用開始すると明らかにしている。
核・ミサイルばかりでなく、北朝鮮からの侵入を日常的な脅威とする韓国軍にとっては、ロボット技術は喫緊の課題となってきた。
実際、非武装地帯の守りに韓国製の「ロボット機関銃」が実用化されている。数キロ先までの敵を自動追尾し、銃撃するシステム「スーパー・イージス2」だ。2010年に初公開された同システムは韓国軍事機器ベンチャーのドダム・システムズが開発した。英BBC放送(電子版)によると、同システムは輸出先の中東地域でも使用されている「ベストセラー」という。
同社はさらに、敵兵と味方を識別するソフトウエア開発などに取り組み、「爆発物を着用しているか」も判別できるようにするという。同社幹部はBBCの取材に「北朝鮮という国境を接する敵があるため、韓国は軍事ロボット分野でリーダーとなった」と語った。
こうした開発、運用状況を踏まえ、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は韓国について、「殺人ロボット」を製造する能力があると指摘。米国や中国などと並び、開発能力がある6カ国のうちの一つに位置づけている。
軍事目的のロボット技術開発で韓国は、政府主導の投資計画にも取り組む。昨年11月に防衛事業庁が明らかにした計画では、2020年までに200億ウォン(約20億円)を投じて、兵士が着用するパワードスーツを開発、実用化するという。
装着すれば、最大70キロの重さを持ち上げることができ、重い火器などの装備を持ち運びながら活動できるという。開発主体は国防省傘下の研究機関、国防科学研究所(ADD)と、韓国の軍事企業のLIGネックスワンだ。
聯合ニュース(日本語電子版)によると、同庁の関係者は「民間と国防技術能力を結集し実用性の高い着用型筋力増強ロボット技術を開発し、確保された技術は民間と共有していく」と説明。軍事開発した技術を民間転用する考えを示した。福祉施設で高齢者の移動などに使用することも念頭に置いているとみられる。
こうした人体補助機能を持つロボットの開発は、日本では民間主導で進んでいる。出遅れた感のある韓国だが、軍事目的の開発資金が基礎的な技術開発を後押しする側面も期待される。
韓国が北朝鮮のドローンに対処する目的で開発を進めるドローンでも、韓国随一のエリート科学大学であるKAIST(カイスト=韓国科学技術院)の開発に、国防省系機関が出資している。
このKAISTのロボット開発技術の高さが証明されたのが、15年6月、米国防総省傘下の国防高等研究計画(DARPA)が主催した災害ロボットコンテストで優勝したことだ。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170516/frn1705160925008-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170516/frn1705160925008-n2.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170516/frn1705160925008-n3.htm
2017.05.16