中国人を中心にした訪日外国人による「爆買い」が失速し、関西の流通関係者は頭を抱えている。一方で関西国際空港の利用者数は過去最高を更新するなど訪日外国人は増加基調。爆買いはどこに消えてしまったのか−。探ってみると、相変わらず高い日本製品の人気、そして爆買いに代わる新たなルートが見えてきた。(藤原直樹)
大阪は仕入れの最前線
大阪市西区のオフィスビル。中国・大連を拠点に物流や小売業を手がける三通国際物流が2014年5月から事務所を構える。中国に送る日本の商品をじっくりと品定めするためだ。
三通国際物流の目当ては日本の「100円ショップ」の商品。中国人観光客の間で100円ショップは有名で、大量にまとめ買いする光景も珍しくない。同社はこの商品を買い付けて輸出している。
中国全土に13店舗を構える直営店で販売するほか、他の小売店への卸売りもしている。洗剤やシャンプー、キッチン用品が人気で、日本の2倍以上の価格を付けても飛ぶように売れるという。
同社の秦玉波取締役は「中国では質のいい商品はとても高い。日本の100円ショップの商品は安価にもかかわらず質がいいからみんなほしがる」と話す。
最近では日本を訪れた個人が持ち帰った商品をインターネットで販売する例もあり、秦氏は「競争がとても激しい。人気の高い商品をいかに早く中国に送れるかが鍵を握る」と話す。
以前は日中間を行き来していたが、本格的に取り組むために日本での拠点設置を決意。その場所として訪日外国人の取り込みに成功した大阪を選んだ。秦氏は「観光客が何を買っているのかを見極めるのに大阪が最適だった」と振り返る。
対日投資拡大を目指す日本貿易振興機構(ジェトロ)などが中国企業の日本進出を促していることもあって、三通国際物流のようなケースは急増している。
市場規模1兆円超に
中国企業の日本進出が加速する一方で、日中間の越境電子商取引(EC)も急成長している。ここでも化粧品の人気が圧倒的で、美容関連だけで販売の半分近くを占める。このほか、紙おむつや粉ミルクなどのベビー用品、健康食品などがよく購入されている。
民間調査会社の富士経済は、16年の日本の中国向け越境EC市場は1兆158億円に上り、3年後にはさらに倍増すると試算した。中国のネット企業は相次いで越境ECに参入しており、SNS(交流サイト)最大手テンセント・ホールディングスはすでに月間のユーザー数が8億人に上っている。
競争は激化しており、各社とも工夫を凝らし始めている。中国で15年2月に設立されたbolome(ボロミ)は、ユーザー数は500万人と多くないが、スマートフォンを利用したライブ中継型の販売に特化して急成長している。
ボロミが取り扱う商品は約5千点。その多くには、リポーターが実演なども織り交ぜて紹介する動画が用意されており、中国の女性から高い支持を得ている。北海道や九州など地方の特産品を多く扱っているのも特徴だ。
販路拡大の好機に
こうした状況は、爆買いの恩恵を受けてきた関西の小売店にとって頭痛の種。さらに中国人観光客の目的は買い物からレジャーや日本文化の体験など「アクティビティ」にシフトしており、小売店への逆風は強まっている。
だが、日本企業が販路を拡大するチャンスにもなり得る。ボロミ日本法人の三浦浩之取締役は「自分たちがいいと思ったものを発掘して中国に紹介することを心がけている。ボロミで販売したことで売り上げが2倍以上になった企業もある」と話す。
ジェトロが今年2月に大阪市内で開いた越境ECの商談会には日本企業約200社が参加。ジェトロ大阪本部対日投資推進課の井上哲哉課長は「参加企業の数は当初の想定を大幅に上回った。これまで輸出や海外販売などに縁のなかった企業の参加が目立つ」と話した。爆買いの失速は新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけになっている。
http://www.sankei.com/west/news/170321/wst1703210001-n1.html
大阪に進出して日本の100円ショップの商品を中国に輸出している三通国際物流の秦玉波取締役=大阪市西区
大阪は仕入れの最前線
大阪市西区のオフィスビル。中国・大連を拠点に物流や小売業を手がける三通国際物流が2014年5月から事務所を構える。中国に送る日本の商品をじっくりと品定めするためだ。
三通国際物流の目当ては日本の「100円ショップ」の商品。中国人観光客の間で100円ショップは有名で、大量にまとめ買いする光景も珍しくない。同社はこの商品を買い付けて輸出している。
中国全土に13店舗を構える直営店で販売するほか、他の小売店への卸売りもしている。洗剤やシャンプー、キッチン用品が人気で、日本の2倍以上の価格を付けても飛ぶように売れるという。
同社の秦玉波取締役は「中国では質のいい商品はとても高い。日本の100円ショップの商品は安価にもかかわらず質がいいからみんなほしがる」と話す。
最近では日本を訪れた個人が持ち帰った商品をインターネットで販売する例もあり、秦氏は「競争がとても激しい。人気の高い商品をいかに早く中国に送れるかが鍵を握る」と話す。
以前は日中間を行き来していたが、本格的に取り組むために日本での拠点設置を決意。その場所として訪日外国人の取り込みに成功した大阪を選んだ。秦氏は「観光客が何を買っているのかを見極めるのに大阪が最適だった」と振り返る。
対日投資拡大を目指す日本貿易振興機構(ジェトロ)などが中国企業の日本進出を促していることもあって、三通国際物流のようなケースは急増している。
市場規模1兆円超に
中国企業の日本進出が加速する一方で、日中間の越境電子商取引(EC)も急成長している。ここでも化粧品の人気が圧倒的で、美容関連だけで販売の半分近くを占める。このほか、紙おむつや粉ミルクなどのベビー用品、健康食品などがよく購入されている。
民間調査会社の富士経済は、16年の日本の中国向け越境EC市場は1兆158億円に上り、3年後にはさらに倍増すると試算した。中国のネット企業は相次いで越境ECに参入しており、SNS(交流サイト)最大手テンセント・ホールディングスはすでに月間のユーザー数が8億人に上っている。
競争は激化しており、各社とも工夫を凝らし始めている。中国で15年2月に設立されたbolome(ボロミ)は、ユーザー数は500万人と多くないが、スマートフォンを利用したライブ中継型の販売に特化して急成長している。
ボロミが取り扱う商品は約5千点。その多くには、リポーターが実演なども織り交ぜて紹介する動画が用意されており、中国の女性から高い支持を得ている。北海道や九州など地方の特産品を多く扱っているのも特徴だ。
販路拡大の好機に
こうした状況は、爆買いの恩恵を受けてきた関西の小売店にとって頭痛の種。さらに中国人観光客の目的は買い物からレジャーや日本文化の体験など「アクティビティ」にシフトしており、小売店への逆風は強まっている。
だが、日本企業が販路を拡大するチャンスにもなり得る。ボロミ日本法人の三浦浩之取締役は「自分たちがいいと思ったものを発掘して中国に紹介することを心がけている。ボロミで販売したことで売り上げが2倍以上になった企業もある」と話す。
ジェトロが今年2月に大阪市内で開いた越境ECの商談会には日本企業約200社が参加。ジェトロ大阪本部対日投資推進課の井上哲哉課長は「参加企業の数は当初の想定を大幅に上回った。これまで輸出や海外販売などに縁のなかった企業の参加が目立つ」と話した。爆買いの失速は新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけになっている。
http://www.sankei.com/west/news/170321/wst1703210001-n1.html
大阪に進出して日本の100円ショップの商品を中国に輸出している三通国際物流の秦玉波取締役=大阪市西区