THE ANSWER3.23
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“新しい野球”が今、世界で広がりを見せている。その名も「Baseball5」だ。
6年前にWBSCが新たなアーバンスポーツとして発表したばかり。まだ日本では馴染みが薄いが、「Baseball5の人気は予想を超えています。世界へ瞬く間に広がっています」と実感を込めるのはWBSCのリカルド・フラッカーリ会長だ。
2017年にキューバ・ハバナで初の国際大会が開催され、22年にはメキシコシティで初のワールドカップ (W杯)が開かれた。この大会で日本代表は銀メダルを獲得している。今年は第1回ユースW杯も実施予定。さらには2026年のダカール・ユースオリンピックの種目に追加されることが決まっている。昨年の東京五輪・パラリンピック期間中に体験ゾーンを設置。盛況となった。
「もちろん、新型コロナ禍は障壁となりましたが、東京五輪でもBaseball5を見せることができました。アフリカでも発展しています。初のアフリカ選手権では10か国が参加しました」
野球・ソフトボールとの大きな違いは、ボール1つあれば他に道具は必要ないことだ。
フィールドも塁間13メートル、フェアゾーンは一辺が18メートルの正方形とコンパクトで、広い球場を必要としないことから手軽にプレーできる仕様になっている。
1チームスタメンは5人。男女混合でなければならない。5イニング制で、守備は5人全員が内野を守る。そして投手はいない。打者が自ら持ったボールを素手で打つことでプレーが始まる。グラブもバットも使わない。
原点になったのは、キューバの子供たちがストリートでやっていた「クアトロ・エスキナス(フォー・コーナーズ)」。ボールはテープなどで丸めた即席の柔らかい球でもOK。狭い場所で4つベースの位置を決めて、少人数でもプレーする。キューバナショナルリーグで審判をしていた時、フラッカーリ会長は魅了された。
「必要なのはボールだけでした。それで、我々は野球という美しいスポーツの異なる形を経験してもらうためにBaseball5を作ったのです。野球とソフトボールでは、グラブ、バット、捕手の防具、専用グラウンドなどが必要です。Baseball5はお金もかからず、誰でも、どこでも簡単にプレーできるんです」
2017年に定められた最初のルールも、「クアトロ・エスキナス」をベースにした。
「主眼に置いたのは、ストリートでも、屋内でも、屋外でも、ボールを使うだけで誰もがプレーできること。プレーしやすく、誰もが加われるものが欲しかったのです」
バッティングは簡単かと思われがちだが、意外と奥が深い。野球やソフトボールとの大きな違いは「柵越えホームランがない」ことだ。
外野フェンスに打球が直撃するか、越えてしまうとアウトになる。狭いフィールド故の規則だ。またファウルは1球打てばアウトになるし、打球がホームベースから3メートル以内でバウンドした場合もアウトになる。限られた場所を狙い打ちする技術が必要だし、守備側も捕球、スローイングと素早いプレーが求められる。
既に100か国以上でプレーされている新スポーツだが、フラッカーリ会長によると“日本人向き”とも言えるとのこと。「日本の野球とソフトボール選手たちはスピードがあり、守備が上手いです。試合のテンポの速さに引きつけられるのではないかと思っています」と広がりを望んでいる。
■野球は五輪競技除外…Baseball5への期待は
野球やソフトボールの普及面で障壁になるのが、バットやグラブなどの道具や専用グラウンドが必要になること。その点、どこでも手軽にできるBaseball5はダイヤモンド型スポーツとして革新的だ。
「Baseball5は安定して成長しています。どこでもプレーできるため、野球とソフトボールの発展を助ける素晴らしいツールだと思います」
こう語るフラッカーリ会長は「学校などの草の根レベルでの発展にとってとても便利なツールです。将来、野球やソフトボールで活躍する選手を引きつける可能性もあるでしょう。ファンや審判を作る最初のステップにもなり得ます」と説く。事実、Baseball5のW杯では、選手の素晴らしい身体能力に観客が魅了されていたという。
東京五輪では復活した野球・ソフトボール競技だが、2024年のパリ大会では除外される。WBSCは28年ロサンゼルス五輪、32年ブリスベン五輪での再復活へ動いている。野球がより世界的に普及したスポーツへ成長を遂げるため、ユース五輪種目になったBaseball5にも期待がかかる。
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