2022/09/09 19:00
歌手で俳優、加山雄三(85)が9日、東京・丸の内の東京国際フォーラムで単独公演を開催した。年内でコンサート活動を終了すると発表しており、この日がホール会場でのラストワンマンステージ。61年の歌手生活を生き抜いた力強い歌声で代表曲「君といつまでも」など26曲を届け、「音楽を愛してきてよかった」と万感の思いがあふれた。
永遠の若大将が見せた〝ラストステージ〟。会場の5000人と全国47都道府県62カ所のライブビューングで視聴した1万3000人が、歴史の証人になった。
「こんなに幸せなことはない。音楽を親友と思って生きてきてよかったと、つくづく思います」
加山はファンの支えを噛み締めて目を細めた。
海にまつわる曲を集めた1部は「海 その愛」「光進丸」などを歌唱。2部では「盛り上がる準備はいいかい?」と客席をあおり、観客の手拍子とともに「蒼い星くず」「夜空の星」などアップテンポの楽曲で沸かせた。
客席では妻で元女優、松本めぐみさん(75)が夫の雄姿を見守っていた。4日に結婚記念日を迎えたばかりの加山は「感謝の言葉は山ほどある。たくさんの幸せを作ってくれた〝お母ちゃん〟にどうしても歌いたい」と「September 4th」を届け、1970年から半世紀以上連れ添った愛妻に感謝を伝えた。
6月に年内でのコンサート活動終了を発表。2019年に軽度の脳梗塞、20年には小脳内出血を患ったこともあり、年齢や体力面などを考慮して「まだ歌えるうちにやめたい」と決断した。
この日の公演では大半の時間を椅子に座ってパフォーマンスしたが、観客の拍手に立ち上がって応える場面が何度もあった。
ラストステージは12月、名誉船長を務める「飛鳥Ⅱ」での船上ライブ。一方で、音楽番組への出演や楽曲制作などの活動は続け、歌手として生涯現役を貫く覚悟だ。
「この間、テープに録音していた未発表曲が数えきれないぐらい出てきた。歌詞をつけ、歌にして届けるから楽しみにしていて」と情熱は冷めることを知らない。
アンコールでは「サライ」「君といつまでも」を披露し、ラスト曲は「愛する時は今」。「みなさんにはたくさん幸せをいただきました。感謝しております。ありがとう!」と右手を突き上げ、涙はなかった。音楽とともに海を愛した永遠の若大将は、次から次へと押し寄せる大波ような観客の大拍手を浴び、これまで立ったどのステージよりも輝きを放っていた。(渡邉尚伸)
https://www.sanspo.com/article/20220909-NKSB2DY5WVGK5OZDQSOV35N5DQ/