典型的な“わきまえる”タイプ?
橋本氏のキャリアを見れば、アスリートとしても政治家としてもエリートコースを完璧に走り切ってきた姿が見えてくる。にもかかわらず、人間としての個性が見えてこないのはどうしたことだろうか。
「森さんの言葉を借りれば、典型的な“わきまえている”女性だよね。言葉の力があるわけではないし、絶対にこうしたいと強く主張するタイプでもない。彼女に強いリーダーシップを期待するのがそもそも間違っていると思う」
前出の元新聞記者はそう言いつつも、橋本氏をかばってみせた。
「だからこそ、組織の中でうまくやって来られた部分は否定できないでしょう。スポーツしかやって来なかった彼女が政界入りしてどうなるかと思ったけど、森さんを筆頭に長老たちに可愛がられてここまで来た。とんがってもいないし、周りを見てスタンスを調整しながら、与えられた職務はそれなりに果たす。今も会長としての仕事を真面目にやってるんじゃないかな」
しかし、橋本氏の出世を苦々しく思う人もいる。橋本氏はスピードスケートでの絶大な実績によって、2006年から2019年まで日本スケート連盟の会長を長く務めていた。しかしスケート連盟はスピードスケートだけでなく、フィギュアスケートも管轄していた。そのフィギュア界では、橋本氏の評判は極めて悪いのだ。フィギュア取材が長い現役の中堅新聞記者は、「あのときのことは今でも許せません」と怒りを露わにする
「あのときのこと」とは、2014年ソチオリンピックの打ち上げパーティーで高橋大輔にキスを強要したとされる事件だ。
「当時の橋本氏は日本選手団の団長も務めていて、選手から見れば決して機嫌を損ねてはいけない存在だった。その立場を利用して、公衆の面前で口と口のキスですからひどいですよ。さらに問題が発覚した後も、謝罪は書面だけ。逆に、高橋選手が『大人と大人がハメを外しすぎたということで、お酒が入ってしまい、はしゃぎすぎてああなった。反省してます』と謝罪に近い言葉を発する羽目にまでなりました。フィギュアファンは決してあの事件を忘れません」
2014年のソチオリンピック関連では、浅田真央への“安倍総理(当時)とのハグ強要事件”も起こしている。
「ソチから帰国したあとの記念品贈呈式で、明らかに戸惑っている真央ちゃんに何度も総理とハグするように促していました。安倍総理が気を使って一度は断ったものの、橋本さんが強要するようにハグさせた。しかも流れの中で羽生結弦さんが真央ちゃんにハグを勧める形になって、羽生さんにまで批判が及びました。ただ、どう考えても悪いのは橋本さんです」(前出・中堅記者)
さらに最近では、水泳業界からの評判も芳しくないという。日本水泳界の至宝である池江璃花子の白血病公表に対する発言がきっかけだという。池江が診断を公表した2019年2月12日の4日後に、オリンピック関連のイベントで橋本氏が「オリンピックの神様が池江璃花子の体を使って、オリンピック、パラリンピックというものをもっと大きな視点で考えなさいと言ってきたのかなと思いました」と発言したのだ。
「白血病は競技復帰どころか生命の危険さえある病気。しかも池江選手は当時18歳です。そんな彼女が苦しみ抜いて白血病を公表した直後のあまりにも無神経な発言に周囲は驚きました。発言の真意を問われて『私たちこそが、池江選手の治療できる環境、頑張ってもらえる環境を作らなければならない』と釈明しましたが、まったくアスリートファーストじゃないですよね」(前出・中堅記者)
直前には「私も高校3年生の時に(腎臓の)病気をして、立ち直ることができた一人であるなというふうに思っております」と自分の体験に重ねてエールを送っていたが、この時も“神様発言”への批判が巻き起こった。
橋本氏自身は小学生の時から腎臓の持病を抱えてアスリートとして活動を続けて、輝かしい実績を残した。そのことは誰にも否定されるものではない。その背後には、芯の強さや粘り強さといった性質があるのだろう。
しかし現在は、肝心の“芯”がどちらを向いているのかが見えない状態だ。一見物腰は静かだが、その“芯”が国民の意志と相反するものだった場合、大きく国民の期待を踏み外す危惧も感じる。
前任の森氏の危うさはわかりやすかった。しかし橋本氏の存在感のなさは、もしかするとそれ以上に危ういものなのかもしれない。
全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/1a926c7434948465008ab690dd4dd6128cb844d5?page=2