漫画『鬼滅の刃』は、鬼を討伐するための組織・「鬼殺隊」の物語だ。鬼殺隊の総領・産屋敷耀哉と、「鬼の始祖」である鬼舞辻無惨は、敵対する組織の長として登場する。この産屋敷耀哉は、隊士たちからの人望を一心に集める人格者として描かれながらも、鬼殺に対する恐ろしいまでの「執念」をみせる。「子どもたち」と呼ぶ隊士の多くが命を落とし、自らの体も病に侵されていくなかでも、耀哉は鬼舞辻を中心とした「鬼」と戦い続けることをやめない。そしてまた、鬼舞辻も耀哉に異様なこだわりをみせる。その根底には、2人が決して逃れることができない「呪い」が横たわっていた。(以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)
鬼舞辻の討伐に心血を注いできた産屋敷家
『鬼滅の刃』には、「鬼殺隊」と呼ばれる鬼を滅殺するための組織が描かれている。そして、まだ23歳という若さの、産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや)という青年が、その長として組織の指揮に当たっている。鬼殺隊の目的は「鬼を倒すこと」。人間を喰う鬼を根絶やしにするために、剣士が養成されている。彼らの最終的な目的は、この世の中で最初に鬼になった人物、鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)を葬ることである。
鬼舞辻は、自らの血を「人間」に分け与えることで、人を鬼に変える能力を持つ。鬼舞辻が死亡すると、他の鬼たちも消滅するが、鬼舞辻が生き続ける限り、この世の中から鬼はいなくならない。そのため、鬼殺隊は日々、鬼舞辻の居場所を特定するため、さまざまな諜報活動も行っている。耀哉の祖先である産屋敷家の代々当主たちもまた、鬼舞辻の討伐に心血を注いできた。なぜ産屋敷一族は、「鬼」の滅殺に生涯をささげることになったのか。
■産屋敷耀哉にかけられた「呪い」とは?
実は、鬼舞辻は産屋敷家と同じ一族の出身である。耀哉が当主になったのが大正時代(1910−20年代)で、鬼舞辻が誕生したのは平安時代(794年以降)。2人の誕生には千年ほどの隔たりがあるが、彼らには美しい容姿、カリスマ性など、いくつもの共通点がある。皮肉なことに、鬼舞辻と耀哉は双子のようにそっくりなのだ。産屋敷が「短命」な「人間」なのに対し、鬼舞辻は「永遠の命」を持った「鬼」であることも、一つの対をなしている。
もともと耀哉と鬼舞辻を輩出した産屋敷家は、豊かな財と高い地位にあった。そして、この産屋敷家には、常人とは異なる「能力」が備わっていた。
<特殊な声に加えて この勘というものが産屋敷一族は凄まじかった 「先見の明」とも言う 未来を見通す力 これにより彼らは財を成し幾度もの危機を回避してきた>(16巻・第139話「落ちる」)
しかし、産屋敷一族は皆、30歳まで生きられないという短命の「呪い」がかけられていた。耀哉の説明によると、産屋敷一族が「早死」なことは、産屋敷家が鬼舞辻という「はじまりの鬼」を誕生させてしまったことに対する、神仏からの「天罰」だという。そして、ある神主から、「鬼を倒すために心血を注ぎなさい」と宣託を受けたことを根拠に、千年以上もの間、産屋敷家は鬼舞辻と戦い続けることになったのだった。
1/31(日) 11:32
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b6a6738639c1d7bb5efbf95a36419f68f30ff39