ダイヤモンドオンライン2021.1.27 20:30
https://diamond.jp/articles/-/260493
● 改革開放政策の中東 規制も徐々に緩やかに
「1980〜90年代にかけて、日本のアニメ作品が現地で放送され始めました。当時放送されて今でも人気なのは『UFOロボ グレンダイザー』や『キャプテン翼』です。その後、ネットの発達で『NARUTO』『ワンピース』『名探偵コナン』などのメジャー作も見られ、直近ではNetflix、クランチロールなどの配信サービスにより『鬼滅の刃』なども日本とタイムラグなく人気です。アニメ以外でも『ストリートファイター』や『鉄拳』など格闘ゲームの人気は高いですね」
2012年からは世界のポップカルチャーを扱う大型イベント「ミドルイースト フィルム&コミコン(Middle East Film&Comic Con)」、通称ドバイコミコンも開催され、毎年5~6万人ほどが来場する人気ぶりだ。さらに、サウジアラビアでの大型イベント「サウジアニメエキスポ」では日本のアニソン界の巨匠、水木一郎氏が招聘(しょうへい)され現地でライブも行っている。
「サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が中心となり、2016年にまとめた経済政策『サウジ・ビジョン2030』では、石油依存型経済からの脱却、雇用拡大が打ち出されています。そのなかのひとつにエンタメ産業の強化が上げられており、その分野における人材やコンテンツの育成に取り組んでいます。日本もそれに協力する形で『日・サウジ・ビジョン2030』を発表し、技術提供や人材育成などさまざまなプロジェクトを共同で行っています」
サルマン皇太子による改革路線で、近年は徐々に宗教上の規制が緩められている。現地では女性は肌や髪の毛を隠すことが推奨されていたため、半袖、ミニスカートなど露出が大きいキャラが登場する作品は店舗にてそのままでなかなか販売できなかった。ただ、最近は肌の露出を隠すための白いシールが貼られたマンガなどが店舗店頭で販売されているという。
● アニメ、ゲーム、マンガ 日本は2次元でしか戦えない
日・サ共同プロジェクトの例は複数ある。サルマン皇太子が設立したミスク財団は2017年6月にクリエーターを育成する教育機関「デジタルハリウッド大学」およびプラモデル・模型の総合メーカー「タミヤ」とMOU(基本合意書)を締結。他にも様々な日本の企業と連携して、人材育成を図っている。
「ミスク財団は日本のゲーム会社SNKの株式シェアの33.3%を獲得し、会社の確固たる所有権を得るために株式の過半数以上、51%までを購入する予定です。当初は1月で一旦33.3%まで取得する予定でしたが、3月に一旦延期されました。これが今後どのように進められるのか追いかける必要がありますが、この動きはそもそも自国内におけるゲーム人材の育成のための投資であり、SNKは2017年からサウジアラビアのエンタメ企業の根幹を担っている会社の一つ、『マンガプロダクションズ』とアニメとゲーム分野で共同プロジェクトを行っていました」
SNKといえば『サムライスピリッツ』『餓狼伝説』『ザ・キング・オブ・ファイターズ』など数多くのゲームを制作してきた会社。キャラクターライセンシングだけでなく将来的なコンシューマーゲームの制作を中東で行うことも視野に入れた投資ではないか、と鷹鳥屋氏は予測する。
「近年は中東においてゲームやアニメが以前よりも市民権を得ています。例えば現在サウジアラビアの実権を握るムハンマド皇太子殿下が音頭を取りエンタメ分野への投資が行われていることもあり、30歳を過ぎた大人がアニメや漫画が好きである、ということに対して抵抗感がグッとなくなりました。マーケットが広がると同時に今後は国外の作品を楽しむだけではなく、中東オリジナルのゲームやアニメの制作が現在も進んでいますが、もっと進んでいくでしょう。石油以外の産業や、さまざまな分野において外部リソースを取り込み、ノウハウを吸収し国内の人材へ結びつけ最終的には自国で生産できるようにするという戦略。その中で日本はゲームとアニメ分野でまだ必要とされていると言えます」
ただ、逆に言うと中東において日本のエンタメが存在感を示せるジャンルはアニメとゲームしかないのだ。鷹鳥屋氏も、その点で厳しい指摘をする。
「中東でも人気があるコンテンツにBTSなどの韓流アーティストがあります。BTSはサウジアラビアの6万人収容が可能な巨大ドームで、クラシックなどを除けばアジア人グループで初の大型コンサートを行っています。映画もマーベルなどアメコミが人気、スターウォーズも一定の人気があります。邦画はほとんど人気がありません。残念ながら“3次元”のエンタメで日本が勝てる要素はあまりありません。2次元のアニメやゲームなど、日本は次元を落とした戦い方で勝負するしかないのが現状です」
(長文のため一部削除)
https://diamond.jp/articles/-/260493
● 改革開放政策の中東 規制も徐々に緩やかに
「1980〜90年代にかけて、日本のアニメ作品が現地で放送され始めました。当時放送されて今でも人気なのは『UFOロボ グレンダイザー』や『キャプテン翼』です。その後、ネットの発達で『NARUTO』『ワンピース』『名探偵コナン』などのメジャー作も見られ、直近ではNetflix、クランチロールなどの配信サービスにより『鬼滅の刃』なども日本とタイムラグなく人気です。アニメ以外でも『ストリートファイター』や『鉄拳』など格闘ゲームの人気は高いですね」
2012年からは世界のポップカルチャーを扱う大型イベント「ミドルイースト フィルム&コミコン(Middle East Film&Comic Con)」、通称ドバイコミコンも開催され、毎年5~6万人ほどが来場する人気ぶりだ。さらに、サウジアラビアでの大型イベント「サウジアニメエキスポ」では日本のアニソン界の巨匠、水木一郎氏が招聘(しょうへい)され現地でライブも行っている。
「サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が中心となり、2016年にまとめた経済政策『サウジ・ビジョン2030』では、石油依存型経済からの脱却、雇用拡大が打ち出されています。そのなかのひとつにエンタメ産業の強化が上げられており、その分野における人材やコンテンツの育成に取り組んでいます。日本もそれに協力する形で『日・サウジ・ビジョン2030』を発表し、技術提供や人材育成などさまざまなプロジェクトを共同で行っています」
サルマン皇太子による改革路線で、近年は徐々に宗教上の規制が緩められている。現地では女性は肌や髪の毛を隠すことが推奨されていたため、半袖、ミニスカートなど露出が大きいキャラが登場する作品は店舗にてそのままでなかなか販売できなかった。ただ、最近は肌の露出を隠すための白いシールが貼られたマンガなどが店舗店頭で販売されているという。
● アニメ、ゲーム、マンガ 日本は2次元でしか戦えない
日・サ共同プロジェクトの例は複数ある。サルマン皇太子が設立したミスク財団は2017年6月にクリエーターを育成する教育機関「デジタルハリウッド大学」およびプラモデル・模型の総合メーカー「タミヤ」とMOU(基本合意書)を締結。他にも様々な日本の企業と連携して、人材育成を図っている。
「ミスク財団は日本のゲーム会社SNKの株式シェアの33.3%を獲得し、会社の確固たる所有権を得るために株式の過半数以上、51%までを購入する予定です。当初は1月で一旦33.3%まで取得する予定でしたが、3月に一旦延期されました。これが今後どのように進められるのか追いかける必要がありますが、この動きはそもそも自国内におけるゲーム人材の育成のための投資であり、SNKは2017年からサウジアラビアのエンタメ企業の根幹を担っている会社の一つ、『マンガプロダクションズ』とアニメとゲーム分野で共同プロジェクトを行っていました」
SNKといえば『サムライスピリッツ』『餓狼伝説』『ザ・キング・オブ・ファイターズ』など数多くのゲームを制作してきた会社。キャラクターライセンシングだけでなく将来的なコンシューマーゲームの制作を中東で行うことも視野に入れた投資ではないか、と鷹鳥屋氏は予測する。
「近年は中東においてゲームやアニメが以前よりも市民権を得ています。例えば現在サウジアラビアの実権を握るムハンマド皇太子殿下が音頭を取りエンタメ分野への投資が行われていることもあり、30歳を過ぎた大人がアニメや漫画が好きである、ということに対して抵抗感がグッとなくなりました。マーケットが広がると同時に今後は国外の作品を楽しむだけではなく、中東オリジナルのゲームやアニメの制作が現在も進んでいますが、もっと進んでいくでしょう。石油以外の産業や、さまざまな分野において外部リソースを取り込み、ノウハウを吸収し国内の人材へ結びつけ最終的には自国で生産できるようにするという戦略。その中で日本はゲームとアニメ分野でまだ必要とされていると言えます」
ただ、逆に言うと中東において日本のエンタメが存在感を示せるジャンルはアニメとゲームしかないのだ。鷹鳥屋氏も、その点で厳しい指摘をする。
「中東でも人気があるコンテンツにBTSなどの韓流アーティストがあります。BTSはサウジアラビアの6万人収容が可能な巨大ドームで、クラシックなどを除けばアジア人グループで初の大型コンサートを行っています。映画もマーベルなどアメコミが人気、スターウォーズも一定の人気があります。邦画はほとんど人気がありません。残念ながら“3次元”のエンタメで日本が勝てる要素はあまりありません。2次元のアニメやゲームなど、日本は次元を落とした戦い方で勝負するしかないのが現状です」
(長文のため一部削除)