一方で、長年チームの主力として活躍してきた選手を奪い取られるDeNAファンの心中は穏やかではない。「たとえ巨人が来季もセ・リーグを制したところで、また日本シリーズで惨敗するだけ」と負け惜しみにも近い批判の声も出ているようだ。特に梶谷に対しては、“特別な思い”で応援を続けていたDeNAファンも少なくない。野球担当記者が話す。
「梶谷はDeNAの象徴のような選手でしたからね。ファンは打てない、守れない姿に何度も失望しながら、2013年の夏に突然覚醒した打棒に歓喜した。『トリプルスリーも狙える』と潜在能力の高さは折り紙付きでしたが、その後は期待されたほどの活躍はできなかった。しかし、2013年夏の爆発を見ているファンは『いつかやってくれる』と残像を捨てきれなかった。そして2020年、梶谷はファンの長年の願いを叶えるかのように、打ちまくったのです」(以下同)
今年は9月に球団新記録の月間42安打を達成し、リーグ2位の打率3割2分3厘でシーズンを終えた。不動の1番として打ちまくった梶谷だが、FA権取得までの道のりは決して平坦ではなかった。
斎藤佑樹(日本ハム)や田中将大(NYヤンキース)と同学年の梶谷は、2006年高校生ドラフト3巡目で横浜に入団。5年目まで全く芽が出なかったが、2012年に就任した中畑清監督に見出され、いきなり開幕戦で『1番・ショート』でスタメンに抜擢された。しかし、足は速いがなかなか塁に出られず、守備では悪送球などミスも目立った。その年は80試合出場で、打率1割7分9厘という成績でシーズンを終えた。
翌年4月9日の広島戦、セカンドで先発出場した梶谷は守備で大きなミスを犯した。3回の2死満塁でショートゴロが飛んだ際、ベースカバーに入らなかったのだ。中畑監督に『ありえないミス』と叱責され、座禅を組めと指令された。6月3日の日本ハム戦では、無死満塁で4番・ブランコが浅いライトフライを打ち上げた。3塁ランナーの金城龍彦がストップしているのに、2塁ランナーの梶谷が3塁へ猛突進。結局、金城が押し出される格好になり、暴走でチャンスを潰してしまった。
「本当に考えられないミスを連発しており、もし巨人なら1軍で使われるレベルではなかったと思います。それでもDeNAは選手層が薄かったし、中畑監督が辛抱強く使ったことで、2013年夏に開花した。8月3日の中日戦でケガから復帰すると、いきなり2ランホームランを含む4安打。11日のヤクルト戦では5安打の固め打ち。この日からの8試合で6本塁打を放ち、8月は3割9分8厘、8本塁打、22打点と大爆発。9月も3割3分、7本塁打、16打点と結果を残した。この年、DeNAは5位に終わりましたが、3度も7点差から逆転勝ちするなどミラクルを起こしていた。翌年に向けて、ファンの期待は大きく高まりました」
2014年、外野にコンバートされた梶谷は主に『3番・ライト』で142試合に出場。盗塁王に輝くも、前年の打棒は影を潜め、2割6分3厘、16本塁打、72打点と期待されたほどの成績は残せなかった。それ以降もレギュラーは確保するものの、打率は3割に遠く及ばず、盗塁の数も年々減少。2018年、2019年はケガもあって、2軍生活も長く続いた。ファンからは「もう梶谷に期待するのはやめよう」という声も出ていた。
「それが今年、7年ぶりに覚醒。これまで文句を言っていたファンも、手のひらを返して喜んだ。そして、三浦大輔新監督を迎える来年、生え抜きで苦楽を共にしてきた梶谷が23年ぶりの優勝に導いてくれるはずだと夢を見ていた。そんな長い年月をかけてようやくその潜在能力を開花させようとしている選手が、FAでライバル球団の巨人に行ってしまう。いくらルールに則っているとはいえ、DeNAファンが巨人に嫌味の1つや2つ言いたくなる気持ちはわかります」
FAは選手が獲得した立派な権利であり、その行使についてファンが何か言っても仕方がない。とはいえ、梶谷に対しては、簡単に割り切ることのできない複雑な思いもあるようだ。DeNAファンにとって来季の巨人戦は、他球団との試合とは違う、特別な試合になるのかもしれない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/827cf9a7d63e248adb8ac3d80cd01fcea04a960d
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