米国のプロ野球界は大リーグを頂点とするピラミッド状になっている。チケット売り上げ以外にも収入がある大リーグと違い、試合開催時の入場料が頼りのマイナーリーグでは今後の存続が不安視されるチームが現れても不思議ではない。(米ミシガン州在住ジャーナリスト、共同通信特約=谷口輝世子)
▽中小零細企業
開幕延期に伴い、今シーズンの試合数は減少することが予想される。大リーグ機構と選手会は試合数に比例して年俸を変動させることで合意した。とはいえ、平均年俸が約405万ドル(約4億4千万円)と高額な大リーグ所属選手はまだいい。試合減少によって大打撃を受けるのは、球場内の時間給で働く人たちだ。大リーグ機構は30球団が各100万ドル(1億800万円)ずつ拠出した総額3千万ドル(約32億円)で従業員を支援することを決めた。
大リーグ機構はマイナーリーガーにも救済措置を取った。マイナーリーグはルーキーリーグから3Aまで7つの組織に分かれており、約160の球団がある。AP通信によると、選手1人当たり週400ドル(約4万3千円)を補償。当初はマイナーリーグ開幕前日の4月8日までとしていたが、5月末まで補償期間を延長した。メジャー契約を結んでいる選手や所属球団から住居や食料の提供を受けている選手は対象外だが、サポートの姿勢を示したと言えるだろう。
マイナーリーグは大リーグ球団の戦力となる選手の育成や供給源としての役割を持つ。それゆえ、選手の給与は大リーグ球団が支払う。一方、球団運営は原則として独立採算制。試合開催などに伴う経費をどう賄うかは、それぞれのチームの経営陣が担っている。大リーグにとってマイナー選手の支援は責任の範囲内だが、マイナー球団の経営は範囲外ということになる。
世界中にファンを持つ大リーグを大企業とするなら、マイナーリーグの球団はさしずめ「中小零細企業」といえる。小さな都市にあって、数千人から1万人程度を収容する球場は地域ファンの憩いの場となっている。ニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスなど大都市にあるメジャー球場と比べると、選手との距離が近くふれあう機会も多い。米国の野球文化を下支えする、なくてはならない存在なのだ。
4/7(火) 10:32配信
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