阪神・藤浪晋太郎投手(25)が2日、プロ8年目に懸ける思いをスポニチ本紙に明かした。ここ数年の知られざる苦悩を吐露するとともに、武豊(50)、野茂英雄(51)という2人のパイオニアから贈られた言葉を胸にキャリア初の未勝利に終わった昨季からの巻き返しを宣言。昨年、強く実感した勝たなければいけない「理由」も口にした。
ゼロ…いや、マイナスからの出発かもしれない。プロで初めて0勝に終わった昨年を振り返る言葉に混じりっ気はない。藤浪は、目前に迫る勝負の1年に挑む覚悟を口にした。
「悔しいシーズンなのは間違いないですけど、その前の2年(17、18年)も0勝でもおかしくなかった。あの状態でごまかして3勝も5勝もよくできたなと。そういう意味では(0勝だったのも)不思議じゃない。ただ、ショックを受けてても仕方ないので、今年やるしかない。ありきたりですけど、今はそういう気持ちです」
積み上げてきた数字は一旦、足下に置き批判の声にも過剰に反応しない。吹っ切れたようにさえ見える。ただ、その境地に至るまでは、決して簡単ではなかった。胸中には、幾度となく歴史を変えてきた「パイオニア」2人の言葉。ある時、武豊に語りかけられた。
「おごりとかそういう意味じゃなく、自分のことをもっと特別だと思ったほうが楽になれるよ、と。いろんな批判、バッシングを受けても自分でおれるよと。(武)豊さんは特にそういう話をしてくれました。あえてそう思えよと。特別だからそれだけ批判も言われる。そう思うようにしてから気楽になれた」
16年から成績が下降し始め、不振で初めて2軍降格した17年はファンだけでなくチーム内から厳しい声も聞こえてきた。「今思えば病んでましたね…。グラウンドに行くのも憂鬱(ゆううつ)になった時期もあったので。全員が敵に見えるというか、疑心暗鬼になるというか。そんな悪いことしたのかなと…」。制球難による近年の不振とは別問題でも実体のない“何物か”と戦っているうちに心も疲弊し切っていたのは確かだった。
時を同じくして、親交のある野茂英雄氏からも、稀代のジョッキーと同様に、肩の力を抜くように進言された。「野茂さんにも、好き勝手にやればいいと。チームのために、姿勢とかキャプテンシーとかは歳取ったら勝手にできる。自分の野球を楽しんだら?と」。
だから、今は、やるべきことがはっきりと見える。まずは、昨年1度も手にできなかった白星をつかみ取ること。勝たなければいけない理由もある。昨年、唯一の1軍登板だった7月31日の中日戦。初回、マウンドへ向かうと浴びたことのない量の声援が注がれた。
「本当にびっくりした。今まで歓声に応えようとか、ファンの期待に応えようとか、あんまり考えてこなかったんですけど。あれはちょっと…。こういう空気感で野球やらないとあかんなと、こういう人たちのために野球やらないとあかんなと思いました。今までなかった感情。こういうところで野球やるためにプロ野球にいるんだなと思いました」
エースの看板を背負うはずだった男が「追い込まれた」という表現が正しいのかもしれない。「プロなんでいつ切られても、おかしくないと思ってます。まだいける、とかそんな感じでは一切ないんで」。すべてを覆す1年がやってきた。(遠藤 礼)
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1/3(金) 5:35配信