ニュース番組におけるコメンテーターや解説者の位置付けに変化が生じています。これまで聞き手の役割に徹していた芸能人がニュースを伝えたり、意見を述べるケースが出てきているほか、進行役だったテレビ局所属のアナウンサーの中にも、意見をストレートに言う人が現れています。これにはどのような背景があるのでしょうか。
これまでニュース番組は、ニュースキャスターがニュースを伝え、専門家がこれにコメントを加えるというスタイルが標準的でした。キャスターはテレビ局の社員のこともありますし、フリーで活動している人もいますが、いずれにせよニュースを伝えることを職業とする人が、キャスターとしての役割を担ってきたわけです。また、ニュースに対してコメントを行う人についても、その分野の専門家か、ジャーナリストなど報道を職業にしている人が中心でした。
ところが最近ではキャスターに芸能人を登用するケースが出てきているほか、局所属のアナウンサーがニュースについて意見を言うケースも増えてきています。ジャーナリストの池上彰氏は、芸能人がニュースを伝えることについて「違和感を禁じ得ない」と述べています。
テレビで活躍している池上氏には利害関係がありますから、発言については、ある程度、割り引いて考える必要がありますが、テレビ局側のスタンスが変わってきていることだけは確かでしょう。では局側は、なぜ芸能人を起用したり、自局のアナウンサーに意見を言わせるようになってきたのでしょうか。背景にあるのは、やはり視聴率の問題といえそうです。
テレビの視聴率はジワジワと低下が進んでおり、5年前には60%を超えていた総世帯視聴率(プライムタイム)は現在では58%台となっています。メインのキャスターに芸能人を据えれば、視聴率のアップにつながりますから、視聴率を優先した結果と考えることができます。また、同じ社員でも顔と名前が知られていない記者を出すよりも、局アナに意見を言わせた方が、視聴者に対する印象も強くなりますから、これも同じ効果を狙っているのかもしれません。
これに加えてテレビ局のリスクヘッジを指摘する声もあります。芸能人やアナウンサーはジャーナリストや専門家ではありませんから、発言内容はすべて事前に局側がチェックし、本番ではカンペなどで指示が出ている可能性が高いでしょう。専門家の場合には、口を滑らせて炎上を招くというリスクを完全に排除できません。芸能人や局アナであれば、すべて台本通りに発言してくれますから、制作サイドにとっては極めて安心です。
このような形の報道番組が果たして報道番組なのかは微妙なところですが、今の日本の社会風潮を考えた場合、こうした流れは加速していくのかもしれません。
(The Capital Tribune Japan)
6/16(土) 8:00配信
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