【桂春蝶の蝶々発止。】
ドナルド・トランプ大統領が来日しました。安倍晋三首相とのゴルフ外交や、銀座の高級鉄板焼きでの夕食、ハンバーガーでのワーキングランチ…。さまざまなシーンで彩られた訪日劇でした。
中でも、一番僕が熱い思いを感じたのは「拉致被害者家族との面談」です。これに尽きます。
実は、トランプ氏が来日した同時期、私はわが娘と仕事の行動をともにしていました。学校の都合で1週間休みとなり、社会見学の1つとして全国各地の独演会で、芸を聴かせて回ったのです。
「パパって、いつもこんな生活しているの?」と聞かれ、「そうだよ」と答えると、「へぇー、日雇いも楽しそうだね」と言われました(苦笑)。どこで、そんな言葉を覚えてくるのか、あれには一本取られました。
最終日、新幹線の駅で娘が迷子になりました。幸い5分ほどで見つかりましたが、その間は絶望のふちに立たされました。このまま二度と会えなくなったら? 最悪の状況を想像するほど自分への呵責(かしゃく)も重なり、たった5分で憔悴(しょうすい)しました。たった5分で…親心とはそういうものです。
1977年11月15日、当時13歳の横田めぐみさんは、北朝鮮の工作員に拉致されました。拉致とは、すなわち「誘拐テロ」です。国連に加盟する主権国家の元首が自ら下した命令で、別の主権国家の国民を拉致して奪い去ったのです。
めぐみさんのご両親は、僕がたった5分間味わった焦燥感を「40年間」も感じておられるのです。
「先の大戦以降、日本は平和で戦争はなかった」という人がいますが、僕はそうは思いません。「主権国家による拉致」を考えれば、日本と北朝鮮は準戦争状態、その域にあると思います。そんな意識が、この国にあるのかどうか。
トランプ氏は記者会見で「どのような子供もあのような残酷な目に遭うべきではない。どんな親でも40年にわたり、心が痛むような目に遭うべきではない」と語りました。拉致被害にスポットを当てて、北朝鮮に圧力を与えてくれました。米国の力を借りても何でも、ともかく解決へとつなげるべきです。
一部の新聞は「世界から問題視されるトランプ氏と安倍首相の距離が近すぎる」「ゴルフ外交はおかしい」などと批判していました。
そんなことを書いている手間があるなら、拉致被害の啓蒙(けいもう)に力を注いだらどうなんでしょう?
拉致被害者家族の方々も年齢を重ねておられます。ここは今一度、日本人の心を1つにし、拉致被害の解決を目指すべきです。他国の大統領だけに任せていてはいけません。何より大切なのは私たち日本人の意識なのですから。
■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。
夕刊フジ2017年11月11日17時12分
https://news.infoseek.co.jp/article/11fujizak20171111001/
ドナルド・トランプ大統領が来日しました。安倍晋三首相とのゴルフ外交や、銀座の高級鉄板焼きでの夕食、ハンバーガーでのワーキングランチ…。さまざまなシーンで彩られた訪日劇でした。
中でも、一番僕が熱い思いを感じたのは「拉致被害者家族との面談」です。これに尽きます。
実は、トランプ氏が来日した同時期、私はわが娘と仕事の行動をともにしていました。学校の都合で1週間休みとなり、社会見学の1つとして全国各地の独演会で、芸を聴かせて回ったのです。
「パパって、いつもこんな生活しているの?」と聞かれ、「そうだよ」と答えると、「へぇー、日雇いも楽しそうだね」と言われました(苦笑)。どこで、そんな言葉を覚えてくるのか、あれには一本取られました。
最終日、新幹線の駅で娘が迷子になりました。幸い5分ほどで見つかりましたが、その間は絶望のふちに立たされました。このまま二度と会えなくなったら? 最悪の状況を想像するほど自分への呵責(かしゃく)も重なり、たった5分で憔悴(しょうすい)しました。たった5分で…親心とはそういうものです。
1977年11月15日、当時13歳の横田めぐみさんは、北朝鮮の工作員に拉致されました。拉致とは、すなわち「誘拐テロ」です。国連に加盟する主権国家の元首が自ら下した命令で、別の主権国家の国民を拉致して奪い去ったのです。
めぐみさんのご両親は、僕がたった5分間味わった焦燥感を「40年間」も感じておられるのです。
「先の大戦以降、日本は平和で戦争はなかった」という人がいますが、僕はそうは思いません。「主権国家による拉致」を考えれば、日本と北朝鮮は準戦争状態、その域にあると思います。そんな意識が、この国にあるのかどうか。
トランプ氏は記者会見で「どのような子供もあのような残酷な目に遭うべきではない。どんな親でも40年にわたり、心が痛むような目に遭うべきではない」と語りました。拉致被害にスポットを当てて、北朝鮮に圧力を与えてくれました。米国の力を借りても何でも、ともかく解決へとつなげるべきです。
一部の新聞は「世界から問題視されるトランプ氏と安倍首相の距離が近すぎる」「ゴルフ外交はおかしい」などと批判していました。
そんなことを書いている手間があるなら、拉致被害の啓蒙(けいもう)に力を注いだらどうなんでしょう?
拉致被害者家族の方々も年齢を重ねておられます。ここは今一度、日本人の心を1つにし、拉致被害の解決を目指すべきです。他国の大統領だけに任せていてはいけません。何より大切なのは私たち日本人の意識なのですから。
■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。
夕刊フジ2017年11月11日17時12分
https://news.infoseek.co.jp/article/11fujizak20171111001/