近年、“怪優”ぶりが光る俳優・鶴見辰吾(52)。「日本代表の覚悟で臨んだ」というソン・ガンホ(50)主演の韓国映画「密偵」(11日公開、キム・ジウン監督)でも強烈な存在感を放つ。中学1年で芸能界に入り、俳優生活40年。最近は自転車やマラソンでもおなじみだが、体力の極限に向き合うことも、芸域を広げ、仕事にいい影響を与えている。
映画は、日本統治時代の1920年代の朝鮮半島を舞台に、独立運動団体と日本警察の攻防を描くサスペンス。鶴見は警察のナンバー2である朝鮮総督府警務局部長ヒガシを演じる。朝鮮人でありながら同警察に所属する主人公イ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)に団体の情報を得るよう追い詰めるヒガシ。不安定な日韓関係の中、出演に迷いはなかったのだろうか。
「監督から『反日映画ではない。違う立場での激突。その中で葛藤するスパイを描きたい』と。アクションエンターテインメントと分かったので、迷いはなかったですね」。韓国映画は11年「マイウェイ 12000キロの真実」に続いて2作目。ジウン監督は、不気味な科学者を好演した「デスノート」のスピンオフ映画「L change the WorLd」、戦国武将・小早川隆景を演じた大河ドラマ「軍師官兵衛」を評価し、鶴見を指名してきた。
「選んでくれた喜びと感謝。悪役的な男をカッコ良く描いてくれて。あの役が締まらないと作品がしょぼくなる。責任重大。同世代で立派な俳優が多くいる中、日本代表の覚悟。鶴見で良かった、と言われることを残して帰ろう、という気構えでしたよ」
ガンホとの共演シーンは、緊迫ムードが漂うが、撮影現場は和やかだった。
「実に丁寧な方。最初に会ったとき、僕を見て立ち上がって握手してくれるような。『難しい役どころをよくやってくださった』とも言ってくれて」。それらの言葉にも力をもらい、役のイメージをより鮮明に膨らませていった。
早いもので芸能生活40周年。事務所のプロフィル欄には、約200の出演作が小さな字でびっしり書かれてある。幼少期から観劇に行けばのめり込んで見ていた。その“資質”を見て叔母が応募したのが中1のデビュー作ドラマ「竹の子すくすく」(テレビ朝日系)。2600人から片平なぎさの弟役に選ばれ、人生が変わった。
「よく覚えてます。みんな訓練された子ばかりで俺の来る場じゃないな、と。でも後から、片平さんと並んで一番弟っぽかったのが僕だったと。他の人はイケメンで恋人に見えたそうです」
TBS系ドラマ「3年B組金八先生」で有名になり、薬師丸ひろ子と共演した映画「翔んだカップル」(80年、相米慎二監督)もヒット。ナイーブな青年を演じられる若手の筆頭格として注目を集めた。
「あれは演技でなく、自然の姿をカメラが追って撮ってくれていた。相米さんは僕なんて放し飼いの猿同然だったのでは。芝居の基礎がなく、後でずいぶん苦労しましたよ」
しかし、これらは芸能史に残る名作として語り継がれる。「40年近く前の作品で記憶の共有ができる。この仕事って幸せだと思いますね」
今回、日本を離れて映画に出て、海外作品への思いがより強くなった。「ことごとく落ちてるんだけど、オーディションは受けてるんです」と飾らず明かす。「誰も僕のことを知らず、言葉も通じない中で、自分の演技がどう映り、どう受け入れられ、人の心の奥をどこまで打てるのか。いまそれがすごく知りたいんですよね」。
ロードバイク、マラソンは、趣味の域を超えた本格派。顔つきもどんどんワイルドな印象になってきた。さらに最近は、いかに速く良いスコアでラウンドできるかを競う「スピードゴルフ」にも夢中。「僕は芝居がうまくないし中身のない人間。付加価値をつけるためにちょっと変わったことをしているだけ」と冗談っぽく答えるが、半端でないのめり込み方だ。「街で若い人が僕の顔を見て『ほらほら、あのいつも自転車に乗ってる人だ』と思ってもらえれば十分」とも話した。
つづく
11/5(日) 10:03配信 スポーツ報知
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171104-00000161-sph-ent
映画は、日本統治時代の1920年代の朝鮮半島を舞台に、独立運動団体と日本警察の攻防を描くサスペンス。鶴見は警察のナンバー2である朝鮮総督府警務局部長ヒガシを演じる。朝鮮人でありながら同警察に所属する主人公イ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)に団体の情報を得るよう追い詰めるヒガシ。不安定な日韓関係の中、出演に迷いはなかったのだろうか。
「監督から『反日映画ではない。違う立場での激突。その中で葛藤するスパイを描きたい』と。アクションエンターテインメントと分かったので、迷いはなかったですね」。韓国映画は11年「マイウェイ 12000キロの真実」に続いて2作目。ジウン監督は、不気味な科学者を好演した「デスノート」のスピンオフ映画「L change the WorLd」、戦国武将・小早川隆景を演じた大河ドラマ「軍師官兵衛」を評価し、鶴見を指名してきた。
「選んでくれた喜びと感謝。悪役的な男をカッコ良く描いてくれて。あの役が締まらないと作品がしょぼくなる。責任重大。同世代で立派な俳優が多くいる中、日本代表の覚悟。鶴見で良かった、と言われることを残して帰ろう、という気構えでしたよ」
ガンホとの共演シーンは、緊迫ムードが漂うが、撮影現場は和やかだった。
「実に丁寧な方。最初に会ったとき、僕を見て立ち上がって握手してくれるような。『難しい役どころをよくやってくださった』とも言ってくれて」。それらの言葉にも力をもらい、役のイメージをより鮮明に膨らませていった。
早いもので芸能生活40周年。事務所のプロフィル欄には、約200の出演作が小さな字でびっしり書かれてある。幼少期から観劇に行けばのめり込んで見ていた。その“資質”を見て叔母が応募したのが中1のデビュー作ドラマ「竹の子すくすく」(テレビ朝日系)。2600人から片平なぎさの弟役に選ばれ、人生が変わった。
「よく覚えてます。みんな訓練された子ばかりで俺の来る場じゃないな、と。でも後から、片平さんと並んで一番弟っぽかったのが僕だったと。他の人はイケメンで恋人に見えたそうです」
TBS系ドラマ「3年B組金八先生」で有名になり、薬師丸ひろ子と共演した映画「翔んだカップル」(80年、相米慎二監督)もヒット。ナイーブな青年を演じられる若手の筆頭格として注目を集めた。
「あれは演技でなく、自然の姿をカメラが追って撮ってくれていた。相米さんは僕なんて放し飼いの猿同然だったのでは。芝居の基礎がなく、後でずいぶん苦労しましたよ」
しかし、これらは芸能史に残る名作として語り継がれる。「40年近く前の作品で記憶の共有ができる。この仕事って幸せだと思いますね」
今回、日本を離れて映画に出て、海外作品への思いがより強くなった。「ことごとく落ちてるんだけど、オーディションは受けてるんです」と飾らず明かす。「誰も僕のことを知らず、言葉も通じない中で、自分の演技がどう映り、どう受け入れられ、人の心の奥をどこまで打てるのか。いまそれがすごく知りたいんですよね」。
ロードバイク、マラソンは、趣味の域を超えた本格派。顔つきもどんどんワイルドな印象になってきた。さらに最近は、いかに速く良いスコアでラウンドできるかを競う「スピードゴルフ」にも夢中。「僕は芝居がうまくないし中身のない人間。付加価値をつけるためにちょっと変わったことをしているだけ」と冗談っぽく答えるが、半端でないのめり込み方だ。「街で若い人が僕の顔を見て『ほらほら、あのいつも自転車に乗ってる人だ』と思ってもらえれば十分」とも話した。
つづく
11/5(日) 10:03配信 スポーツ報知
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171104-00000161-sph-ent