「けものフレンズ」監督降板騒動から考える アニメ作品の権利は誰のもの? (弁護士ドットコム) - Yahoo!ニュース
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9/28(木) 11:35配信
人気テレビアニメ「けものフレンズ」(1月〜3月放送)のたつき監督(ヤオヨロズ株式会社)が9月25日、Twitterで「けもフレ」の新規プロジェクトの監督を外れることを公表。国内外で大きな反響を呼び、製作者である「けものフレンズプロジェクトA」は27日、公式サイトで見解を発表する事態にまで発展した。しかし、ファンの間では、たつき監督の続投を求める声が根強く、「たつき監督辞めないで!」というネット署名活動が行われ、28日には目標人数である5万人を突破した。
プロジェクトが発表した見解では、「ヤオヨロズ株式会社には、関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用」があったことが指摘された。そのため、「けもフレ」とコラボしている日清食品やJRAにファンからの問い合わせが寄せられ、28日にはそれぞれの公式サイトで「正式な許諾を得て行なっている」と発表した。
各地に広がっている騒動だが、アニメ製作の舞台裏を知らなければ、何が起きているのかよくわからない。そもそも、アニメ作品はどのように製作されているのか、その権利は誰にあるのか。コンテンツ産業に詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)客員研究員、境真良さんに聞いた。 (弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
●著作権は製作委員会に集約されるのが慣例
テレビアニメは、監督をはじめ、たくさんのスタッフや企業が関わって製作されていますが、通常、誰が作品の著作権を持つのでしょうか?
「テレビアニメ作品は映像になりますので、著作権法でいう『映画の著作物』に当たります。映画もアニメ作品も、映像のために集められた監督やスタッフが製作し、音楽や原作、脚本などは外部から調達される、というイメージを持ってください。そこで、著作権は誰にあるのかという問題ですが、映像については関わった全クリエイティブが著作者と言える(著作権法第16条)かもしれませんが、プロジェクトに参加したことにより、作品が発生した瞬間に権利は『製作者』に集約されると法定されています(著作権法第29条第1項)。そして、『製作者』とは誰なのかと言えば、一つの基準としては、製作資金を出資した人や組織と見なされています」
よくアニメ作品にみられる『○○製作委員会』という形式ですね?
「そうです。元々は、テレビアニメや映画がその起源と言われています。昔は製作会社が小規模で、資金が足りない場合が多かった。そのために、作品が完成した後に利用する予定の複数企業から事前に出資してもらい、まとめて一つの予算にして作品を製作するという慣行ができました。裁判でも、投資組合として認められているものです。
企業が共同で製作者となり、著作権を共有するわけですが、これには想定していなかった利用を提案された時の意思決定が遅くなるなどの批判もあり、今では幹事会社を立てるのが通例になりました。幹事会社が版権や全体の予算、収入の管理をします。負担も大きいですが、その代わり作品利用の主導権を持つことができます」
「けもフレ」の場合は、13社が名を連ねる「けものフレンズプロジェクトA」がそれに相当しているわけですが、今回の騒動は、たつき監督がTwitterで25日、「突然ですが、けものフレンズのアニメから外れる事になりました。ざっくりカドカワさん方面よりのお達しみたいです。すみません、僕もとても残念です」と公表したことから始まっています。名指しされた「株式会社KADOKAWA」はプロジェクトの一員に過ぎません。これはどういうことなのでしょうか?
「詳しくは、契約を見ないと明らかにはなりませんが、プロジェクトの主体的な役割をKADOKAWAが担っていた可能性もあるとは思います。ここからは推定ですが、KADOKAWAはメディアミックスの展開を積極的に行って来た会社ですし、アニメの制作を任せていたヤオヨロズのやり方をかなり黙認してきたのではないでしょうか。こういう場合、作品がヒットしてムーブメントが大きくなると、ビジネスとしてきちんと管理していく必要に迫られることは、一般論としてよくあります。今回もそうした意味で、プロジェクト運営を引き締めたい製作委員会側と、実際に制作からプロモーションを担ってきたと自負するヤオヨロズの間で、作品のコントローラビリティをめぐり、行き違いがあったのかもしれませんね」