【ハンガリー・ブダペスト3日(日本時間4日)発】柔道の世界選手権最終日、2020年東京五輪で新種目として採用される男女混合団体(男女3階級ずつ6人制)が行われ、日本が決勝でブラジルに6―0で完勝し、“初代王者”になった。これで個人戦と合わせて今大会の日本の金メダルは8個に。3年後の大舞台に向けてニッポン柔道の視界は広がったのか。本紙柔道解説の暴走王・小川直也(49)が最終ジャッジだ。
<小川直也 暴走レッドゾーン解説>オイッス! 団体戦での日本は強かったね〜。まあ、勝因はズバリ「慣れ」だな。
日本の柔道では子供のころから団体戦に出る機会が多いし、中軽量級の選手も試合のレベルは別にして経験は豊富。でも、海外の選手に団体戦に出るチャンスはそうないし、柔道は個人戦と捉えているから。これに勝って世界ランキングが上がるわけではないので、モチベーション的にも上がらないんだろうね。
それに日本は団体戦の“言いだしっぺ”なんで、負けるわけにはいかないからな。まあ、選手としても五輪でメダルを取るチャンスが一つ増えたんだから、いいこと。もちろん他国は、今回は様子見…という面もあったと思うので、これから団体戦にも本腰を入れて変わってくるはず。フランス、ロシアの2国は必ず(強化を)やってくるだろうから、東京五輪では日本も今回のようには、まず勝てない。気を抜かずに行ってもらいたいね。
それで、昨年のリオ五輪後、初めての世界選手権は、団体戦を含めて金メダル8個。銀4、銅1でメダル全体も13個と上々の数字だ。リオでメダルを量産したいい流れに乗っているね。海外勢のレベルもランキング上位者が出ているので、五輪と変わらないくらいだったから、東京五輪に向けては良かったんじゃないのかな。
ただ…オレ的には、どうしても男子100キロ超級のことが気がかり。この階級で勝った選手が「世界で一番強い」と言われる柔道の頂上決戦なのに、初戦敗退の原沢(久喜)くん、3回戦敗退の王子谷(剛志)くんは、ちょっと厳しい結果だよね。
2人とも気持ちの部分で乗っていなかった感じ。良く言えば空回り、悪く言えば「ふがいない」のひと言だよ。彼ら2人が実績のない若手で大舞台に初挑戦なら分かるけれど、リオの銀メダリストと全日本(選手権)のチャンピオンだからね。
それに今大会で8連覇したフランスの(テディ)リネールはリオから1年間の休み明け。1年休んで、いきなり世界選手権を復帰戦に選ぶところも驚きだけど、それで優勝しちゃうんだから。これから、さらに上げていって3年後に金メダル。リネールは、そう計算して一試合一試合を戦っている。こんな“化け物”に勝つのは本当に大変だよ。
しかも、他の国も何とかリネールに勝とうと研究をしていて、階級全体でさらにレベルアップしている。日本の2人はリネール対策を綿密にやってきたようだけど、リネール以外も強くなっているから、これからは、さらに厳しい戦いになるよ。
じゃあ日本は、どうすればいいか。まだ3年あるんだから、もっと若手が出てきて上の2人を脅かさないと。リネールどうこうの前に、国内で切磋琢磨して日本の重量級全体でレベルを上げないと、世界で勝てない。厳しいことを言うけれど、これが日本の「世界最強」の現実だよ。
(1987、89、91年世界選手権優勝)
9/5(火) 11:00配信 東京スポーツ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170905-00000005-tospoweb-spo
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