6人、3人、4人―。この数字は、過去3年間(14〜16年)のJ1のシーズン途中で解任(辞任を含む)された監督の人数である。
今年はここまですでに6人。終盤にしれつな残留争いが待っていることを考えると、もう少し人数が増えるかもしれない。
昨年、私はプロ野球担当からサッカー担当に異動してきた。プロ野球は年間144試合もあり、負けても翌日には取り返すチャンスが
やってくる(今年は大型連敗が多いが…)。何より降格制度がないから、球団も最低でも2年、3年のスパンで見てくれる。
だがサッカーはそうはいかない。担当チームのF東京では昨年、城福浩前監督(56)が解任の憂き目にあった。試合数が少ないサッ
カーでは1勝、1敗の重みが違う。リーグ戦は1週間に1試合が基本で、連敗すれば、2週間もの間、重苦しい中で練習をこなさないとい
けない。クラブが解任を決断したときの年間順位は13位。成績が降下していくにつれ表情が厳しくなっていく様は、降格という魔物がつ
きまとうサッカー監督のプレッシャーの厳しさを痛感した。
今年も新潟、大宮、広島と降格危機にあるクラブが苦渋の決断を下したわけだが、いつもと違うのはまだ上位を狙える強豪が、監督
交代に踏み切った点だ。鹿島は7位、浦和は8位の時点で実績ある指揮官を交代した。もちろん、各クラブの事情があるため一概には
言えないが、英動画配信大手「パフォーム・グループ」と10年総額で約2100億円の巨額放映権料契約を結んだ影響が背景にはある。
今年からJ1クラブには均等配分金が増額され、一律3億5000万円が入る。加えて1位には賞金として3億円、さらに理念強化配分
金15億5000万円が支給(3年にわたって分割支給)され、総額最大22億円が手に入る。昨年の4億6000万円から5倍近い額となる。
特に新設された理念強化配分金の総額27億8000万円は、1位から4位までしか支給されない。例えば、1位と5位以下では18億500
0万円もの差ができる。そのため、各クラブは今まで以上に上位に入ろうと必死なのだ。
この“格差リーグ”に賛否両論あるだろうが、個人的には日本のスポーツ界の価値観を変える可能性を秘めていると思っている。今ま
で日本のスポーツは、体育の延長線上で発展してきた。特に野球に代表されるように、部活動で育った選手が甲子園に出場し、そのま
まプロに進んで活躍する。その中で重んじられるのは、学校教育で育んだ上下関係であり、義理、人情である。フリーエージェント権だ
って、長年チームに貢献したからこそ手にできる立派な権利にもかかわらず、行使すれば裏切り者扱いされ、移籍会見で涙する選手も
いる。でも、これが日本の中ではスタンダードなことだし、日本人の美徳であるとも思う。
一方、世界を相手にするサッカーでは、日本の価値観だけでは太刀打ちできないとも思う。移籍が活発な欧州や南米での評価基準は
、明確に「カネ」である。今夏、ブラジル代表FWネイマールを獲得したパリSG(フランス)が、バルセロナ(スペイン)に支払った違約金は
約2億2000万ユーロ(約290億)とも言われているが、同選手がこの額に見合うと評価されたということでもある。いくら増額したと言っ
ても、財政力では遠く及ばないが、Jリーグもこれから世界と同じように「カネ」が、絶対的な価値を持つようになっていくと思う。
少しさみしい気もしないではないが、今年の監督交代劇の異変は、世界基準に近づくための1歩と言えるかもしれない。
報知:
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170824-00000151-sph-socc
今年はここまですでに6人。終盤にしれつな残留争いが待っていることを考えると、もう少し人数が増えるかもしれない。
昨年、私はプロ野球担当からサッカー担当に異動してきた。プロ野球は年間144試合もあり、負けても翌日には取り返すチャンスが
やってくる(今年は大型連敗が多いが…)。何より降格制度がないから、球団も最低でも2年、3年のスパンで見てくれる。
だがサッカーはそうはいかない。担当チームのF東京では昨年、城福浩前監督(56)が解任の憂き目にあった。試合数が少ないサッ
カーでは1勝、1敗の重みが違う。リーグ戦は1週間に1試合が基本で、連敗すれば、2週間もの間、重苦しい中で練習をこなさないとい
けない。クラブが解任を決断したときの年間順位は13位。成績が降下していくにつれ表情が厳しくなっていく様は、降格という魔物がつ
きまとうサッカー監督のプレッシャーの厳しさを痛感した。
今年も新潟、大宮、広島と降格危機にあるクラブが苦渋の決断を下したわけだが、いつもと違うのはまだ上位を狙える強豪が、監督
交代に踏み切った点だ。鹿島は7位、浦和は8位の時点で実績ある指揮官を交代した。もちろん、各クラブの事情があるため一概には
言えないが、英動画配信大手「パフォーム・グループ」と10年総額で約2100億円の巨額放映権料契約を結んだ影響が背景にはある。
今年からJ1クラブには均等配分金が増額され、一律3億5000万円が入る。加えて1位には賞金として3億円、さらに理念強化配分
金15億5000万円が支給(3年にわたって分割支給)され、総額最大22億円が手に入る。昨年の4億6000万円から5倍近い額となる。
特に新設された理念強化配分金の総額27億8000万円は、1位から4位までしか支給されない。例えば、1位と5位以下では18億500
0万円もの差ができる。そのため、各クラブは今まで以上に上位に入ろうと必死なのだ。
この“格差リーグ”に賛否両論あるだろうが、個人的には日本のスポーツ界の価値観を変える可能性を秘めていると思っている。今ま
で日本のスポーツは、体育の延長線上で発展してきた。特に野球に代表されるように、部活動で育った選手が甲子園に出場し、そのま
まプロに進んで活躍する。その中で重んじられるのは、学校教育で育んだ上下関係であり、義理、人情である。フリーエージェント権だ
って、長年チームに貢献したからこそ手にできる立派な権利にもかかわらず、行使すれば裏切り者扱いされ、移籍会見で涙する選手も
いる。でも、これが日本の中ではスタンダードなことだし、日本人の美徳であるとも思う。
一方、世界を相手にするサッカーでは、日本の価値観だけでは太刀打ちできないとも思う。移籍が活発な欧州や南米での評価基準は
、明確に「カネ」である。今夏、ブラジル代表FWネイマールを獲得したパリSG(フランス)が、バルセロナ(スペイン)に支払った違約金は
約2億2000万ユーロ(約290億)とも言われているが、同選手がこの額に見合うと評価されたということでもある。いくら増額したと言っ
ても、財政力では遠く及ばないが、Jリーグもこれから世界と同じように「カネ」が、絶対的な価値を持つようになっていくと思う。
少しさみしい気もしないではないが、今年の監督交代劇の異変は、世界基準に近づくための1歩と言えるかもしれない。
報知:
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170824-00000151-sph-socc