クマによる農作物の食害が例年にない頻度で発生し、「クマ出没非常事態宣言」が出された青森県むつ市で、畑を守るためのユニークな実験が行われている。
市が着目したのは、日本では既に絶滅した「オオカミ」のフン。「オオカミの気配を感じれば、クマも警戒して近づかないはず」とのもくろみだが、果たして効果のほどは……。
10日午前、同市城ヶ沢地区のトウモロコシ畑で、市職員が薄茶色の液体が入ったペットボトル約50本を9メートル間隔で柵にくくりつけたり、地面に埋めたりしていた。液体は、人が飼育しやすいようオオカミと犬を掛け合わせた「ハイブリッドウルフ」のフンを希釈したものだ。オオカミのフンは入手が困難だが、ハイブリッドウルフは国内で飼育されており、入手が可能という。
「生態系の頂点に立つオオカミのにおいは野生動物を本能的に怖がらせる。クマは優れた嗅覚を持ち、効果が期待できる」
製造元の「縄文環境開発」(平川市八幡崎)の木村将人社長(73)はこう解説し、トウモロコシ畑の所有者(67)は「クマが寄ってこなくなれば、収穫も安心して行える」と期待する。
市は今回、フンを希釈した液体を入れたペットボトルを約80本用意し、同地区のほか、クマの出没が相次いでいる関根地区の民家に設置。クマと同様に農作物を食い荒らすサルにも効果があるかを確かめるため、サルの食害に悩まされている大畑町二枚橋地区の畑も実験対象とした。市職員が週2回程度のペースで液体をつぎ足し、1か月ほどかけて効果の有無を検証する。
市によると、今年のクマの食害は15日現在で74件に上り、昨年1年間の44件を大幅に上回っている。「クマ撃退」の効果が確認され次第、市はフンの活用を広めていく考えで、高橋聖・市経済部長は「利用できるものは何でも使い、住民が丹精込めて育てた農作物を食害から守りたい」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160817-OYT1T50063.html?from=ytop_ylist
「オオカミのフン」のにおいのする液体をペットボトルに入れ、設置の準備をする市職員(10日、青森県むつ市城ヶ沢で)