受験シーズン目前も例年とは違う冬が来る
2020年も残すところあと1か月です。受験生にとって、2020年は学習計画を狂わされっぱなしの一年と言えるでしょう。終息が見えない新型コロナウイルスの感染拡大に加え、
・センター試験に代わる「大学入学共通テスト」が始まる
・私立大学の定員厳格化で安全志向・地元志向に拍車がかかる
というふたつの問題に直面しているため、これらを考慮しながら志望校を選ぶ必要があります。さらに近年、各大学はAO入試(小論文や面接によって学生の合否を決める選抜制度)や推薦入試の枠を増やしているため、一般入試による合格は年々難しくなっています。そこに定員厳格化が加わり、事態はさらに混迷を極めています。そして、その大きな波は、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)や日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)を飛び越え、「大東亜帝国」にも押し寄せています。なお大東亜帝国とは、
・大東文化大学(板橋区高島平)
・東海大学(渋谷区富ヶ谷)
・亜細亜大学(武蔵野市境)
・帝京大学(板橋区加賀)
・国士舘大学(世田谷区世田谷)
を表した大学群です。 大東亜帝国は、東海大学や帝京大学のような医学部を有する総合大学から文系大学の亜細亜大学まで、大学の規模も学部構成も統一性がありません。
あえて共通点としてあげられるのが、箱根駅伝出場です。数ある大学スポーツの中でもトップクラスの注目度を誇る箱根駅伝は、大学の知名度をアップさせるには格好のイベントです。大東亜帝国は箱根駅伝などの活躍もあり、日東駒専に次ぐ大学群として日本全国から認識されています。
2016年度から始まった定員厳格化の影響はまず早稲田大学(新宿区戸塚)や慶応義塾大学(港区三田)、そして上智大学(千代田区紀尾井町)や東京理科大(新宿区神楽坂)に波及し、次第にMARCHも巻き込まれていきました。このように受験生の安全志向で、まず難易度の高い大学から順に避けられる傾向が高まりました。この流れの受け皿となったのが、日東駒専です。
反則タックル問題で志願者が減少した日本大学(千代田区九段南)を除き、2018年度から2019年度にかけての一般入試・センター利用試験の志願者は増加しました。しかし、日東駒専でも安全志向にひた走る受験生を受け止めることはできなくなりました。学力試験の志願者が増加したことで狭き門となり、2020年度入学者試験では駒澤大学(世田谷区駒沢)で約2万人、東洋大学(文京区白山)で約1万9000人も志願者が減ったのです。そんななか、大東亜帝国ではどのような動きがあったのでしょうか。
大東亜帝国は、MARCHや日東駒専のように「大学群の中で似た傾向が起きている」というわけではありません。大東文化大学は2018年度入学者試験で前年度より約5000人増加しましたが、2019年度と2020年度は一転して減少。この傾向は明治大学(千代田区神田駿河台)に似ています。
一方、東海大学と亜細亜大学は日東駒専と同じように学力試験の志願者が増加したものの、2020年度入学者試験では安全志向の高まりもあり、志願者が減少しました。 特に、19学部(2020年度)を誇る総合大学の東海大学は2017年度の学力試験の志願者が4万9107人でしたが、2019年度は6万360人と1万人以上増加。ところが2020年度は5万6285人と伸び悩みました。一気に人気を集めると「合格するのが難しくなる」と感じた受験生が嫌い、急増した反動で志願者が減少するという、東洋大学と同じパターンです。しかしながら激減には至っておらず、受験生の安全志向のよりどころとなっています。
そして国士舘大学は少々変わった動きを見せています。ここ数年の志願者数は2018年度入学者試験の2万4607人(学力試験)をピークに、2019年度の2万1335人そして2020年度の2万1670人で推移しており、定員厳格化の直撃を何とか避けている形です。
結局、大東亜帝国においてここ数年の激動のなかで志願者増が続いているのは帝京大学のみです。医学部や法学部を含む10学部を有する帝京大学の学力試験の志願者は、2017年度入学者試験の2万9739人から3万4990人、3万8068人そして2020年度入学者試験では3万8239人と右肩上りを続けています。この流れが今後も続くのか、それとも志願者数の高止まりを嫌ってさらに安全志向で他大学が受け皿になるのか注視したいところです。これらのことから、「大東亜帝国は安全」という時代は過ぎ、むしろ難化傾向にある大学群となっていることがわかります。
(長文の為以下リンク先で)
アーバンライフメトロ 2020.11.29
https://urbanlife.tokyo/post/47430/