統一まで1000年
<便利であれば個人情報もどんどんオープンにする国は、グルメ情報のように性犯罪者について調べることも可能だ>
今回の新型コロナウイルスのパンデミックでは、韓国の感染拡大とそれに対する素早い対応が日本でも広く報道されているが、特に大邱市の大規模感染が出始めた当初、感染者の足取り公開はまるで追跡調査と思えるほど詳細で、韓国の対策の徹底ぶりにそこまで公にするのかと驚かれた人もいただろう。
しかし、こういった情報の公開というのは韓国では当たり前。感染症対策だけではなく、会社用の名刺に個人用携帯番号を載せていたり、路上駐車した車に携帯番号を書いておき、車の移動をしたい時はその番号に電話を掛けるようにするなど、日本とは個人情報に対する感覚が違っているように感じる。
「新亭洞 2人組 強盗強姦犯」で検索
今年の1月11日、韓国のドキュメンタリー番組『??? ????(それが知りたい)』では15年前の未解決事件に追った内容を特集したが、放送終了後、番組内で紹介したあるサイトにアクセスが集中してしまい、サーバー・ダウンしたという。そのサイトが「性犯罪者アルリムE」だ。
この日の放送では、2005年から2006年にかけてソウル市新亭洞で発生した連続殺人事件と誘拐未遂事件が取り上げられた。2015年に一度放送され、今回はその続編にあたる。前回の放送では、誘拐被害者の女性が「犯人の家には"猟奇ウサギマシマロ"(韓国発のウサギのキャラクター)のステッカーが貼られた靴箱があった」と証言したことから、この事件は通称「猟奇ウサギ殺人事件」として知られるようになった。
それから5年が経ち、今回の放送では、犯人を見たという証言者たちの声を集め、モンタージュを作成しテレビで公開。さらに番組後半では、釜山のある警察官が登場し、以前ソウル新亭洞で発生した2人組の強盗強姦犯が猟奇ウサギ殺人事件の犯人と疑わしいとして捜査を進めていく。
放送終了後、この強姦犯が誰なのか気になった視聴者たちは、インターネットの性犯罪者検索サイト「アルリムE」に殺到。アクセスが集中しすぎてサーバーがダウンしてしまったのだ。
罰金刑でも10年間掲載
この「アルリムE」とは、政府機関である法務部と女性家族部が共同で2010年より開始したサービスであり、誰でも簡単に性犯罪者を検索できるようになっている。サイト内では「性犯罪者を探す」「地図から探す」「条件から探す」など、まるでネットからレストランを探すように簡単に性犯罪者の個人情報が検索可能だ。
ここで公開されているのは、犯人の犯罪歴のみならず、姓名/年齢/住所及び実際の居住住所/身体的情報(身長体重)/顔写真/性犯罪情報/性犯罪前科一覧などが掲載されている。
さらに、掲載期間も決まっており、宣告刑を基準に10年超過の懲役・禁固刑の犯人は30年間。3年超過10年以下の懲役・禁固刑の犯人は20年間。3年以下の懲役・禁固刑は15年間、罰金刑では10年間記載される。罰金刑だけでも10年間は性犯罪歴を含む個人情報が公開されてしまうことを考えるとかなり厳しい処罰といえる。
子供がいる家庭には郵送される
また、オンラインだけではなく、犯罪者が住んでいる地域の学校や児童がいる世帯に郵便で同様の情報が送られる徹底ぶりだ。これらは韓国の「性暴行犯罪の処罰などに関する特例法」第42?50条で定められた法律で決められている。
他にも、期間中60日以上国外に旅行する場合は申請しなくてはならず、毎年警察署にて写真の更新も義務付けられている。さらに、「性犯罪就職制限」と称して、犯罪者が再度同じような過ちを犯さないようにと、教育関係をはじめとした職種への就業制限も規定されている。このように韓国では性犯罪者に対し容赦ない姿勢で臨んでいることがうかがえる。
今回、『それが知りたい』を見た視聴者が「アルリムE」で容疑者を検索したことがニュースで報じられた結果、さらに多くの人たちが自分の住んでいる場所や学校の近くなどに性犯罪者がいないか検索したため、番組が放送された今年の1月から「アルリムE」ではアクセス数が急速に伸びているという。
2020年3月23日(月)19時30分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92837.php
<便利であれば個人情報もどんどんオープンにする国は、グルメ情報のように性犯罪者について調べることも可能だ>
今回の新型コロナウイルスのパンデミックでは、韓国の感染拡大とそれに対する素早い対応が日本でも広く報道されているが、特に大邱市の大規模感染が出始めた当初、感染者の足取り公開はまるで追跡調査と思えるほど詳細で、韓国の対策の徹底ぶりにそこまで公にするのかと驚かれた人もいただろう。
しかし、こういった情報の公開というのは韓国では当たり前。感染症対策だけではなく、会社用の名刺に個人用携帯番号を載せていたり、路上駐車した車に携帯番号を書いておき、車の移動をしたい時はその番号に電話を掛けるようにするなど、日本とは個人情報に対する感覚が違っているように感じる。
「新亭洞 2人組 強盗強姦犯」で検索
今年の1月11日、韓国のドキュメンタリー番組『??? ????(それが知りたい)』では15年前の未解決事件に追った内容を特集したが、放送終了後、番組内で紹介したあるサイトにアクセスが集中してしまい、サーバー・ダウンしたという。そのサイトが「性犯罪者アルリムE」だ。
この日の放送では、2005年から2006年にかけてソウル市新亭洞で発生した連続殺人事件と誘拐未遂事件が取り上げられた。2015年に一度放送され、今回はその続編にあたる。前回の放送では、誘拐被害者の女性が「犯人の家には"猟奇ウサギマシマロ"(韓国発のウサギのキャラクター)のステッカーが貼られた靴箱があった」と証言したことから、この事件は通称「猟奇ウサギ殺人事件」として知られるようになった。
それから5年が経ち、今回の放送では、犯人を見たという証言者たちの声を集め、モンタージュを作成しテレビで公開。さらに番組後半では、釜山のある警察官が登場し、以前ソウル新亭洞で発生した2人組の強盗強姦犯が猟奇ウサギ殺人事件の犯人と疑わしいとして捜査を進めていく。
放送終了後、この強姦犯が誰なのか気になった視聴者たちは、インターネットの性犯罪者検索サイト「アルリムE」に殺到。アクセスが集中しすぎてサーバーがダウンしてしまったのだ。
罰金刑でも10年間掲載
この「アルリムE」とは、政府機関である法務部と女性家族部が共同で2010年より開始したサービスであり、誰でも簡単に性犯罪者を検索できるようになっている。サイト内では「性犯罪者を探す」「地図から探す」「条件から探す」など、まるでネットからレストランを探すように簡単に性犯罪者の個人情報が検索可能だ。
ここで公開されているのは、犯人の犯罪歴のみならず、姓名/年齢/住所及び実際の居住住所/身体的情報(身長体重)/顔写真/性犯罪情報/性犯罪前科一覧などが掲載されている。
さらに、掲載期間も決まっており、宣告刑を基準に10年超過の懲役・禁固刑の犯人は30年間。3年超過10年以下の懲役・禁固刑の犯人は20年間。3年以下の懲役・禁固刑は15年間、罰金刑では10年間記載される。罰金刑だけでも10年間は性犯罪歴を含む個人情報が公開されてしまうことを考えるとかなり厳しい処罰といえる。
子供がいる家庭には郵送される
また、オンラインだけではなく、犯罪者が住んでいる地域の学校や児童がいる世帯に郵便で同様の情報が送られる徹底ぶりだ。これらは韓国の「性暴行犯罪の処罰などに関する特例法」第42?50条で定められた法律で決められている。
他にも、期間中60日以上国外に旅行する場合は申請しなくてはならず、毎年警察署にて写真の更新も義務付けられている。さらに、「性犯罪就職制限」と称して、犯罪者が再度同じような過ちを犯さないようにと、教育関係をはじめとした職種への就業制限も規定されている。このように韓国では性犯罪者に対し容赦ない姿勢で臨んでいることがうかがえる。
今回、『それが知りたい』を見た視聴者が「アルリムE」で容疑者を検索したことがニュースで報じられた結果、さらに多くの人たちが自分の住んでいる場所や学校の近くなどに性犯罪者がいないか検索したため、番組が放送された今年の1月から「アルリムE」ではアクセス数が急速に伸びているという。
2020年3月23日(月)19時30分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92837.php