ディスカウントストアのドン・キホーテなどを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は昨年12月、福井市にあるスーパーを改装し「MEGAドン・キホーテUNY福井店」をオープンさせた。昨年2月にアピタ、ピアゴを運営する地方スーパーのユニーを傘下に収め、再建へ業態転換を進める動きの一環だ。主力のドン・キホーテは悪天候や韓国人客急減などの影響を感じさせない堅調ぶりをみせており、その手腕で地方スーパーを救えるかどうか注目を集めている。
■長所かけ合わせ
昨年12月3日、福井市に「MEGAドン・キホーテUNY福井店」が開店した。入り口近くは菓子店や衣料店などスーパーだった時代のテナントが入り、白を基調とした店の雰囲気は普通のスーパーの印象が強いが、奥に進むにつれドンキらしさが現れた。
野菜や鮮魚など生鮮売り場は「驚安」の文字で、バナメイエビが1グラム1円などインパクトのある値札が踊る。日用品は棚目いっぱいに詰め、家電も箱のまま積み上げる。陳列にコストをかけず迫力を持って見せる、ドンキ独特の「圧縮陳列」やポップも健在。店の担当者は「宝探しをするようなドンキの店づくりを継承した」と話していた。
スーパーのアピタ、ピアゴが業態転換した姿が「ドン・キホーテUNY」だ。両ブランドを掲げ、ドンキとスーパーの長所をかけ合わせるねらい。平成30年に6店から始め、昨年2月のユニー完全子会社化で加速。令和元年末までに29店、令和4年中までに計約100店で計画している。
■総合スーパーの凋落
競争が厳しい小売業界で総合スーパーの凋落(ちょうらく)は著しい。
食品、衣料、住居関連品、家電と商品を多様にそろえたが、専門性が薄い品ぞろえがあだになり、衣料はファストファッション、家電は家電量販店、日用品はドラッグストアと別業態に客を奪われてきたからだ。
セブン&アイホールディングス、イオンの小売り最大手の2社ですら、総合スーパーの業績は振るわない。東海地方を中心にスーパーのアピタとピアゴを展開していたユニーも、同じ苦境に追い込まれていた。
ユニーの持ち株会社だったユニーグループ・ホールディングスは平成28年にファミリーマートと経営統合したが、結局、ユニーの再建を託したのは、ファミマと提携関係にあり、30期連続の増収増益と破竹の勢いをみせるPPIHだった。
■業態転換、売り上げ2倍
業態転換した店舗は好調な出足をみせ、売り上げは転換前の2倍に膨らんでいる。広報担当者は「業態転換で従来より広い商圏から若いファミリーを新たに取り込めた」と分析する。
主力のドン・キホーテも堅調だ。令和元年7〜9月期は冷夏や台風など悪天候が続いたが、消費増税前の駆け込み需要を取り込み、売り上げは既存店ベースで2・9%増となった。
インバウンドが大きく売り上げを占める東京や大阪など都市部では、日韓関係の悪化で急減した韓国人客の売上高は10月だけで前年同月の約2割に落ち込んだ。だが、東南アジアや米・英・豪州の集客増で減少分を取り戻すなど、逆風をはね返している。
昨年11月上旬の令和元年7〜9月期連結決算発表でも、消費税増税で反動減も懸念される中、高橋光夫専務執行役員CFO(最高財務責任者)は「ショックイベントを事業にとって大きなチャンスにしてきた」と強気の姿勢をみせた。
■シニア層取り込めるか
安さを武器とするPPIH。消費を冷え込ませる出来事が起こると、その安さにひかれて従来と異なる利用客の来店機会が生まれ、そのまま新しい客層として開拓してきた。
もともとの主力客層は若い男性だったが、平成20年のリーマン・ショック後は女性客の利用が広がった。26年の消費税増税ではファミリー層にも訴求し、そのなかで加工食品や日用品など生活必需品を充実させ、業績を押し上げてきた。
ドンキが不得手としてきたのはシニア層。この層が長年利用し買い物の習慣があるのが総合スーパーだ。ユニー再建の成否は、PPIHが全世代から集客できる業態になれるかの試金石にもなりそうだ。
1/1(水) 15:30配信
産経新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200101-00000504-san-bus_all
■長所かけ合わせ
昨年12月3日、福井市に「MEGAドン・キホーテUNY福井店」が開店した。入り口近くは菓子店や衣料店などスーパーだった時代のテナントが入り、白を基調とした店の雰囲気は普通のスーパーの印象が強いが、奥に進むにつれドンキらしさが現れた。
野菜や鮮魚など生鮮売り場は「驚安」の文字で、バナメイエビが1グラム1円などインパクトのある値札が踊る。日用品は棚目いっぱいに詰め、家電も箱のまま積み上げる。陳列にコストをかけず迫力を持って見せる、ドンキ独特の「圧縮陳列」やポップも健在。店の担当者は「宝探しをするようなドンキの店づくりを継承した」と話していた。
スーパーのアピタ、ピアゴが業態転換した姿が「ドン・キホーテUNY」だ。両ブランドを掲げ、ドンキとスーパーの長所をかけ合わせるねらい。平成30年に6店から始め、昨年2月のユニー完全子会社化で加速。令和元年末までに29店、令和4年中までに計約100店で計画している。
■総合スーパーの凋落
競争が厳しい小売業界で総合スーパーの凋落(ちょうらく)は著しい。
食品、衣料、住居関連品、家電と商品を多様にそろえたが、専門性が薄い品ぞろえがあだになり、衣料はファストファッション、家電は家電量販店、日用品はドラッグストアと別業態に客を奪われてきたからだ。
セブン&アイホールディングス、イオンの小売り最大手の2社ですら、総合スーパーの業績は振るわない。東海地方を中心にスーパーのアピタとピアゴを展開していたユニーも、同じ苦境に追い込まれていた。
ユニーの持ち株会社だったユニーグループ・ホールディングスは平成28年にファミリーマートと経営統合したが、結局、ユニーの再建を託したのは、ファミマと提携関係にあり、30期連続の増収増益と破竹の勢いをみせるPPIHだった。
■業態転換、売り上げ2倍
業態転換した店舗は好調な出足をみせ、売り上げは転換前の2倍に膨らんでいる。広報担当者は「業態転換で従来より広い商圏から若いファミリーを新たに取り込めた」と分析する。
主力のドン・キホーテも堅調だ。令和元年7〜9月期は冷夏や台風など悪天候が続いたが、消費増税前の駆け込み需要を取り込み、売り上げは既存店ベースで2・9%増となった。
インバウンドが大きく売り上げを占める東京や大阪など都市部では、日韓関係の悪化で急減した韓国人客の売上高は10月だけで前年同月の約2割に落ち込んだ。だが、東南アジアや米・英・豪州の集客増で減少分を取り戻すなど、逆風をはね返している。
昨年11月上旬の令和元年7〜9月期連結決算発表でも、消費税増税で反動減も懸念される中、高橋光夫専務執行役員CFO(最高財務責任者)は「ショックイベントを事業にとって大きなチャンスにしてきた」と強気の姿勢をみせた。
■シニア層取り込めるか
安さを武器とするPPIH。消費を冷え込ませる出来事が起こると、その安さにひかれて従来と異なる利用客の来店機会が生まれ、そのまま新しい客層として開拓してきた。
もともとの主力客層は若い男性だったが、平成20年のリーマン・ショック後は女性客の利用が広がった。26年の消費税増税ではファミリー層にも訴求し、そのなかで加工食品や日用品など生活必需品を充実させ、業績を押し上げてきた。
ドンキが不得手としてきたのはシニア層。この層が長年利用し買い物の習慣があるのが総合スーパーだ。ユニー再建の成否は、PPIHが全世代から集客できる業態になれるかの試金石にもなりそうだ。
1/1(水) 15:30配信
産経新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200101-00000504-san-bus_all