「『カレーって、そもそもスパイスやん』っていうツッコミから始まる。そら、そうやでと。雑多な文化を受け入れるところが大阪らしい」。カルチャー誌を手掛ける同市中央区の出版社「インセクツ」の代表で、関西のスパイスカレー文化に詳しい松村貴樹さん(42)が分析する。
近年広がりを見せ、店舗数は関西で100とも200とも言われている。東京郊外でも出店が相次ぐスパイスカレーとも異なる独自の文化だという。
■源流さまざま
同社が13日に発行したのが「関西のスパイスカレーのつくりかた」(ケイ・オプティコム社著)。ケイ社が運営するウェブサイト「eoグルメ」と共同運営してきた「スパイスカレー教室」の中身を1冊にまとめた。
乳製品や油を多く使った濃厚な味わいが特長の北インド系や、ココナツミルクをベースにした魚介類豊富なスリランカ系のほか、ネパール、タイ、関西独自系と源流はさまざま。
本著に収録したレシピは「旧ヤム邸」(谷町6丁目)や「虹の仏」(四天王寺前)など個性的な名店ぞろいで、32店が考案したオリジナルメニューのほか、各店の独自性にも触れている。
■雑多な文化
起源とされるのが、1992年から営業する大阪・北浜の「カシミール」。常に行列ができる名店だが、店主の後藤明人さんは異色の経歴の持ち主で、音楽ユニット「エゴラッピン」の初代ベーシストでもある。
後藤さんを慕ってカレー店をオープンさせたのが、道修町にある「コロンビアエイト」の荻野善弘さん。カシミールをもじり自身は「オギミール」を名乗る。
書店の一角で店舗を営む「谷口カレー」(北浜)は、趣味が高じて出店とバンド出演を組み合わせた「カレー大サーカス」を不定期で開く。ほかに店の一角で落語会を開いたり、Tシャツを製作したりする店もあり、「カレー店」の範疇(はんちゅう)には収まりきらない。
松村さんは「個人が手の届く範囲で営業しているイメージ。関西のスパイスカレーの懐の深さを感じてほしい」とPRしている。大手書店などで販売。価格は1600円(税抜き)。
2018年12月19日
大阪日日新聞
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/181219/20181219037.html
