研究グループは今回、飲食店を想定した感染リスクと対策についても計算を行いました。
4人がけのテーブル2台とカウンターに合わせて16人がいる飲食店で、このうちの1人が従来型のウイルスに感染していると想定し、
マスクなしで1時間滞在した場合、飲食店全体での平均した感染リスクと、それぞれの場所ごとの感染確率をシミュレーションしました。
まず、換気装置だけを動かした場合、店全体を平均した感染確率は2.48%、最もリスクが高かったのは、
カウンター席のいちばん端に座っている人が感染している場合、隣の人が感染する確率で、78.8%となりました。
この状態から客席のエアコンとちゅう房のダクトを作動させると、店全体を平均した感染確率は2.07%とやや低下し、
最もリスクが高かったのはテーブル席に座っている人が感染していた場合、その隣の人が感染する確率で65.5%でした。
飛まつの広がりかたを可視化したCGからは、エアコンやダクトをつけると全体的に空気の流れができ、
飛まつが1か所にとどまらず、拡散していくことがわかります。
研究グループは飛まつが広い範囲に広がることで薄まり、リスクが分散する一方、
風下の席にいる人は局所的にリスクが高まることもあると分析しています。
さらに、この状態から飲食店での対策を想定し、テーブル席の真ん中とカウンター席にパーティションを設置した条件で計算すると、
店全体を平均した感染確率は0.53%とさらに低下し、換気装置だけの状態と比べおよそ80%リスクを削減できました。
また、これとは別にエアコンとダクトをつけた状態で、隣どうしの距離を広めにとって座った時、
店全体を平均した感染確率は0.64%で、換気装置だけと比べおよそ75%、リスクを削減できています。
神戸大学教授で理化学研究所の坪倉誠チームリーダーは「隣どうし距離をあけることは、対策としては非常に効果があるが、
距離がとれない時はパーティションをつけることで、距離をとることとほぼ同等の効果があるということが分かった。
部屋全体の感染リスクを下げ、局所的にリスクの高いところを作らないことが対策として非常に重要になる」と話しています。
研究グループは焼き肉店のテーブルなどに設置されている、卓上排煙ダクトの効果もシミュレーションしました。
想定では、4人グループのうちの1人が感染していて、テーブルの真ん中に排煙ダクトが設置されている状況で1時間滞在し、
隣、向かい、斜め向かいの、それぞれの方向に10分ずつ、大声で話したと仮定し、シミュレーションしました。
排煙ダクトを作動させていない時、感染する確率は隣の席で43.8%、向かいの席で15.1%、斜め向かいの席で12.1%でしたが、
排煙ダクトを作動させると隣の席で24.8%、向かいの席で5.3%、斜め向かいの席で5.3%と、感染リスクは3分の1から半分程度に抑えられる結果となりました。
研究グループは部屋の天井に取り付けたファンが、感染リスクにどのように影響するかについてもシミュレーションしました。
シミュレーションでは縦6.3メートル、横が9.9メートル、天井の高さが3.65メートルの部屋の中で、
感染した人と15分間向かい合ったとき、天井に取り付けたファンで飛まつがどのように広がるかをシミュレーションして、感染のリスクを計算しました。
その結果、ファンを作動させると飛まつが急速に拡散して薄まり、その効果でファンが作動していない時と比べると、感染のリスクは低くなりました。
特に相手との距離が1.5メートルより近い場合、感染確率は大幅に低くなっていました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210623/k10013100571000.html