安倍首相の「政府をあげて徹底的に実施する」という号令は、一体何だったのか──。政府は昨年4月に行政文書の管理に関するガイドラインを改正したが、改正ガイドラインの施行から1年、この間の安倍首相が省庁の幹部らと面談した際の議事録や説明資料などの記録を官邸に情報公開請求したところ、すべてが「不存在」という回答が返ってきたというのだ。
今回、情報公開請求をおこなった毎日新聞13日付け記事によると、ガイドライン改正から今年1月末までのあいだに首相動静で記録されている安倍首相の面談は約1000件。しかし、官邸の文書を管理する内閣総務官は〈いずれの記録も「存在しない」と回答〉し、「官邸側が受け取った資料はコピーに過ぎず、原本は省庁にある」と説明。
しかも、議事録は作成されているかどうかは不明で、一方、説明資料については、こんなことを明かしたという。
〈保存期間を国立公文書館の審査を経ずいつでも廃棄できる1年未満に設定し、面談後に廃棄している〉
「1年未満でいつでも廃棄できる」ということは、面談翌日でも廃棄できるということになってしまう。改正ガイドラインでは、〈政策立案や事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等の記録については、文書を作成するものとする〉と定められている。ここには当然、官邸も含まれている。しかし、官邸は森友・加計問題であれだけ文書の管理が問題となったというのに、相も変わらず「面談後に破棄」などという無責任極まりない態度をまったく崩していないのだ。
ようするにこれは、府官庁から面談記録が出てきたとしても、安倍首相は「記憶にない」「官邸に記録もない」と突っぱねることができる、ということではないか。
その上、毎日新聞はさらに驚きの事実を伝えている。毎日新聞は12府省の幹部に関わる16件の面談を抜き出して「原本」を保管する府省にも開示請求をおこなったが、すべての府省が議事録について「残していない」「存否すら明かせない」と回答し、説明資料についても6件が「存在しない」という回答だったというのだ。
改正ガイドラインで打ち合わせ記録の作成が義務づけられたのに、「議事録を残していない」「存否すら明かせない」って……。これでは一体、何のために公文書管理のガイドラインを改正したというのか。
じつは、毎日新聞の取材では、複数の省の幹部職員が、そのカラクリについてこう打ち明けている。
「官邸は情報漏えいを警戒して面談に記録要員を入れさせない」
「首相の目の前ではメモは取れない。見つかれば、次の面談から入れてもらえなくなる」
「面談後に記録を作っても、あえて公文書扱いにはしていない」
「幹部は面談後、記憶した首相とのやり取りを部下に口頭で伝えてメモを作らせている」
そもそも面談記録をつくらせない、つくっても公文書にはしない──。いや、この「公文書の危機」は、すでに昨年の段階から不安視されてきた。ガイドライン改正にあわせ、経産省では政治家をはじめ省内外の人物との打ち合わせの記録を「個別の発言まで記録する必要はない」などと指示するなど、“議事録は不要”とする内部文書を作成していたことを、やはり毎日新聞がスクープ。
また、西日本新聞でも、都市圏総局次長の植田祐一氏がこんな話を明かしていた。植田氏の〈旧知のキャリア官僚〉の弁によると、ガイドラインが改正される直前の昨年3月末、上司から公文書管理にかんしてこんな指示がなされたというのだ。
〈「機微に触れるものは記録に残さず、頭の中にメモせよ。報告する際は口頭で」。首相官邸で首相秘書官らと打ち合わせる際は「メモ厳禁。録音不可」の徹底が言い渡されたという。〉(西日本新聞2018年7月13日)
2につづく
LITERA
2019.04.17 12:15
https://lite-ra.com/2019/04/post-4664.html
今回、情報公開請求をおこなった毎日新聞13日付け記事によると、ガイドライン改正から今年1月末までのあいだに首相動静で記録されている安倍首相の面談は約1000件。しかし、官邸の文書を管理する内閣総務官は〈いずれの記録も「存在しない」と回答〉し、「官邸側が受け取った資料はコピーに過ぎず、原本は省庁にある」と説明。
しかも、議事録は作成されているかどうかは不明で、一方、説明資料については、こんなことを明かしたという。
〈保存期間を国立公文書館の審査を経ずいつでも廃棄できる1年未満に設定し、面談後に廃棄している〉
「1年未満でいつでも廃棄できる」ということは、面談翌日でも廃棄できるということになってしまう。改正ガイドラインでは、〈政策立案や事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等の記録については、文書を作成するものとする〉と定められている。ここには当然、官邸も含まれている。しかし、官邸は森友・加計問題であれだけ文書の管理が問題となったというのに、相も変わらず「面談後に破棄」などという無責任極まりない態度をまったく崩していないのだ。
ようするにこれは、府官庁から面談記録が出てきたとしても、安倍首相は「記憶にない」「官邸に記録もない」と突っぱねることができる、ということではないか。
その上、毎日新聞はさらに驚きの事実を伝えている。毎日新聞は12府省の幹部に関わる16件の面談を抜き出して「原本」を保管する府省にも開示請求をおこなったが、すべての府省が議事録について「残していない」「存否すら明かせない」と回答し、説明資料についても6件が「存在しない」という回答だったというのだ。
改正ガイドラインで打ち合わせ記録の作成が義務づけられたのに、「議事録を残していない」「存否すら明かせない」って……。これでは一体、何のために公文書管理のガイドラインを改正したというのか。
じつは、毎日新聞の取材では、複数の省の幹部職員が、そのカラクリについてこう打ち明けている。
「官邸は情報漏えいを警戒して面談に記録要員を入れさせない」
「首相の目の前ではメモは取れない。見つかれば、次の面談から入れてもらえなくなる」
「面談後に記録を作っても、あえて公文書扱いにはしていない」
「幹部は面談後、記憶した首相とのやり取りを部下に口頭で伝えてメモを作らせている」
そもそも面談記録をつくらせない、つくっても公文書にはしない──。いや、この「公文書の危機」は、すでに昨年の段階から不安視されてきた。ガイドライン改正にあわせ、経産省では政治家をはじめ省内外の人物との打ち合わせの記録を「個別の発言まで記録する必要はない」などと指示するなど、“議事録は不要”とする内部文書を作成していたことを、やはり毎日新聞がスクープ。
また、西日本新聞でも、都市圏総局次長の植田祐一氏がこんな話を明かしていた。植田氏の〈旧知のキャリア官僚〉の弁によると、ガイドラインが改正される直前の昨年3月末、上司から公文書管理にかんしてこんな指示がなされたというのだ。
〈「機微に触れるものは記録に残さず、頭の中にメモせよ。報告する際は口頭で」。首相官邸で首相秘書官らと打ち合わせる際は「メモ厳禁。録音不可」の徹底が言い渡されたという。〉(西日本新聞2018年7月13日)
2につづく
LITERA
2019.04.17 12:15
https://lite-ra.com/2019/04/post-4664.html