1月末で閉店する北海道帯広市の老舗百貨店「藤丸」の従業員の再就職に向け、100社を超す地元企業が参加した就職面接会が連日続いている。ただ、現状で内定を得た従業員は約1割にとどまっている。藤丸の受け皿となる新会社が昨年末に設立され、再建への道筋が見え始めた一方で、再就職問題はこれからが正念場だ。【鈴木斉】
「ずっと藤丸で働きたかった。不安もあるが、何とか同じような職種の仕事が決まれば……」。高校卒業後の14年間、藤丸で主に菓子販売を担った女性従業員(32)は12日、面接会場を訪れ、地元の菓子製造販売会社の面談に臨んだ。
藤丸によると、直接雇用する従業員約150人のうち、再就職の内定者は1割程度。内定の可能性が出ている人を含めても3割にとどまり、残る7割は未定だという。
店舗内での販売業務を希望する従業員が多いのに対し、小売販売業務の求人は極端に少なく、慢性的な人手不足の福祉介護関係や飲食関連などが多いという「求職と求人のミスマッチ」も要因の一つ。藤丸の閉店セールや年末年始の特売などで業務が多忙となる中、仕事の合間を縫って面接に参加するのが難しいという事情もある。
多くの従業員は閉店日まで販売業務などを続け、求職活動が本格化するのは2月以降とみられる。臼井一義取締役管理部長は「本番は閉店後だと思う。2月以降も関係機関と連携し、藤丸として最後までしっかり支援する」と力を込めた。
今月10日から始まった面接会は藤丸が主催し、帯広公共職業安定所(ハローワーク帯広)と帯広商工会議所が協力。百貨店横にある関連ビル内で20日まで行われる。12日の面接会に参加した警備会社の担当者は「藤丸の従業員は顧客対応に慣れているので、営業職などでも活躍が期待できる」、別の会社の担当者も「職種が変わっても活躍できる人材が多いと思う」と話した。同会議所の三井真専務理事は「藤丸への恩返しの思いで面接会に参加する地元企業も多い」と説明する。
閉店後の藤丸を巡っては、市内の帯広日産自動車の親会社「村松ホールディングス」と地域活性化を目指すベンチャー「そら」の2社が、屋号を引き継ぐ形で再建に取り組む新会社「藤丸株式会社」を設立。建物の耐震改装工事を経て今年12月以降、百貨店事業の一部を引き継いだ新業態での営業再開を目指す方針だ。
ただ、「新生藤丸」の具体的な姿はまだ見えず、テナントを含めたフロアの構成なども白紙に近い状況だ。新会社は開業が1年ずれ込む可能性も指摘しているため、雇用の見通しを示すのも難しい。従業員が新生藤丸への再就職を希望するにしても、当面の生活維持のための仕事が必要だ。
藤丸の閉店により、テナントや取引先の従業員など約200人も影響を受けるとされ、再就職の動きは今後さらに活発化しそうだ。面接会場の横には帯広職安が開設した求人票の閲覧会場があり、12日も職安の職員から履歴書の記入法などのアドバイスを受ける姿が見られた。
藤丸は1900(明治33)年創業。帯広市の「中心街の顔」として市民に親しまれてきたが、業績不振で昨年7月に閉店方針が示された。
毎日新聞 2023/1/14 06:30(最終更新 1/14 06:30) 1282文字
https://mainichi.jp/articles/20230113/k00/00m/020/141000c
「ずっと藤丸で働きたかった。不安もあるが、何とか同じような職種の仕事が決まれば……」。高校卒業後の14年間、藤丸で主に菓子販売を担った女性従業員(32)は12日、面接会場を訪れ、地元の菓子製造販売会社の面談に臨んだ。
藤丸によると、直接雇用する従業員約150人のうち、再就職の内定者は1割程度。内定の可能性が出ている人を含めても3割にとどまり、残る7割は未定だという。
店舗内での販売業務を希望する従業員が多いのに対し、小売販売業務の求人は極端に少なく、慢性的な人手不足の福祉介護関係や飲食関連などが多いという「求職と求人のミスマッチ」も要因の一つ。藤丸の閉店セールや年末年始の特売などで業務が多忙となる中、仕事の合間を縫って面接に参加するのが難しいという事情もある。
多くの従業員は閉店日まで販売業務などを続け、求職活動が本格化するのは2月以降とみられる。臼井一義取締役管理部長は「本番は閉店後だと思う。2月以降も関係機関と連携し、藤丸として最後までしっかり支援する」と力を込めた。
今月10日から始まった面接会は藤丸が主催し、帯広公共職業安定所(ハローワーク帯広)と帯広商工会議所が協力。百貨店横にある関連ビル内で20日まで行われる。12日の面接会に参加した警備会社の担当者は「藤丸の従業員は顧客対応に慣れているので、営業職などでも活躍が期待できる」、別の会社の担当者も「職種が変わっても活躍できる人材が多いと思う」と話した。同会議所の三井真専務理事は「藤丸への恩返しの思いで面接会に参加する地元企業も多い」と説明する。
閉店後の藤丸を巡っては、市内の帯広日産自動車の親会社「村松ホールディングス」と地域活性化を目指すベンチャー「そら」の2社が、屋号を引き継ぐ形で再建に取り組む新会社「藤丸株式会社」を設立。建物の耐震改装工事を経て今年12月以降、百貨店事業の一部を引き継いだ新業態での営業再開を目指す方針だ。
ただ、「新生藤丸」の具体的な姿はまだ見えず、テナントを含めたフロアの構成なども白紙に近い状況だ。新会社は開業が1年ずれ込む可能性も指摘しているため、雇用の見通しを示すのも難しい。従業員が新生藤丸への再就職を希望するにしても、当面の生活維持のための仕事が必要だ。
藤丸の閉店により、テナントや取引先の従業員など約200人も影響を受けるとされ、再就職の動きは今後さらに活発化しそうだ。面接会場の横には帯広職安が開設した求人票の閲覧会場があり、12日も職安の職員から履歴書の記入法などのアドバイスを受ける姿が見られた。
藤丸は1900(明治33)年創業。帯広市の「中心街の顔」として市民に親しまれてきたが、業績不振で昨年7月に閉店方針が示された。
毎日新聞 2023/1/14 06:30(最終更新 1/14 06:30) 1282文字
https://mainichi.jp/articles/20230113/k00/00m/020/141000c