ウーバー配達員団交権認定は「ギグワーカー」の労組結成に追い風 コロナ禍で雇い止めの受け皿に
東京都労働委員会がウーバーに対し労働組合との交渉に応じるように命じたことは、他のプラットフォーム企業の影響下で働くギグワーカーでも、労組結成が進む追い風となりそうだ。コロナ禍やIT経済の進展で安全網のないギグワーカーは増えており、政府による保護策の整備も不可欠だ。(池尾伸一、原田晋也)
ギグワーカー ネット経由での単発の仕事で生計を立てる働き手。ミュージシャンが一夜限りの契約でライブ演奏に参加する「ギグ」(gig)が語源。
◆環境不安定「報酬がブラックボックス化」「社員と話せない」
「これでやっと会社と交渉できる。話したいことはいっぱいある」。労組ウーバーイーツユニオンの渡辺雅史委員長はこう話す。
コロナ禍で雇い止めされた人々の仕事の「受け皿」ともなったウーバーイーツだが、環境は不安定だ。
東京・世田谷区三軒茶屋のマクドナルド前では毎日、昼前になると、配達依頼を待ち、ウーバーの配達員が20人ほど並ぶ。コックとして勤めた飲食店が長期休業になり、配達員になった男性(30)は「報酬がブラックボックス化しており、フルで働いても月20万円にしかならない時もあれば30万円の時も。ずっとやろうとは思わない」と語る。
別の男性(45)は、8月に振込先口座を変えたところなぜか「規約違反があった」として、仕事を受けるためのアプリが利用できなくなった。約4カ月間もウーバーで稼げなくなり、貯金を取り崩しながらの生活が続いた。こうした状況でも「ウーバーの社員と話すことすらできず、チャットでやりとりするしかない」。
団交ができれば、環境改善を直接要求できる。
◆プラットフォーム企業の働き手、保護するきっかけに
法政大の沼田雅之教授(労働法)は今回の命令の意義を「日本でも、プラットフォーム企業の働き手を労働者として保護する流れをつくるきっかけになる可能性もある」と説明する。
コロナ禍で、ウーバーと同じような仕組みの食事配達サービスは一気に増えた。通販大手アマゾンは、ウーバーイーツと同様に個人事業主がアプリを通じ荷物の宅配を請け負う「アマゾンフレックス」を運営。また、アマゾンの下請け企業では配達を請け負う個人事業主らが労組を結成する動きが各地で始まった。都労委の命令はこうした流れの追い風にもなりそうだ。
英国では今年、ウーバーのアプリを通じた依頼に応じ、自分の車で乗客を乗せる7万人のドライバーらが労組に加盟。年金や疾病手当などの充実に向けウーバーと交渉を始めている。
◆欧米では政府が権利保護 岸田政権は消極的
ただ日本では曲折も予想される。ウーバーが団交に応じず、中央労働委員会に再審査を申し立てる可能性がある。交渉が始まっても組合員はわずか20人で要求が受け入れられるかは不明。「働き手任せ」では権利保護にも限界がある。
欧米では政府がギグワーカーの権利保護に乗り出している。欧州連合(EU)が昨年末、労災や社会保険の対象とする法案を公表。米バイデン政権も一定基準を満たせば労働者とみなし保護する指針を作成中だ。
岸田政権は発注元企業による支払いの遅れなどを禁じる「フリーランス新法」の国会提出を準備するが、ギグワーカーの安全網の整備には消極的だ。沼田氏は「不安定な働き手を増やせば将来、低年金の人を増やすなど国としてマイナス。保護策を講じる方向にかじを切るべきだ」と言う。
東京新聞 2022年11月26日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/216145
※関連スレ
ウーバーイーツ配達員の団体交渉権を認める [香味焙煎★]
http://2chb.net/r/newsplus/1669354212/
東京都労働委員会がウーバーに対し労働組合との交渉に応じるように命じたことは、他のプラットフォーム企業の影響下で働くギグワーカーでも、労組結成が進む追い風となりそうだ。コロナ禍やIT経済の進展で安全網のないギグワーカーは増えており、政府による保護策の整備も不可欠だ。(池尾伸一、原田晋也)
ギグワーカー ネット経由での単発の仕事で生計を立てる働き手。ミュージシャンが一夜限りの契約でライブ演奏に参加する「ギグ」(gig)が語源。
◆環境不安定「報酬がブラックボックス化」「社員と話せない」
「これでやっと会社と交渉できる。話したいことはいっぱいある」。労組ウーバーイーツユニオンの渡辺雅史委員長はこう話す。
コロナ禍で雇い止めされた人々の仕事の「受け皿」ともなったウーバーイーツだが、環境は不安定だ。
東京・世田谷区三軒茶屋のマクドナルド前では毎日、昼前になると、配達依頼を待ち、ウーバーの配達員が20人ほど並ぶ。コックとして勤めた飲食店が長期休業になり、配達員になった男性(30)は「報酬がブラックボックス化しており、フルで働いても月20万円にしかならない時もあれば30万円の時も。ずっとやろうとは思わない」と語る。
別の男性(45)は、8月に振込先口座を変えたところなぜか「規約違反があった」として、仕事を受けるためのアプリが利用できなくなった。約4カ月間もウーバーで稼げなくなり、貯金を取り崩しながらの生活が続いた。こうした状況でも「ウーバーの社員と話すことすらできず、チャットでやりとりするしかない」。
団交ができれば、環境改善を直接要求できる。
◆プラットフォーム企業の働き手、保護するきっかけに
法政大の沼田雅之教授(労働法)は今回の命令の意義を「日本でも、プラットフォーム企業の働き手を労働者として保護する流れをつくるきっかけになる可能性もある」と説明する。
コロナ禍で、ウーバーと同じような仕組みの食事配達サービスは一気に増えた。通販大手アマゾンは、ウーバーイーツと同様に個人事業主がアプリを通じ荷物の宅配を請け負う「アマゾンフレックス」を運営。また、アマゾンの下請け企業では配達を請け負う個人事業主らが労組を結成する動きが各地で始まった。都労委の命令はこうした流れの追い風にもなりそうだ。
英国では今年、ウーバーのアプリを通じた依頼に応じ、自分の車で乗客を乗せる7万人のドライバーらが労組に加盟。年金や疾病手当などの充実に向けウーバーと交渉を始めている。
◆欧米では政府が権利保護 岸田政権は消極的
ただ日本では曲折も予想される。ウーバーが団交に応じず、中央労働委員会に再審査を申し立てる可能性がある。交渉が始まっても組合員はわずか20人で要求が受け入れられるかは不明。「働き手任せ」では権利保護にも限界がある。
欧米では政府がギグワーカーの権利保護に乗り出している。欧州連合(EU)が昨年末、労災や社会保険の対象とする法案を公表。米バイデン政権も一定基準を満たせば労働者とみなし保護する指針を作成中だ。
岸田政権は発注元企業による支払いの遅れなどを禁じる「フリーランス新法」の国会提出を準備するが、ギグワーカーの安全網の整備には消極的だ。沼田氏は「不安定な働き手を増やせば将来、低年金の人を増やすなど国としてマイナス。保護策を講じる方向にかじを切るべきだ」と言う。
東京新聞 2022年11月26日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/216145
※関連スレ
ウーバーイーツ配達員の団体交渉権を認める [香味焙煎★]
http://2chb.net/r/newsplus/1669354212/