空港にドローン侵入、滑走路閉鎖でダイヤ混乱 神戸空港は規制の「対象外」 警察は捜査に乗り出す
神戸空港(神戸市中央区)周辺で10月中旬、夜間にドローンのようなものが飛んでいるのが見つかり、約1時間にわたって滑走路が閉鎖された。事故やけが人はなかったが、神戸空港に向かっていた4便が目的地を変更、引き返す事態となり、兵庫県警が威力業務妨害容疑で捜査中だ。空港へのドローンの侵入は3年前に関西空港(大阪府)で相次いだことなどから規制が進むが、新法がカバーするのは主要空港に限られており「対象外」の神戸空港は有効な対策を打ちあぐねている。
■突然の機内アナウンス
「ただいまより中部国際空港に着陸致します」
10月14日午後9時半ごろ、仙台発神戸行きのスカイマーク便に乗っていた大学教員の男性(48)=福島市=は寝起きに機内アナウンスを聞き「乗務員の言い間違いかな」と首をかしげた。
神戸空港を運営する関西エアポートなどによると、10月14日午後7時40分ごろ、同空港に着陸直前の航空機のパイロットがドローンのような飛行物体を見つけて管制塔に連絡。安全確認のため午後8時過ぎから午後9時10分までの約1時間、滑走路を閉鎖した。
男性が乗った便では中部に着陸後に機長から詳しい説明があり、1時間20分ほど待機したという。
再出発して神戸に着いたのは午後11時24分。神戸空港は営業時間を30分延長して対応した。三宮につながるポートライナーは最終電車の発車が20分後に迫っていた。男性が振り返る。「仕事で仙台-神戸間によく乗るが、こんなトラブルは初めて。驚きと電車に間に合うかどうかの不安で機内もざわついていた」
■ドローンの侵入防ぐには
同じ頃、茨城と羽田発の各1便も中部を経由したり引き返したりして、予定から2時間以上遅れて神戸空港に到着。新千歳発の1便は結局神戸に降りられず、行き先を関西空港に変えた。
けが人はなかったが、安全運航が妨げられたとして県警は威力業務妨害容疑で捜査を開始。捜査1課によると、目撃情報などから瞬間的な出入りではなく一定時間滞空しており、何者かが意図的に飛ばしていたとみて調べている。
空港内にひとたびドローンが侵入すると今回のように大きな影響を避けられない。
2016年施行の「小型無人機等飛行禁止法」では、事前の届け出なく「重要施設」の敷地や周囲約300メートルの上空にドローンが飛んできた場合、空港管理者や警察が妨害電波を出して侵入を阻止できると定めている。
刑法や、違反者に50万円以下の罰金を課す「航空法」と異なり、事後の取り締まりだけでなく現場で防御策を講じられるのが大きな特徴だ。
もともと、東京五輪開催などを見据え、テロに備えた法律で、「重要施設」には皇居や国会議事堂を指定。ところが、関西空港で19年10~11月に立て続けにドローンが侵入してダイヤが乱れたことも踏まえ、翌20年7月、空港も対象する形に改正した。関西のほか成田や大阪(伊丹)、福岡など計8空港が指定される一方、今回事件のあった神戸空港は「重要施設」に含まれない。
■「重要施設」になれるか
実は滑走路の閉鎖は日常的に行われている。
関西エアポートによると「(機体に)鳥のようなものが当たった」といった報告を受けて、10分程度の安全確認を実施するケースは少なくない。
しかし、ドローンのような不審物に対しては「戻ってくる可能性を考え、一定時間何も飛んでいないことを確認する必要がある」といい、今回は目撃が途絶えてからも30分ほど様子を見た上で、ようやく再開を決めている。
神戸空港は供用規程で空港内へのドローンの持ち込みを禁じているが、「搭乗客以外も全員手荷物検査をするのは現実的でなく、完全に防ぐのは難しい」と担当者。ホームページなどで周知するにとどまる。
現在、30年ごろをめどに国際線の定期便就航に動き出している同空港。今後、発着数が増えることが見込まれる中、「重要施設」に位置付けられる可能性はあるのか。
国土交通省航空局によると、ドローンの侵入を検知する設備を導入するためにはまとまった費用が必要なため、関係機関との調整に時間がかかるといい、担当者は「今回の事案がきっかけで神戸空港を対象に加えるという予定はない」と強調。「適宜、必要に応じて対策を検討する」と述べるにとどめた。(井上太郎)
2022/11/7 17:15神戸新聞NEXT
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202211/0015788279.shtml
神戸空港(神戸市中央区)周辺で10月中旬、夜間にドローンのようなものが飛んでいるのが見つかり、約1時間にわたって滑走路が閉鎖された。事故やけが人はなかったが、神戸空港に向かっていた4便が目的地を変更、引き返す事態となり、兵庫県警が威力業務妨害容疑で捜査中だ。空港へのドローンの侵入は3年前に関西空港(大阪府)で相次いだことなどから規制が進むが、新法がカバーするのは主要空港に限られており「対象外」の神戸空港は有効な対策を打ちあぐねている。
■突然の機内アナウンス
「ただいまより中部国際空港に着陸致します」
10月14日午後9時半ごろ、仙台発神戸行きのスカイマーク便に乗っていた大学教員の男性(48)=福島市=は寝起きに機内アナウンスを聞き「乗務員の言い間違いかな」と首をかしげた。
神戸空港を運営する関西エアポートなどによると、10月14日午後7時40分ごろ、同空港に着陸直前の航空機のパイロットがドローンのような飛行物体を見つけて管制塔に連絡。安全確認のため午後8時過ぎから午後9時10分までの約1時間、滑走路を閉鎖した。
男性が乗った便では中部に着陸後に機長から詳しい説明があり、1時間20分ほど待機したという。
再出発して神戸に着いたのは午後11時24分。神戸空港は営業時間を30分延長して対応した。三宮につながるポートライナーは最終電車の発車が20分後に迫っていた。男性が振り返る。「仕事で仙台-神戸間によく乗るが、こんなトラブルは初めて。驚きと電車に間に合うかどうかの不安で機内もざわついていた」
■ドローンの侵入防ぐには
同じ頃、茨城と羽田発の各1便も中部を経由したり引き返したりして、予定から2時間以上遅れて神戸空港に到着。新千歳発の1便は結局神戸に降りられず、行き先を関西空港に変えた。
けが人はなかったが、安全運航が妨げられたとして県警は威力業務妨害容疑で捜査を開始。捜査1課によると、目撃情報などから瞬間的な出入りではなく一定時間滞空しており、何者かが意図的に飛ばしていたとみて調べている。
空港内にひとたびドローンが侵入すると今回のように大きな影響を避けられない。
2016年施行の「小型無人機等飛行禁止法」では、事前の届け出なく「重要施設」の敷地や周囲約300メートルの上空にドローンが飛んできた場合、空港管理者や警察が妨害電波を出して侵入を阻止できると定めている。
刑法や、違反者に50万円以下の罰金を課す「航空法」と異なり、事後の取り締まりだけでなく現場で防御策を講じられるのが大きな特徴だ。
もともと、東京五輪開催などを見据え、テロに備えた法律で、「重要施設」には皇居や国会議事堂を指定。ところが、関西空港で19年10~11月に立て続けにドローンが侵入してダイヤが乱れたことも踏まえ、翌20年7月、空港も対象する形に改正した。関西のほか成田や大阪(伊丹)、福岡など計8空港が指定される一方、今回事件のあった神戸空港は「重要施設」に含まれない。
■「重要施設」になれるか
実は滑走路の閉鎖は日常的に行われている。
関西エアポートによると「(機体に)鳥のようなものが当たった」といった報告を受けて、10分程度の安全確認を実施するケースは少なくない。
しかし、ドローンのような不審物に対しては「戻ってくる可能性を考え、一定時間何も飛んでいないことを確認する必要がある」といい、今回は目撃が途絶えてからも30分ほど様子を見た上で、ようやく再開を決めている。
神戸空港は供用規程で空港内へのドローンの持ち込みを禁じているが、「搭乗客以外も全員手荷物検査をするのは現実的でなく、完全に防ぐのは難しい」と担当者。ホームページなどで周知するにとどまる。
現在、30年ごろをめどに国際線の定期便就航に動き出している同空港。今後、発着数が増えることが見込まれる中、「重要施設」に位置付けられる可能性はあるのか。
国土交通省航空局によると、ドローンの侵入を検知する設備を導入するためにはまとまった費用が必要なため、関係機関との調整に時間がかかるといい、担当者は「今回の事案がきっかけで神戸空港を対象に加えるという予定はない」と強調。「適宜、必要に応じて対策を検討する」と述べるにとどめた。(井上太郎)
2022/11/7 17:15神戸新聞NEXT
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202211/0015788279.shtml