生活保護申請の際に自治体が親類らに問い合わせる「扶養照会」 実は金銭的援助につながらず 本紙調査で浮かぶ
生活保護申請をためらう大きな理由とされる自治体の「扶養照会」を巡り、本紙が東京都内28自治体に行ったアンケートで、照会が保護申請者の金銭的援助につながるケースはほとんどないことが、本紙のまとめであらためて浮かんだ。(山下葉月)
◆援助につながるケースは、最多の練馬でもわずか2.2%
2021年度に扶養照会した世帯数が判明した19自治体をみると、申請者の親類らから何らかの金銭的援助が得られた事例は、最も多かった練馬区で14件で照会世帯数の2.2%にとどまった。次いで北区が9件で2.6%だった。「ゼロ」も6自治体あり、「未集計」とした文京区と府中市を除く平均は1.1%だった。
扶養照会が金銭援助につながる割合については、厚生労働省が16年度調査で1.5%と算出している。本紙アンケートは未回答の自治体も多く単純比較はできないが、近年も非常に低い傾向であることは明らかになった。困窮者支援団体などからは「照会は実態として意味はない」との批判が出ている。
一方、21年度と20年度の照会率の比較では、3自治体が前年度から5ポイント以上の上昇。理由については「新規の保護開始世帯の事情による」などの回答だった。足立、中野区は20~10ポイント下がった。
◆生活保護の利用を知られなくない人にとっては大きなハードル
アンケートは、都内の特別区23区と人口20万人以上の市を対象に、扶養照会の実施状況などを文書で質問。7~8月に回収・聞き取りをした。今月4日付本紙1面などで報じた。
照会世帯数の回答で、中央、大田、世田谷、荒川、調布の5区市は1世帯当たり複数人に実施した「人数」を回答。板橋区も本紙報道後に「人数」だったと回答を修正、台東、町田、西東京の3区市は「統計なし」などと回答したため照会率の算出からは除外した。
困窮者支援団体などは「扶養照会は水際対策」と問題視し、親族らに生活保護利用を知られたくない人にとって、保護申請の大きなハードルになっていると指摘。ただ、「親族らに照会する」と自治体側から言われて申請を断念する事例は、団体などによる多くの報告例があるが、明確な集計がなく全容は明らかになっていない。
(略)
東京新聞 2022年9月8日 20時34分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/200874