宅配ピザ店の現金窃盗事件で無罪判決を受けた男性は「警察や検察は、本当の犯人を捕まえてほしいです。そして、自分を逮捕する前に、もっとちゃんと調べてほしかったです」と話す――。
これまで2回にわたって、「無罪判決の理由」を紹介してきたが、それでも一度は逮捕・起訴された玉木公一さん(仮名=30代)に対して「やったのではないか」と疑いの目を向ける人は存在する。
それは、社会復帰しようとする玉木さんが、就職の面接でことごとく落ちているという状況からも明らかだ。
玉木さんは弁護士ドットコムニュースの取材に、無罪判決を得た喜び、そしてそれ以上に増していく苦悩を語った。(編集部・塚田賢慎)
(判決文の解説♯1はこちら https://www.bengo4.com/c_1009/n_14436/ 判決文だけではわからない「事件の裏側」♯2はこちら
https://www.bengo4.com/c_1009/n_14437/ 全3回)
●認めて楽になろうとしたことがあった。
玉木さんはまさか自分が逮捕され、300日以上も身柄拘束されるとは夢にも思っていなかったという。
「事件を知ったのは、(2020年)2月に上司から車の中で詰問されたときでした。5月に家宅捜索があり、警察で話を聞かれましたが、そのときも逮捕されるとは思いませんでした。
逮捕後は、何もできず、誰にも連絡を取れず、しんどかったです。逮捕イコール犯罪者と見られるんだということがわかりました」
あまりのつらさに、身に覚えのない犯罪を認めてしまおうと考えたことさえあった。
「認めようとしたことは何度かありました。認めたら早く終わるかと思ったからです。拘置所内での虐めや暴力を受けたこともありました。拘置所の職員に言って、独房に移らせてもらいましたが、とても嫌でした。
でも、最後まで諦めなかったのは、自分はやっていませんし、それを信じてくれていた婚約者や友人たちがいたからです。心の支えになったのは、私を最後まで信じて、手紙のやり取りをして支えてくれた人たちでした」
●絶望的に思えた無罪判決の獲得
どれだけ自分がやっていないと思っても、刑事事件で無罪判決を獲得することは「絶望的」で、玉木さんは正直なところ、「ありえない」とあきらめていたそうだ。
「裁判の間はずっと緊張していました。(弁護人をつとめた)松渓康弁護士が証人尋問などをしているときも、もちろん聞いているのですが、全然頭に入ってきませんでした。
刑事事件で無罪判決となるのは絶望的と聞いていて、初めから無罪判決は無いと思っていました。奇跡くらいかと考えていました。
ですので、無罪とわかった瞬間は、ただただ、よかったと思いました。安心しました。そのときは、放心状態で、それ以上何も思いませんでした。松渓弁護士には、私のために頑張ってもらい、本当に感謝しています」
●しかし。。深く刻まれた偏見
ただ、無罪だからといって、実際に社会復帰が叶ったわけではない。身柄拘束によって、当時働いていた飲食店も新聞配達も辞めざるをえなくなった。今も仕事は見つかっておらず、不安を抱えている。
「就職の面接で、履歴書の空白について説明することや、本当のことを話しても良い印象を持たれなかったりと大変です。
ほとんど必ずアルバイトを辞めたことを質問されます。逮捕されていたと正直に話して、良い印象を持たれたことはありません。やっていないし、無罪判決だったと言っても同じです。
『逮捕されたことがあるんだ。あー大変でしたね』と言われますが、逮捕されたことを良く思っていないようです。『疑われる要素があるんだ』『うちでもするのかもしれない』と受け止められるのかもしれません。
採用側からしたら、私は普通の人ではないので。ただ、自分としても、逮捕歴のある人を採用したくない気持ちがわからないではないです」
最後に玉木さんは、自分を逮捕した警察や起訴した検察、自分と同じように冤罪で苦しむ人に向けてメッセージを残した。
「警察や検察は、本当の犯人を捕まえてほしいです。そして、自分が逮捕されるまで、もっとちゃんと調べてほしかったです。家宅捜索もいい加減でした。警察での取り調べでも、犯人扱いされてしんどかったです。
やってもいないのに、犯罪の疑いをかけられている人は、つらいことしかないとは思いますが、周りからどんなことを言われようと最後まで自分を信じて頑張ってほしいです」
5/8 弁護士ドットコム
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8a2707a164e0a58c7761b671e66d25f05c3c236
これまで2回にわたって、「無罪判決の理由」を紹介してきたが、それでも一度は逮捕・起訴された玉木公一さん(仮名=30代)に対して「やったのではないか」と疑いの目を向ける人は存在する。
それは、社会復帰しようとする玉木さんが、就職の面接でことごとく落ちているという状況からも明らかだ。
玉木さんは弁護士ドットコムニュースの取材に、無罪判決を得た喜び、そしてそれ以上に増していく苦悩を語った。(編集部・塚田賢慎)
(判決文の解説♯1はこちら https://www.bengo4.com/c_1009/n_14436/ 判決文だけではわからない「事件の裏側」♯2はこちら
https://www.bengo4.com/c_1009/n_14437/ 全3回)
●認めて楽になろうとしたことがあった。
玉木さんはまさか自分が逮捕され、300日以上も身柄拘束されるとは夢にも思っていなかったという。
「事件を知ったのは、(2020年)2月に上司から車の中で詰問されたときでした。5月に家宅捜索があり、警察で話を聞かれましたが、そのときも逮捕されるとは思いませんでした。
逮捕後は、何もできず、誰にも連絡を取れず、しんどかったです。逮捕イコール犯罪者と見られるんだということがわかりました」
あまりのつらさに、身に覚えのない犯罪を認めてしまおうと考えたことさえあった。
「認めようとしたことは何度かありました。認めたら早く終わるかと思ったからです。拘置所内での虐めや暴力を受けたこともありました。拘置所の職員に言って、独房に移らせてもらいましたが、とても嫌でした。
でも、最後まで諦めなかったのは、自分はやっていませんし、それを信じてくれていた婚約者や友人たちがいたからです。心の支えになったのは、私を最後まで信じて、手紙のやり取りをして支えてくれた人たちでした」
●絶望的に思えた無罪判決の獲得
どれだけ自分がやっていないと思っても、刑事事件で無罪判決を獲得することは「絶望的」で、玉木さんは正直なところ、「ありえない」とあきらめていたそうだ。
「裁判の間はずっと緊張していました。(弁護人をつとめた)松渓康弁護士が証人尋問などをしているときも、もちろん聞いているのですが、全然頭に入ってきませんでした。
刑事事件で無罪判決となるのは絶望的と聞いていて、初めから無罪判決は無いと思っていました。奇跡くらいかと考えていました。
ですので、無罪とわかった瞬間は、ただただ、よかったと思いました。安心しました。そのときは、放心状態で、それ以上何も思いませんでした。松渓弁護士には、私のために頑張ってもらい、本当に感謝しています」
●しかし。。深く刻まれた偏見
ただ、無罪だからといって、実際に社会復帰が叶ったわけではない。身柄拘束によって、当時働いていた飲食店も新聞配達も辞めざるをえなくなった。今も仕事は見つかっておらず、不安を抱えている。
「就職の面接で、履歴書の空白について説明することや、本当のことを話しても良い印象を持たれなかったりと大変です。
ほとんど必ずアルバイトを辞めたことを質問されます。逮捕されていたと正直に話して、良い印象を持たれたことはありません。やっていないし、無罪判決だったと言っても同じです。
『逮捕されたことがあるんだ。あー大変でしたね』と言われますが、逮捕されたことを良く思っていないようです。『疑われる要素があるんだ』『うちでもするのかもしれない』と受け止められるのかもしれません。
採用側からしたら、私は普通の人ではないので。ただ、自分としても、逮捕歴のある人を採用したくない気持ちがわからないではないです」
最後に玉木さんは、自分を逮捕した警察や起訴した検察、自分と同じように冤罪で苦しむ人に向けてメッセージを残した。
「警察や検察は、本当の犯人を捕まえてほしいです。そして、自分が逮捕されるまで、もっとちゃんと調べてほしかったです。家宅捜索もいい加減でした。警察での取り調べでも、犯人扱いされてしんどかったです。
やってもいないのに、犯罪の疑いをかけられている人は、つらいことしかないとは思いますが、周りからどんなことを言われようと最後まで自分を信じて頑張ってほしいです」
5/8 弁護士ドットコム
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8a2707a164e0a58c7761b671e66d25f05c3c236