政府は14日の経済財政諮問会議で、財政の健全化目標について議論した。
民間議員は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度に黒字化するとの従来目標を「堅持すべきだ」と提言した。
政府は6月にもまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込むが、その実現性には険しさが増す。
菅義偉首相は「財政健全化の旗を降ろさず、これまでの歳出改革努力を続けていく」と述べた。
PBは財政の健全性を示す指標の1つで、社会保障や公共事業といった政策経費をどのくらい税収でまかなうことができるかを示す。
日本の債務残高は、国内総生産(GDP)比で250%を超えており、世界でも突出する。
赤字が続き必要施策に回せる財政上の余力が低下すれば、負担増・給付減の痛みに直結する。民間議員の提言はこうした危機意識からだ。
もっとも、歴代政権を通じてPBの黒字化目標は過去何度も先送りになってきた。
現状でも25年度の達成は極めて難しい。21年度のPB赤字は、コロナ対策を名目に国債発行を財源にした大規模な財政出動が響き、40.1兆円にまで膨らんでいる。
内閣府が1月に示した試算によれば、高い成長率を確保できることを前提とし、歳出削減を進める結果、黒字化は理屈上は可能だとはじく。
3%以上の高い名目経済成長率を21年度以降のすべての年で実現するなどといったシナリオを前提とするため、
22年度はPBの赤字が19.1兆円と20兆円超、圧縮される。その後、毎年1.3兆円ずつ収支を改善していけば、26年度の黒字化が可能だとみる。
財務省としては、財政の信用低下とそれに伴う金利上昇をできるだけ避けたい思いがある。
国債金利は政府だけでなく民間の金融機関や企業の資金調達にも影響するためだが、次期衆院選も迫る中、与党からの歳出増圧力が増す可能性は高い。
こうした状況下では、PB目標を堅持するという選択肢しか今のところなかったとも言える。
歳出改革の手法と実現性は引き続き課題だ。国の歳出の多くを占める社会保障関係費の抑制を巡って、
民間議員は「高齢化に伴う増加分に抑える」という従来の方針を堅持すべきだと提言。
その期間についても「少なくとも団塊の世代が75歳以上になるまで」改革を続けるべきだとした。
近年は薬価引き下げなどで社会保障費の伸びを年5000億円以内に収めてきたものの、22年度以降は抑制がより難しくなる。
人口の多い団塊の世代が75歳になり始め、75歳以上の人口は22年に今年に比べ4%増える見通し。21年の増加率は0.5%だ。
一方、支え手は減る。15年に高齢者1人を2.3人の現役世代が支えていた構図は、25年になると1.9人で支えるようになる。
従来通りの改革メニューでは企業や現役世代の負担増でまかなうことになりかねない。
コロナ対応で日本と同じように大規模な財政出動に踏み切った米欧では法人税や富裕層の金融所得課税の引き上げに動こうとしている。
日本も歳出・歳入両面から大胆に見直す必要があるが、その道のりは険しい。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13BKK0T10C21A5000000/