儒教を開いた孔子を祭る「孔子廟」のため、那覇市が公園用地を無償で使わせていることは「政教分離の原則」を定めた憲法に違反するのか。こんな論点が争われた住民訴訟の上告審判決が24日、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)で言い渡される。儒教は宗教か学問か。廟は宗教施設か文化施設か。訴訟ではこうした点も論争となっており、最高裁の判断に注目が集まる。
沖縄県庁から北西に約1キロ・メートル。15日、市が管理する松山公園の一角を訪れると、朱色の門が目に入った。参観は無料で琉球瓦の本殿には孔子像が安置されている。「久米至聖廟」と呼ばれる孔子廟は閑散としていたが、新型コロナウイルス流行前は、学業成就などを祈願する人や海外の観光客らでにぎわっていたという。
■「街づくり」
廟の建立は2013年。14世紀末に現在の中国・福建省から渡来した集団で、琉球王国を支えた「久米三十六姓」の末裔でつくる一般社団法人「久米崇聖会」が公園用地の利用を申請すると、市は使用料を全額免除した。久米三十六姓が17世紀に建てた前身の廟は太平洋戦争末期の沖縄戦で焼失しており、市は「再建されれば、歴史や伝統を生かした街づくりにつながる」と判断したという。
ただ、市の会議では「宗教に限りなく近い」などとして、再建を危惧する声も上がっていた。条例では用地使用料は月額約48万円。廟が宗教施設なら、特定の宗教に対して国や自治体の便宜供与などを禁じた憲法に抵触する恐れもある。
■祭礼を重視
その危惧は裁判で現実となった。市内の女性(92)が14年、市を相手取り、同会に使用料を請求しないことの違法確認を求めて提訴。那覇地裁と福岡高裁那覇支部は18〜19年、無償提供を「違憲」とする判決を出した。
訴訟で市側は「儒教は孔子の説いた倫理を体系化した学問で、政教分離の問題は生じない」などと訴えたが、地裁と高裁支部は、孔子の誕生日とされる9月28日に毎年行われている祭礼を重視した。儒教が宗教かどうかの判断は避けつつ、供物を並べて孔子の霊を迎えるという様子を踏まえ、「神格化された孔子をあがめる宗教的儀式だ」と指摘。その上で、「無償提供は宗教への援助と評価されてもやむを得ない」と判断した。
双方の上告を受け、先月20日に最高裁の大法廷で行われた口頭弁論。原告側が「宗教的な性格が色濃い」と述べたのに対し、被告側は「地元の歴史と文化を伝える施設。観光資源としても重要だ」と反論するなど、激しい議論が交わされた。
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https://www.yomiuri.co.jp/national/20210220-OYT1T50135/
2021年2月20日 15時28分