小池百合子知事を支える都議会最大会派「都民ファーストの会」が提唱した、罰則付きの新型コロナウイルス感染症対策条例改正案。開会中の都議会第四回定例会で議論が交わされるはずだったが、他会派の賛同を得られない中で提出は見送られ、引き続き検討を続けることになった。来夏の都議選をにらんだ思惑も交錯し、最大会派の動向は引き続き注目を集めそうだ。 (松尾博史、小倉貞俊、岡本太)
◆難航
「各会派を回って調整していた」。二日夕、都民ファの記者会見は三十分遅れで始まった。テーマは「コロナ対策条例の今後の進め方」。小山有彦政調会長は「公明党から継続協議の申し出があり、受け入れることにした」と述べ、提出断念を表明した。前日まで「否決覚悟で出す」(都民ファ幹部)としていたが、ぎりぎりで軌道修正した格好となった。
都民ファは五十人を抱えるものの、単独では過半数(六十四)に届かない。他会派との調整が焦点だったが、当初から難航した。九月に条例案を発表後、十月に「TOKYO MX」の番組で行われた主要五会派による公開討論では、自民、共産、立憲民主が反対しただけでなく、知事を支える立場で協力関係にある公明さえ「罰則で規制する前にやることがあるのでは」と一蹴した。現場を抱える自治体からも異論があがり、十一月十九日には吉住健一新宿区長が定例会見で「保健所に業務を押しつけることになる」と批判した。
理解を広げようと、都民ファは同月二十四日、罰則の対象を限定する方針を発表。同三十日に公表した条例案では、保健所設置自治体の首長の意向を尊重する?との規定も盛り込んだ。
◆懸念
罰則そのものに慎重だった公明はそれでも賛同しなかった。否決必至の情勢となる中、都民ファ内では強硬論と慎重論が交錯した。小池知事の後押しも得られず、都庁内では都幹部らが都民ファの動向を「本当に出すのか」と懸念が上がり、ある都議からは「無理に出す必要はない」との声も出た。
最終的に混乱を心配した公明から「協議継続」の助け舟を出される形で、強硬論は引っ込めた。ただ公明幹部は「何とかまとめたようだが、あのやり方は…」と漏らす。知事与党最大会派が可決見通しがないまま突っ走る姿は、庁内外の不安を高めかねない?。そんな疑念を残した。
◆問われる姿勢
今後、都民ファは新たな条例案を「(例年ならば二月に開会する)第一回定例会に向けて合意形成が図られる条例案を示したい」(都民ファ・小山氏)という。ただ罰則を残すのであれば、各会派の賛同を得るのは容易ではない。一方で罰則をなくせば必要性に疑問符が付く。他会派の多くの都議が「来夏の都議選に向けたパフォーマンス」と冷ややかな目を向ける中、どうまとめるのか。最大会派の姿勢が問われる。
<都民ファーストの会の罰則付き条例案> 当初は(1)感染の疑いがある人が、正当な理由なく検査を拒否(2)感染者が外出自粛要請などに反して他人に感染させた(3)飲食店舗などの事業者が休業要請に応じず、一定人数以上の感染者を出した?場合に行政罰(5万円以下の過料)を科す内容だった。
「感染者が他人に感染させたかを立証するのは困難」などの意見募集の結果や、他会派の意向を踏まえて罰則は(1)のみに修正。さらに罰則を適用するかどうかは、保健所設置自治体の首長の意向を尊重するとの規定を追加した。
東京新聞 2020年12月13日 07時26分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/74045?rct=t_news
◆難航
「各会派を回って調整していた」。二日夕、都民ファの記者会見は三十分遅れで始まった。テーマは「コロナ対策条例の今後の進め方」。小山有彦政調会長は「公明党から継続協議の申し出があり、受け入れることにした」と述べ、提出断念を表明した。前日まで「否決覚悟で出す」(都民ファ幹部)としていたが、ぎりぎりで軌道修正した格好となった。
都民ファは五十人を抱えるものの、単独では過半数(六十四)に届かない。他会派との調整が焦点だったが、当初から難航した。九月に条例案を発表後、十月に「TOKYO MX」の番組で行われた主要五会派による公開討論では、自民、共産、立憲民主が反対しただけでなく、知事を支える立場で協力関係にある公明さえ「罰則で規制する前にやることがあるのでは」と一蹴した。現場を抱える自治体からも異論があがり、十一月十九日には吉住健一新宿区長が定例会見で「保健所に業務を押しつけることになる」と批判した。
理解を広げようと、都民ファは同月二十四日、罰則の対象を限定する方針を発表。同三十日に公表した条例案では、保健所設置自治体の首長の意向を尊重する?との規定も盛り込んだ。
◆懸念
罰則そのものに慎重だった公明はそれでも賛同しなかった。否決必至の情勢となる中、都民ファ内では強硬論と慎重論が交錯した。小池知事の後押しも得られず、都庁内では都幹部らが都民ファの動向を「本当に出すのか」と懸念が上がり、ある都議からは「無理に出す必要はない」との声も出た。
最終的に混乱を心配した公明から「協議継続」の助け舟を出される形で、強硬論は引っ込めた。ただ公明幹部は「何とかまとめたようだが、あのやり方は…」と漏らす。知事与党最大会派が可決見通しがないまま突っ走る姿は、庁内外の不安を高めかねない?。そんな疑念を残した。
◆問われる姿勢
今後、都民ファは新たな条例案を「(例年ならば二月に開会する)第一回定例会に向けて合意形成が図られる条例案を示したい」(都民ファ・小山氏)という。ただ罰則を残すのであれば、各会派の賛同を得るのは容易ではない。一方で罰則をなくせば必要性に疑問符が付く。他会派の多くの都議が「来夏の都議選に向けたパフォーマンス」と冷ややかな目を向ける中、どうまとめるのか。最大会派の姿勢が問われる。
<都民ファーストの会の罰則付き条例案> 当初は(1)感染の疑いがある人が、正当な理由なく検査を拒否(2)感染者が外出自粛要請などに反して他人に感染させた(3)飲食店舗などの事業者が休業要請に応じず、一定人数以上の感染者を出した?場合に行政罰(5万円以下の過料)を科す内容だった。
「感染者が他人に感染させたかを立証するのは困難」などの意見募集の結果や、他会派の意向を踏まえて罰則は(1)のみに修正。さらに罰則を適用するかどうかは、保健所設置自治体の首長の意向を尊重するとの規定を追加した。
東京新聞 2020年12月13日 07時26分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/74045?rct=t_news