新型コロナウイルスに感染した東京都港区の男性(39)が産経新聞の取材に応じ、病状や入院、ホテルでの隔離生活について語った。感染に心当たりはなく、恐怖と不安に直面した毎日。身の回りでも感染者が現れ、自責の念にも駆られた。日常を取り戻し、痛感するのは「コロナは目の前にある」ということ。新規感染者が減少傾向にあり、気が緩みやすい大型連休の今こそ、危機感を高く持つべきだと話している。(森西勇太)
《先日PCR検査を受け陽性でした。ご迷惑をおかけして申し訳ない思いもあり、複雑です》
男性が入院直前の4月7日、ユーチューブに投稿した約3分間の動画。感染判明に声を落としながらも、《(動画投稿は)僕にとっての禊(みそぎ)。症状を訴えていきたいと思うので、みなさんが何か感じるものがあったらうれしい》と発した。タイトルは「未知なるウイルスとの闘病生活をお伝えする」。この日から、自らの体験を語っている。
新型コロナウイルスに感染した東京都港区の男性(39)が産経新聞の取材に応じ、病状や入院、ホテルでの隔離生活について語った。感染に心当たりはなく、恐怖と不安に直面した毎日。身の回りでも感染者が現れ、自責の念にも駆られた。日常を取り戻し、痛感するのは「コロナは目の前にある」ということ。新規感染者が減少傾向にあり、気が緩みやすい大型連休の今こそ、危機感を高く持つべきだと話している。(森西勇太)
《先日PCR検査を受け陽性でした。ご迷惑をおかけして申し訳ない思いもあり、複雑です》
男性が入院直前の4月7日、ユーチューブに投稿した約3分間の動画。感染判明に声を落としながらも、《(動画投稿は)僕にとっての禊(みそぎ)。症状を訴えていきたいと思うので、みなさんが何か感じるものがあったらうれしい》と発した。タイトルは「未知なるウイルスとの闘病生活をお伝えする」。この日から、自らの体験を語っている。
さかのぼること3月28日、発端は寒けと38・6度の発熱だった。病院ではその日のうちに風邪と診断され、解熱剤など複数の薬を処方されたが、38度台の高熱が数日間続いた。4月1日、再び病院へ行くと、今度は扁桃(へんとう)炎と診断された。
コロナ感染を疑った。医師からは「ここじゃ調べられない」「せめて渡航歴がないと」と説明を受けた。しかし帰宅後、感染者の嗅覚や味覚に異常が起きるとのニュースを見た。「まさか」と思いながら、家にあった納豆を嗅いだ。何もにおいがしない。電話で保健所とやり取りし、3日にPCR検査を受けた。2日後、陽性反応が出た。
感染経路に心当たりはない。驚きと不安、経営する音楽事務所への影響。さまざまな思いが交錯した。
入院が決まると、防護服姿の保健所職員が自宅を訪れ、病院まで車で送られた。車内には別の感染者の姿もあったという。
案内されたのは病院の個室。朝と夜に毎日検温を行うが、病室から一歩も出ることはない。
影響は身の回りで広がった。音楽事務所が関係するイベントは軒並み中止に。この頃、仕事で接点があった社員の一人も感染が判明した。「申し訳ない」。罪悪感にさいなまれた。
入院から約1週間が経過。症状が軽くなると、今後は都が用意したホテルへと移った。病院と異なり、外部からの差し入れを受け取ることができなくなった。感染対策として部屋のシーツなどの交換もなかった。「いつまでここで過ごすのか」。隔離生活はストレスの連続だった。
弁当を受け取る際に見かけた他の感染者は日に日に増えていく。感染拡大の現状を間近で感じた。
2回のPCR検査で陰性が確認され、帰宅できたのは19日。最初の悪寒や発熱から約3週間が過ぎていた。取り戻した日常に安堵(あんど)したが、再陽性への恐怖が消えることはない。
ユーチューブへの投稿を今も続けるのは「感染拡大を止めるため、何かできることをやりたい」との思いから。「ふあんくん」との名前で当時の状況を語ったり、感染者に向け役立つ情報を発信したりしている。
先行して緊急事態宣言が発令された大阪などでは、感染者数の減少傾向が伝えられる。だが男性は「とにかく意識を高めてほしい」と呼びかける。心当たりがなくても感染する。つらい療養生活は二度と経験したくない。友人、仕事、関係者。影響が及ぶのは自分だけはないからだ。
改めて訴えるのは、ひとりひとりが危機感を持つことの意義。「コロナは目の前にある」。目に見えぬ脅威に直面した今、強く感じている。
ソース(2020.5.2 18:08)
https://www.sankei.com/smp/west/news/200502/wst2005020015-s1.html