米ジョンズ・ホプキンズ大学が4月27日時点で集計した新型コロナウイルスの感染者数は、累計で300万人を超え、死者数も21万人に達した。WHOのテドロス事務局長は27日、「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)は、終息にはほど遠い」と警鐘を鳴らしたが、欧米ではロックダウン(都市封鎖)を緩和する動きが生じている。
米国では27日、ジョージア州が先陣を切ってロックダウンの一部緩和に踏み切るなど、共和党の知事が治める州を中心に経済活動再開の動きが活発化してきている。欧州でもドイツやオーストリアに続き、域内で最も多くの死者が出したイタリアが5月4日から全土のロックダウンの解除を開始する計画を発表した。
WHOの制止を振り切ってまで経済活動再開に踏み切る背景には、新型コロナウイルスの蔓延による深刻な経済への打撃がある。米国では直近5週間で2650万人が失業保険の申請を行ったことから、4月の失業率は16%を超え、大恐慌並みの水準に達する見込みである(4月27日付ロイター)。一足早く経済が回復軌道にあるとされる中国でも、「失業者は2億人、失業率は25%になった」との調査報告がある(4月6日付サウスチャイナ・モーニングポスト)。
新型コロナウイルスは、社会の分断を引き起こす要因にもなり始めている。米国では、富裕層がニュージーランドに疎開する動きが強まる(4月20日付ブルームバーグ)一方、ホームレス施設で新型コロナウイルス感染が急拡大している(4月22日付ロイター)。ロックダウン解除を求めるデモが各地で広がっている。
欧州でも、富裕層は地中海の別荘にこもり、貧困層が多い人口密集地では死者が激増し、暴動が頻発する事態となっている(4月27日付AFP)。
ロックダウン解除の動きは、これ以上の混乱を回避するための各国政府の苦肉の策だが、新型コロナウイルスを完全に制御しない限り、早すぎる活動再開はかえって痛みを大きくしてしまうことになる。
レムデシビル
安倍晋三首相は27日、「新型コロナウイルス治療薬の候補である『レムデシビル』をまもなく薬事承認できる」との見通しを示したが、私たちが新型コロナウイルスと共存していくためには予防用ワクチンの開発が不可欠であるのはいうまでもない。
中国政府は14日、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験について、安全性などを確かめる第1段階を終了し、有効性などを確かめる第2段階に進んだことを明らかにした。3段階ある臨床試験のうち第2段階に進むのは世界初とのことだが、世界のワクチン開発は当初の予想(1年から1年半かかる)よりも進捗しており、早ければ年内に完成する可能性が出てきている(4月27日付ブルームバーグ)。
大阪府・市、アンジェスと協定締結
世界各国がワクチン開発にしのぎを削るなかにあって、影が薄い印象が強い日本勢だが、筆者は一つの研究プロジェクトに注目している。
大阪府と大阪市は14日、大阪大学発のバイオ企業アンジェスが取り組む新型コロナウイルスのワクチン開発を迅速化するために必要な措置を講ずるための協定を締結した。協定によりアンジェスは7月から大阪市大での臨床試験の開始が可能となり、大阪府の吉村知事は「9月までに実用化を図り、年内に10〜20万人への投与を目指す」としている。
プロジェクトの中心メンバーは大阪大学の森下竜一教授である。開発のキーコンセプトは「DNAワクチン」である。通常のワクチンは、ウイルスを鶏卵などで培養して不活性化した上で患者に接種するが、今回開発するワクチンは、ウイルス本体ではなくウイルスの遺伝子情報を患者に注入する。具体的には、感染に関係するウイルス表面のスパイクタンパク質に関する遺伝子をつくり出すように設計された「プラスミドDNA」を用いる。注射でプラスミドDNAを体内に入れると、ウイルスを注入した場合と同様、体内に抗体ができるという。
通常のワクチンはウイルスを使用するため一定の感染リスクは避けられないが、DNAワクチンは遺伝子の設計図を使うため感染の心配はない。さらに大腸菌を利用して大量培養できることから製造コストが安い。製造に要する期間も通常のワクチンでは供給までに5〜7カ月かかるが、DNAワクチンの場合は2カ月程度ですむとされている。
今年3月時点で森下氏は「臨床試験に入るまでには最低でも半年はかかる」としていた(3月12日付東洋経済オンライン)が、今回の協定締結により、臨床試験の開始が2カ月以上前倒しとなった。
続きはソースで
https://biz-journal.jp/2020/04/post_154614.html
米国では27日、ジョージア州が先陣を切ってロックダウンの一部緩和に踏み切るなど、共和党の知事が治める州を中心に経済活動再開の動きが活発化してきている。欧州でもドイツやオーストリアに続き、域内で最も多くの死者が出したイタリアが5月4日から全土のロックダウンの解除を開始する計画を発表した。
WHOの制止を振り切ってまで経済活動再開に踏み切る背景には、新型コロナウイルスの蔓延による深刻な経済への打撃がある。米国では直近5週間で2650万人が失業保険の申請を行ったことから、4月の失業率は16%を超え、大恐慌並みの水準に達する見込みである(4月27日付ロイター)。一足早く経済が回復軌道にあるとされる中国でも、「失業者は2億人、失業率は25%になった」との調査報告がある(4月6日付サウスチャイナ・モーニングポスト)。
新型コロナウイルスは、社会の分断を引き起こす要因にもなり始めている。米国では、富裕層がニュージーランドに疎開する動きが強まる(4月20日付ブルームバーグ)一方、ホームレス施設で新型コロナウイルス感染が急拡大している(4月22日付ロイター)。ロックダウン解除を求めるデモが各地で広がっている。
欧州でも、富裕層は地中海の別荘にこもり、貧困層が多い人口密集地では死者が激増し、暴動が頻発する事態となっている(4月27日付AFP)。
ロックダウン解除の動きは、これ以上の混乱を回避するための各国政府の苦肉の策だが、新型コロナウイルスを完全に制御しない限り、早すぎる活動再開はかえって痛みを大きくしてしまうことになる。
レムデシビル
安倍晋三首相は27日、「新型コロナウイルス治療薬の候補である『レムデシビル』をまもなく薬事承認できる」との見通しを示したが、私たちが新型コロナウイルスと共存していくためには予防用ワクチンの開発が不可欠であるのはいうまでもない。
中国政府は14日、新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験について、安全性などを確かめる第1段階を終了し、有効性などを確かめる第2段階に進んだことを明らかにした。3段階ある臨床試験のうち第2段階に進むのは世界初とのことだが、世界のワクチン開発は当初の予想(1年から1年半かかる)よりも進捗しており、早ければ年内に完成する可能性が出てきている(4月27日付ブルームバーグ)。
大阪府・市、アンジェスと協定締結
世界各国がワクチン開発にしのぎを削るなかにあって、影が薄い印象が強い日本勢だが、筆者は一つの研究プロジェクトに注目している。
大阪府と大阪市は14日、大阪大学発のバイオ企業アンジェスが取り組む新型コロナウイルスのワクチン開発を迅速化するために必要な措置を講ずるための協定を締結した。協定によりアンジェスは7月から大阪市大での臨床試験の開始が可能となり、大阪府の吉村知事は「9月までに実用化を図り、年内に10〜20万人への投与を目指す」としている。
プロジェクトの中心メンバーは大阪大学の森下竜一教授である。開発のキーコンセプトは「DNAワクチン」である。通常のワクチンは、ウイルスを鶏卵などで培養して不活性化した上で患者に接種するが、今回開発するワクチンは、ウイルス本体ではなくウイルスの遺伝子情報を患者に注入する。具体的には、感染に関係するウイルス表面のスパイクタンパク質に関する遺伝子をつくり出すように設計された「プラスミドDNA」を用いる。注射でプラスミドDNAを体内に入れると、ウイルスを注入した場合と同様、体内に抗体ができるという。
通常のワクチンはウイルスを使用するため一定の感染リスクは避けられないが、DNAワクチンは遺伝子の設計図を使うため感染の心配はない。さらに大腸菌を利用して大量培養できることから製造コストが安い。製造に要する期間も通常のワクチンでは供給までに5〜7カ月かかるが、DNAワクチンの場合は2カ月程度ですむとされている。
今年3月時点で森下氏は「臨床試験に入るまでには最低でも半年はかかる」としていた(3月12日付東洋経済オンライン)が、今回の協定締結により、臨床試験の開始が2カ月以上前倒しとなった。
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https://biz-journal.jp/2020/04/post_154614.html