新型コロナウイルスの感染者増加に伴い発令された緊急事態宣言。粋で華やかな世界に引き寄せられ集まる人々を魅了してきた日本有数の繁華街、東京・銀座にも大きな影を落としている。
都が週末の外出自粛を要請した3月下旬から、徐々に光も音も消えゆく銀座の夜を歩いた。
3月27日。年度末で街がにぎわうはずの金曜午後9時。都が翌日から週末の外出自粛を求め、多くの店で「週末臨時休業」の紙が張られた。道行く人もいつもより少ない。
それでもブランド店や高級クラブが軒を連ねる並木通りには高級外車が並び、間を縫うように次々と空車のタクシーが低速で流していく。
裏通りではホステスの誕生日を祝うコチョウランが並び、客引きの「お兄さん、一杯いかがですか」の声。まだ普段の銀座の夜に見えた。
不要不急の外出自粛要請から1週間が過ぎた4月3日。都が3月末に夜間の外出自粛を強く呼びかけ、前の週よりも更に人が少ない。
午後10時前、優良タクシー乗り場に、おびただしい数の「空車」の列ができていた。銀座7丁目の乗り場から4丁目の交差点を挟んで1丁目付近まで、中央通り沿いにほぼ街をすっぽり覆うほどの車列。
待機していた運転手に聞くと、六本木や歌舞伎町などの繁華街も人がおらず、「銀座ならなんとかなるかも」と集まるのだという。「歩いている人よりタクシーの方が多いね」。大半が客を乗せることなく朝を迎えるのか。
先行して7都府県に緊急事態が宣言された7日。店頭の「週末」臨時休業の張り紙が「解除されるまで」に変わった。
高級ブランド店も防犯のため展示商品を撤去し、ショーケースは空っぽに。見慣れない光景に通りかかった人もスマートフォンで撮影していく。
きらびやかな並木通りも住宅街のような静けさに満ちていた。ネオンはともっているが、高級クラブもほとんどが休業しているようだ。
わずかにすれ違う人々も「ここまでひどいとは思わなかったよ」「銀座にこんなに人がいないのは今までないね」。
銀座の変わりようを嘆く声が、あいさつ代わりになっていた。
「目に見えないウイルスとの戦いは、これまで経験した不況と全く質が違う」。
銀座で働き36年、並木通りでクラブを4店舗経営する望月明美さんは言う。
過去の不況では、ゆっくりと徐々に客足が遠のいていったが、今回は急激に途絶えた。
3月いっぱいは可能な限りの感染対策をして営業を続けたが、悩んだ末に全店を臨時休業。
家賃などの負担も大きいが、「みんなの健康を考えると緊急事態宣言が出たのは正直ほっとしました。それでも店の女の子のことを考えると心配ばかり」。
レンガ通りの4丁目で開いていた、数少ない店に目が留まった。2代目の小泉銀治郎さん(65)が経営し、希少な年代物のワインが棚に並ぶ「銀座屋酒店」。
海外からの観光客が激減し、取引のある料理店も休業となった一方で、家籠もりする常連客からの注文で通信販売が増えた。
「ほとんど赤字だけど、ワインが好きだからやっているだけ」と営業は続けていくという。
発令から1週間がたった14日。午後8時を過ぎると普段の終電後よりも人が減った。行列をなしていたタクシーもすっかり姿を消した。
「ガサ、ガサガサ」。時短営業を終えた飲食店から出たゴミ袋にネズミが群がる音が、通りに響くようになっていた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200420-00000041-mai-soci
4/20(月) 15:00配信
石原裕次郎と牧村旬子「銀座の恋の物語」