新型コロナウイルスの感染拡大や、7日に発令された緊急事態宣言で一気に広がった在宅勤務。自宅で働くのにスーツは必要ない――。働き方が変われば、装い方も変化する。外出自粛で既に衣料品販売は逆風が吹くが、テレワークが企業に定着すれば、消費者のビジネス服に対する考え方が変化する可能性もある。特に紳士服にとっては大きな転換期となりそうだ。
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新型コロナ以降の在宅勤務拡大で、人と会う機会が減った人は少なくないだろう。では、家ではどんな格好でパソコンの前に向かっているのか。
都内在住の40代男性は「上はシャツなどそれなりにきれいにしているが、下はパジャマのような格好」と明かす。ビデオ会議で映るのは上半身だけ。他人から見えないボトムは気を使わない。
スーツなどオフィス向きの装いをすることとは無縁の生活となる。30代の管理職男性も「クリーニングが必要なジャケットも使わないのでクリーニング代も浮いている。服も当然、まったく買ってない」と話す。
女性はどうか。
「ジャケットを新調するつもりだったが、在宅勤務が増えたのでワンピースを買おうと思う」
そう話すのは都内に勤務する会社員、本間道子さん(44)だ。楽だが1枚できちんと見えるからだという。同じく会社員の和泉智香さん(27)も「これまでコンサバだった装いがカジュアルになった」という。
これまでマルイなど、店舗で購入していた和泉さんだが、外出自粛が求められる今は買いに行けない。「せめて気持ちは明るく、と思い、春らしいピンクの服を着たり、大ぶりのピアスを付けたりしている」という。
大手メーカーに勤務する30代女性もきれいめに見える自宅使い用のワンピースにシフト。「ストライプ柄はダメ。パジャマと間違えられかねない」という。「ストッキングは、まずはかなくなった」(40代会社役員)という声も多い。
こうした意識を反映し、アパレル各社も商品展開の変更を余儀なくされる。ある婦人服アパレルは、新型コロナの拡大で春物商品の色の変更を検討中だ。業界全体で白ベースの商品がトレンドだったが、世の中の自粛ムードが広がるなか、グレーに変えようとしているという。「世の中の空気は購入される服の色味にも反映される」(同社)
一方、テレワークによってメークの仕方も変わってきそう。「眉毛くらいしか書いてない。マスクすればいい」(40代女性役員)など、簡素に済ませているようだ。
「徹夜や会食がなくなった分、夜に家で過ごせる時間ができた。この機会にスキンケアをしっかりやりたい」(32歳女性)と、スキンケアへ関心が移っている人もいる。
コロナ収束後も、いったんカジュアルに傾いた消費者の心は簡単には戻らなさそう。ビデオ会議で同僚の装いを見慣れてしまえば、「出社できるようになっても堅い服装をしなくてもいいか」と割り切る人が増える可能性もある。
例年ならば、春物商戦で百貨店や衣料品店はにぎわう時期。だが「この春は買っていない」という消費者が目立つ。
都内に勤務する会社員の森真紀さんは例年、セレクトショップのファミリーセールに友人と出かけ、「トータルで大体5万円ほどは買っていたかも」。しかし今年は出費なし。在宅勤務で、ジャケットも着ていない。
在宅ワークを続ける東京都港区の広告会社勤務の女性(32)は、ネット通販で服を買おうとしてもサイズ感が分からず、結局はフィット感を把握しているユニクロの通販に偏りがちだという。
衣料品の買い控えは、アパレル各社を直撃している。ワールドは3月の既存店売上高が前年同月比41.9%減で、「これまでに経験したことのない落ち込み」(同社)。レナウンの既存店売上高も同42.5%減となった。施設の営業時間短縮や臨時休業に加え、イベントの自粛でよそ行きの衣料品が動かなかったことも響いた。丸井グループも3月の取扱高(速報値)は前年比39%減だ。
衣料品専門店ではしまむらの3月の既存店売上高は前年同月比12%減。カジュアル衣料のアダストリアも3月の客数が前年同月の約8割に落ち込んだ。金銅雅之取締役は「セールをしたところで客が来てくれるような状況ではない」と話す。
今後はさらに状況が悪化しそうだ。百貨店や商業施設は軒並み5月上旬まで1カ月程度の休業に入った。
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57860420Z00C20A4H11A00/