被告会社は不動産やリゾート事業を扱う「シニアメンバーズライフ」(大阪市淀川区)で控訴せず確定。毎日新聞の取材に「担当者がおらずコメントできない」としている。
判決によると、男性は同社関連の不動産会社「ZKR」(13年に倒産)に勧誘されて10〜12年、兵庫県淡路市の山林の土地100平方メートル、和歌山県白浜町の木造2階建て貸し別荘など3件を購入した。「老後のために資産形成をしたい」と考えたという。
だが、ZKRから「受益者負担金」などの名目で年約3万8000円を請求されるなどして出費がかさむ一方、14年度の固定資産税評価額は山林の土地が1680円にとどまるなど、利益が望めないと気づく。男性は息子と二人暮らしで、「負の遺産を残したくない。なんとかして不動産を処分したい」との思いを募らせた。
14年11月、被告会社の従業員が男性方を訪れ、これらの不動産を50万円で下取りする代わりに、全国のリゾート型宿泊施設に10年間、年に20泊できる129万6000円の「リゾート会員権」の購入を勧誘。「不動産処分には登記費や手数料などで60万円かかる」「会員権は1年後、当社などが仲介して90万円ほどで転売できる」などと述べた。男性は持病で旅行が難しく会員権に興味はなかったが、不動産の処分に魅力を感じ、差額の79万6000円を支払って会員権を購入した。
だが、後に会員権は5年以上保有しなければ転売できないとされ、被告会社の仲介もないことが発覚。男性は18年2月、同社と社長を相手取り、慰謝料と弁護士費用を含めて109万5600円の支払いを求め提訴していた。
男性は勝訴したが、判決は被告会社について「ZKRなどから価値の乏しい別荘地不動産を購入して処分に苦慮していた所有者らに、下取りと抱き合わせる形でリゾート会員権購入を勧誘していた」と認定しつつ、「会員権自体が価値のないものであったとまでは認められない」と判断。会員権の価値として10万円を損害額から控除した。
相談件数が増加
国民生活センターによると、原野商法は1970〜80年代に横行。高齢となった被害者の「次世代に負の遺産を残したくない」という心理につけ込む2次被害が増えている。センターへの相談は2017度、前年度の約1・5倍の1699件と急増し、18年度も1589件あった。
リゾート会員権に関する相談は多くはないが、男性の代理人で京都弁護士会の消費者保護委員会委員長の住田浩史弁護士は「会員権をいずれ転売できると信じて保有し続けている被害者も全国にいるだろう」と推測。「会員権の他、別の土地との交換や測量費名目でお金を出させる2次被害もある。いずれも土地を処分したい高齢者を狙った悪質な勧誘で、各地の消費生活センターや弁護士に相談してほしい」と呼びかけている。
被告会社「シニアメンバーズライフ」発行のパンフレットには、土地と「リゾート会員権」の交換制度の説明があった=住田浩史弁護士提供

https://mainichi.jp/articles/20200319/k00/00m/040/035000c