※夜の政治
※一分抜粋
2020/3/16 11:00 (JST)
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政府による新型コロナウイルス感染症の対応は、小中高校の一斉休校の要請という形で、私たちの日常生活に直接介入することとなった。2月27日、安倍晋三首相を本部長とし閣僚らで構成する対策本部会議で突如決定され、同29日に首相が記者会見、3月2日から休校と急展開し、国民の間には動揺が広がった。
ここで問題にしたいのは、政府が、国民の理解を得るだけの十分な根拠を示しているかだ。意思決定の過程とともに事実を客観的に情報公開することは、感染が日々拡大し、国民の不安が高まっている現在、特に求められる。しかし逆を行くのが、決めたことを知らせて説得することに偏重した、安倍政権の情報公開に対する姿勢ではないか。(情報公開クリアリングハウス理事長=三木由希子)
▽政府が犯した失敗
政府がそれまでに公開した情報には、一斉休校要請の必要性を裏付ける根拠やデータがなく、多くの国民がそこまでする必要があるとは考えていなかった。
もちろん、感染症への対応は現在進行形であり、政府内で一時的な混乱が生じたり、時には首相が政治判断を迫られたりすることもあるだろう。しかし、多くの人に協力と理解、負担を求める中で、情報公開の遅れや不徹底、意思決定の不透明さは、新たなリスクや負担、混乱の原因になる。
実際に起きた混乱の一つが、感染の有無を調べるPCR検査を巡ってであろう。政府は、1日あたりの検査可能件数について、2月18日までに3800件に拡充したと発表した。ところが同18日〜24日の実施件数は1日平均約900件にとどまったことが、2月26日の国会審議で明らかになった。また、保健所が検査を断った事例があることも判明した。
こうした状況から何が生じたか。「感染事例を少なく見せかけるために、検査を制限しているのではないか」「重症化しないと検査してもらえないのではないか」といった政府への不満、不信だ。
政府が広報したかったのは、1日あたりの検査可能件数が「拡大した」との点。それに偏重した情報発信を続けた結果、政府発表と現実とのギャップを肌で感じていた国民が不信感を募らせたのだ。検査の実施状況や条件など、国民の理解を得るための情報を伝えないという失敗をしている。
加藤勝信厚生労働相は3月5日、都道府県別の検査実施件数を公表する意向を示し、10日になってようやく公表した。現状を客観的、迅速に伝えようとしない姿勢が、国民の不安や不信を招いていることを政府は自覚するべきだ。
※中略
▽ブラックボックス化する連絡会議
一方、国会答弁などによると、一斉休校は、対策本部会議前に開かれた「連絡会議」で実質的な議論が行われたことが判明している。安倍首相の下、菅義偉官房長官や加藤厚労相、官僚らが協議して判断したとされる。つまり対策本部は、事前調整や協議が終わった案件を追認し最終決定する場に過ぎないと考えられる。
そうであれば意思決定に至る重要な過程である連絡会議の記録を残さなければ意味がない。公文書管理法が、過程の文書作成を義務づけているのもそのためだ。ただ連絡会議の議事録は作られていないという。驚くべきことだ。記録保存の重要性を理解していないのか、残せない理由があるのかと疑われても仕方ない。
※中略
さらに安倍首相は、連絡会議について「政策の決定や了解を行う会議」には該当しないとして、何らかの記録は作るが、議事録作成には否定的だ。これでは、一斉休校などさまざまな判断がどのようになされたか、国民が知ることができないだろう。将来の教訓として生かすこともできない。
▽政治判断であいまいになる責任の所在
※以下省略