■グアダルピアン世末の絶滅は、生態系を一変させる「大量絶滅」だった
現代の生物多様性の危機は、しばしば「第6の大量絶滅」と呼ばれる。だが、これからは第7の大量絶滅と呼ぶべきかもしれない。過去にもう一つ大量絶滅があったとする研究成果が発表された。(参考記事:「6度目の大絶滅。人類は生き延びられるか?」)
従来、大規模な大量絶滅は過去に5度あったと考えられてきた。1982年に米シカゴ大学の古生物学者ジャック・セプコスキー氏とデビッド・ラウプ氏が提唱した、いわゆる「ビッグ・ファイブ」だ。なかでも最大だったのが、約2億5200万年前のペルム紀末に起きた大量絶滅で、海洋生物の95%が絶滅したとされる。
ペルム紀末の大量絶滅は、そのわずか800万年前のペルム紀グアダルピアン世の終わりに起きた絶滅事件を見えにくくしていた。しかし、ここ30年の間にグアダルピアン世末の調査が進み、ペルム紀末の大量絶滅とは独立した絶滅であることがわかってきた。そして今、グアダルピアン世末の絶滅は他の大量絶滅に匹敵するものであり、これらを合わせて「ビッグ・シックス」と呼ぶべきだと、一部の研究者は主張している。
生命の歴史の中では多くの絶滅事件が起きている。なかでも規模の大きいものを調べることで、地質学者たちは絶滅のパターンや、共通の原因を明らかにしつつある。集まってきた証拠は、地球規模の絶滅の多くが海洋酸素濃度の低下と関連していることを示唆している。グアダルピアン世末の絶滅にも同じ傾向が見られるほか、現在の気候変動との関連も心配されている。
「5という数字にこだわるのは問題です」と、海洋古生態学者で米バージニア工科大学古生物学名誉教授であるリチャード・バンバック氏は言う。バンバック氏は、セプコスキー氏とラウプ氏の論文の査読をした人物だ。パーセンテージで見ると、ペルム紀末の大量絶滅は大半の生物を死滅させた。しかし彼によると、グアダルピアン世末の絶滅は、生物多様性を大きく損なった。
「生の数値データで言えば、グアダルピアン世末の絶滅で失われた分類群の数は、ペルム紀末の絶滅で失われた数よりも多かったのです」と、バンバック氏は語る。
■溶岩の洪水が起きた地形
中国南西部に峨眉山(がびさん)トラップと呼ばれる地形がある。2億6000万年前のグアダルピアン世末に海底火山が噴火し、その溶岩が100万平方キロにわたって広がった名残である。この噴火で発生した大量のメタンと二酸化炭素は気候変動を引き起こし、海洋生物の60%が絶滅した。絶滅した生物の大半が、超大陸パンゲア周辺の熱帯の浅い海に生息していたものだった。
峨眉山トラップのような溶岩が広がってできた地形「洪水玄武岩」は世界各地にあり、5つの大量絶滅と関連づけられている。米ニューヨーク大学の地質学者マイケル・ランピーノ氏は、「1対1の関係があります」と言う。(参考記事:「世界最大の火山が覆る、日本東方沖の「タム山塊」」)
しかし、研究者は昔から大量絶滅を洪水玄武岩と関連付けていたわけではない。1980年代に非鳥類型恐竜は小惑星の衝突により絶滅したとする仮説が発表されて以来、ランピーノ氏をはじめとする地質学者たちは、その他の大量絶滅を説明するために小惑星衝突の証拠を探し回った。しかし、成果は得られなかった。
そこでランピーノ氏が目を向けたのが洪水玄武岩だった。インドのデカン・トラップは、白亜紀末の大量絶滅や、その原因とされる小惑星の衝突跡であるチクシュルーブ・クレーターと同じ頃に形成されたものだからだ。ペルム紀末には、さらに大規模なシベリア・トラップが形成されている。
「私はこうして小惑星衝突説から火山活動説に転向したのです」とランピーノ氏は言う。氏は過去10年、洪水玄武岩を大量絶滅や海の酸素濃度と関連づける研究を続けている。
続きはソースで
ナショナルジオグラフィック日本版サイト
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/121900745/
現代の生物多様性の危機は、しばしば「第6の大量絶滅」と呼ばれる。だが、これからは第7の大量絶滅と呼ぶべきかもしれない。過去にもう一つ大量絶滅があったとする研究成果が発表された。(参考記事:「6度目の大絶滅。人類は生き延びられるか?」)
従来、大規模な大量絶滅は過去に5度あったと考えられてきた。1982年に米シカゴ大学の古生物学者ジャック・セプコスキー氏とデビッド・ラウプ氏が提唱した、いわゆる「ビッグ・ファイブ」だ。なかでも最大だったのが、約2億5200万年前のペルム紀末に起きた大量絶滅で、海洋生物の95%が絶滅したとされる。
ペルム紀末の大量絶滅は、そのわずか800万年前のペルム紀グアダルピアン世の終わりに起きた絶滅事件を見えにくくしていた。しかし、ここ30年の間にグアダルピアン世末の調査が進み、ペルム紀末の大量絶滅とは独立した絶滅であることがわかってきた。そして今、グアダルピアン世末の絶滅は他の大量絶滅に匹敵するものであり、これらを合わせて「ビッグ・シックス」と呼ぶべきだと、一部の研究者は主張している。
生命の歴史の中では多くの絶滅事件が起きている。なかでも規模の大きいものを調べることで、地質学者たちは絶滅のパターンや、共通の原因を明らかにしつつある。集まってきた証拠は、地球規模の絶滅の多くが海洋酸素濃度の低下と関連していることを示唆している。グアダルピアン世末の絶滅にも同じ傾向が見られるほか、現在の気候変動との関連も心配されている。
「5という数字にこだわるのは問題です」と、海洋古生態学者で米バージニア工科大学古生物学名誉教授であるリチャード・バンバック氏は言う。バンバック氏は、セプコスキー氏とラウプ氏の論文の査読をした人物だ。パーセンテージで見ると、ペルム紀末の大量絶滅は大半の生物を死滅させた。しかし彼によると、グアダルピアン世末の絶滅は、生物多様性を大きく損なった。
「生の数値データで言えば、グアダルピアン世末の絶滅で失われた分類群の数は、ペルム紀末の絶滅で失われた数よりも多かったのです」と、バンバック氏は語る。
■溶岩の洪水が起きた地形
中国南西部に峨眉山(がびさん)トラップと呼ばれる地形がある。2億6000万年前のグアダルピアン世末に海底火山が噴火し、その溶岩が100万平方キロにわたって広がった名残である。この噴火で発生した大量のメタンと二酸化炭素は気候変動を引き起こし、海洋生物の60%が絶滅した。絶滅した生物の大半が、超大陸パンゲア周辺の熱帯の浅い海に生息していたものだった。
峨眉山トラップのような溶岩が広がってできた地形「洪水玄武岩」は世界各地にあり、5つの大量絶滅と関連づけられている。米ニューヨーク大学の地質学者マイケル・ランピーノ氏は、「1対1の関係があります」と言う。(参考記事:「世界最大の火山が覆る、日本東方沖の「タム山塊」」)
しかし、研究者は昔から大量絶滅を洪水玄武岩と関連付けていたわけではない。1980年代に非鳥類型恐竜は小惑星の衝突により絶滅したとする仮説が発表されて以来、ランピーノ氏をはじめとする地質学者たちは、その他の大量絶滅を説明するために小惑星衝突の証拠を探し回った。しかし、成果は得られなかった。
そこでランピーノ氏が目を向けたのが洪水玄武岩だった。インドのデカン・トラップは、白亜紀末の大量絶滅や、その原因とされる小惑星の衝突跡であるチクシュルーブ・クレーターと同じ頃に形成されたものだからだ。ペルム紀末には、さらに大規模なシベリア・トラップが形成されている。
「私はこうして小惑星衝突説から火山活動説に転向したのです」とランピーノ氏は言う。氏は過去10年、洪水玄武岩を大量絶滅や海の酸素濃度と関連づける研究を続けている。
続きはソースで
ナショナルジオグラフィック日本版サイト
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/121900745/