https://mainichi.jp/articles/20191025/k00/00m/040/306000c
支川ポンプ止めず職員避難 本川合流地点近くで決壊 埼玉・越辺川
毎日新聞 2019年10月25日 19時58分(最終更新 10月25日 19時58分)
台風19号の影響で堤防が決壊した越辺(おっぺ)川(埼玉県川越市など)で、台風が最接近した12日夜、支川(しせん)から本川(ほんせん)に水を排出する排水ポンプ場2カ所でポンプを稼働させたまま施設職員が避難していたことが管理者への取材で判明した。管理者側は「支川があふれる恐れがあった」と説明している。本川と支川の合流地点近くでは13日未明に決壊し、特別養護老人ホームが一時孤立するなどの浸水被害が出た。
水害対策の支川のポンプ場は、本川が堤防の計画高水位に達した場合はポンプを止めることを原則とする施設が多いが、ポンプを止めると支川が氾濫する恐れがあり、管理する自治体は難しい判断を迫られている。
稼働させたままになっていたのは、決壊地点の上流約100メートルにある「大谷(おおや)川雨水ポンプ場」と上流約3キロにある「飯盛(いいもり)川排水機場」。大雨の際は支川への逆流を防ぐために水門を閉め、支川の水をポンプでくみ上げて本川に排出する。
飯盛川の施設は県が坂戸市に管理を委託し、大谷川は「坂戸、鶴ケ島下水道組合」が管理する。県などによると、両施設とも担当職員が12日午後3時までに水門を閉め、排水ポンプを稼働させた。午後6時ごろには越辺川が17〜19メートルの計画高水位に迫ってきたため、午後7時までに全員避難した。いずれも排水ポンプは稼働させたまま離れた。
河川法に基づく河川管理施設の操作規則は通常、本川の水量が計画高水位に達した場合、決壊を防ぐために排水ポンプを止めなければならないと定める。県のガイドラインは、職員に危険が迫り避難して無人となる際は、ポンプを止めなければならないとしている。飯盛川には13日午前1時に県職員が駆けつけ水位を監視したが、大谷川は無人のまま支川の水を排出し続けた。越辺川の堤防は13日午前5時半ごろまでに決壊した。
県飯能県土整備事務所の担当者は、飯盛川の施設について「坂戸市から職員避難の連絡を受け、ポンプを止めるよう依頼したが断られた。深夜に現場に向かい、水位が下がっていたことから排水を続けた」と証言する。これに対し、坂戸市道路河川課は「ポンプを止めれば飯盛川周辺一帯の大きな被害につながると考え、県に稼働を続けたいと伝えた」と話す。
大谷川の施設を管理する下水道組合の担当者は「(本川が)決壊するとは誰も考えなかった。ポンプを止めると大谷川があふれると判断した」とやむをえない措置だったと強調する。大谷川のポンプは浸水によって止まった。
大串浩一郎・佐賀大教授(水工学)は「ポンプを止めたくない気持ちは分かるが、支川の各施設が同様のことをしたら本川の決壊の危険性が高まってしまう。ポンプを止めた場合にどのようなリスクがあるかを含めて、平時に管理者が議論し、どうすべきか決めておくべきではないか」と話している。【鷲頭彰子】
決壊直後の越辺川の堤防。右側が越辺川、奥の建物が大谷川雨水ポンプ場=埼玉県川越市平塚新田で2019年10月15日午前11時半、仲村隆撮影
越辺川の堤防決壊場所
支川ポンプ止めず職員避難 本川合流地点近くで決壊 埼玉・越辺川
毎日新聞 2019年10月25日 19時58分(最終更新 10月25日 19時58分)
台風19号の影響で堤防が決壊した越辺(おっぺ)川(埼玉県川越市など)で、台風が最接近した12日夜、支川(しせん)から本川(ほんせん)に水を排出する排水ポンプ場2カ所でポンプを稼働させたまま施設職員が避難していたことが管理者への取材で判明した。管理者側は「支川があふれる恐れがあった」と説明している。本川と支川の合流地点近くでは13日未明に決壊し、特別養護老人ホームが一時孤立するなどの浸水被害が出た。
水害対策の支川のポンプ場は、本川が堤防の計画高水位に達した場合はポンプを止めることを原則とする施設が多いが、ポンプを止めると支川が氾濫する恐れがあり、管理する自治体は難しい判断を迫られている。
稼働させたままになっていたのは、決壊地点の上流約100メートルにある「大谷(おおや)川雨水ポンプ場」と上流約3キロにある「飯盛(いいもり)川排水機場」。大雨の際は支川への逆流を防ぐために水門を閉め、支川の水をポンプでくみ上げて本川に排出する。
飯盛川の施設は県が坂戸市に管理を委託し、大谷川は「坂戸、鶴ケ島下水道組合」が管理する。県などによると、両施設とも担当職員が12日午後3時までに水門を閉め、排水ポンプを稼働させた。午後6時ごろには越辺川が17〜19メートルの計画高水位に迫ってきたため、午後7時までに全員避難した。いずれも排水ポンプは稼働させたまま離れた。
河川法に基づく河川管理施設の操作規則は通常、本川の水量が計画高水位に達した場合、決壊を防ぐために排水ポンプを止めなければならないと定める。県のガイドラインは、職員に危険が迫り避難して無人となる際は、ポンプを止めなければならないとしている。飯盛川には13日午前1時に県職員が駆けつけ水位を監視したが、大谷川は無人のまま支川の水を排出し続けた。越辺川の堤防は13日午前5時半ごろまでに決壊した。
県飯能県土整備事務所の担当者は、飯盛川の施設について「坂戸市から職員避難の連絡を受け、ポンプを止めるよう依頼したが断られた。深夜に現場に向かい、水位が下がっていたことから排水を続けた」と証言する。これに対し、坂戸市道路河川課は「ポンプを止めれば飯盛川周辺一帯の大きな被害につながると考え、県に稼働を続けたいと伝えた」と話す。
大谷川の施設を管理する下水道組合の担当者は「(本川が)決壊するとは誰も考えなかった。ポンプを止めると大谷川があふれると判断した」とやむをえない措置だったと強調する。大谷川のポンプは浸水によって止まった。
大串浩一郎・佐賀大教授(水工学)は「ポンプを止めたくない気持ちは分かるが、支川の各施設が同様のことをしたら本川の決壊の危険性が高まってしまう。ポンプを止めた場合にどのようなリスクがあるかを含めて、平時に管理者が議論し、どうすべきか決めておくべきではないか」と話している。【鷲頭彰子】
決壊直後の越辺川の堤防。右側が越辺川、奥の建物が大谷川雨水ポンプ場=埼玉県川越市平塚新田で2019年10月15日午前11時半、仲村隆撮影
越辺川の堤防決壊場所