NDの新首相、キリアコス・ミツォタキス新首相。写真は2016年時。photo by EPP via flickr (CC BY 2.0)
■「シリザ」政権に終止符が打たれたギリシャ
7月7日のギリシャ総選挙で4年半に亘る急進左派連(SYRIZA)の政権に終止符が打たれた。
ギリシャは軍事政権のあと1970年代から新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の2党による政権が繰り返されていた。
ところが、2009年に政権に就いたPASOKはギリシャが欧州連合(EU)に加盟するのに当時のNDの政権が財政赤字を粉飾していたということを明らかにしたのである。
それを手助けしたのはゴールドマンサックスであった。この国家財政の粉飾事件をきっかけにギリシャの国際的信頼は一挙に失墜し財政危機に突入したのである。それを裏付ける加盟当時のギリシャの負債はGDPの113%、財政赤字も加盟の為の条件3%を大幅に上回って13%を記録していたのであった。
その結果、ギリシャはPASOK政権下の2010年とND政権下の2012年の2回に亘って欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカから金融支援を受けねばならなくなったのである。その後もギリシャの経済の後退は続き、失業者も増加。40年続いた2大政党による政治に国民からの不満が一挙に爆発して金融支援の返済条件の再編や雇用の回復などを訴えたSYRIZAの台頭を促すことになったのである。
2015年にSYRIZAは政権に就いたが、トロイカと負債の返済再編を交渉するどころか、逆に3回目の融資を受けねばならない羽目になったのであった。その前に、SYRIZAはトロイカを牽制する意味もあってユーロからの離脱やロシアからの融資を受ける用意があるといったことも指摘していた。
※省略
■若者票で意外にも善戦した7月選挙のSYRIZA
※省略
■ギリシャ3大名家の出である新首相
そのギリシャを引き受けることになった新民主主義党(ND)キリアコス・ミツォタキス新首相(51)のファミリーはギリシャで最も影響力のある3つのファミリーのひとつである。彼の父親コンスタンティノス・ミツォタキスは90年代に首相を歴任、姉は外相経験者。姉の息子は先月アテネの市長になっている。
キリアコスは経営学をハーバード大そして国際政治をスタンフォード大で学び、マッキンゼー社に勤務していた。2013年には自治改革大臣を歴任。彼の夫人マレヴァはアパレル企業の創業者である。(参照:「El Mundo」)
「ミツォタキスは私の最後の期待だ。もし彼がそれに応えられないとなると、誰が出来ようか?」と語ったのは年金受給者のジオルゴスだ。
またタクシー運転手のヨルゴスは「ミツォタキス一家のことは誰もが知っている。他に選択の余地があるかい?これがギリシアにあるだけだ」と語ってPASOKの元投票者である彼は中ば諦め気味に答えたそうだ。(参照:「Publico」)
■打ち出すのは「法人税&消費税減税」
ミツォタキスの政策の基本は減税である。法人税を2年で28%から20%に引き下げる。消費税も2%引き下げ、所得税で1万ユーロ(130万円)以下の年収者に対し22%から9%に引き下げる。また最低賃金の値上げ。また、外国からの1000億ユーロ(13兆円)の投資があることを目標にしているという。(参照:「El Periodico」、「El Mundo」)
ミツォタキスが提案している民営化の推進については、彼が何か秘策を持っているはずだと指摘しているのは政治評論家のディミトゥリス・ラピディスだ。チプラスも民営化を進めていたが、中途半端で終わっている。(参照:「El Congidencial」)
ミツォタキスが期待しているのはEU委員会のメンバーが今年後半に刷新されることだ。ECBの総裁にIMFの専務理事ラガルドが就任することになっているが、彼女はギリシャの負債の返済には再編が必要だと常々主張していた。またEU委員長に就任するフォンデアライエンはユンケル委員長よりもよりセンシブルだと評価して交渉し易い相手だとミツォタキスは期待しているという。(参照:「La Nacion」)
また、ミツォタキスの勝利に外国から最初に祝福したのは宿命的な敵とされているトルコのエルドアン大統領だったそうだ。(参照:「ABC」) <文/白石和幸>
7/16(火) 15:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190716-00197050-hbolz-int
![【国際】ギリシャ、シリザ政権に終止符…新首相は“法人税&消費税減税”と“最低賃金引き上げ”を打ち出す ->画像>1枚](https://amd.c.yimg.jp/amd/20190716-00197050-hbolz-000-1-view.jpg)
■「シリザ」政権に終止符が打たれたギリシャ
7月7日のギリシャ総選挙で4年半に亘る急進左派連(SYRIZA)の政権に終止符が打たれた。
ギリシャは軍事政権のあと1970年代から新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の2党による政権が繰り返されていた。
ところが、2009年に政権に就いたPASOKはギリシャが欧州連合(EU)に加盟するのに当時のNDの政権が財政赤字を粉飾していたということを明らかにしたのである。
それを手助けしたのはゴールドマンサックスであった。この国家財政の粉飾事件をきっかけにギリシャの国際的信頼は一挙に失墜し財政危機に突入したのである。それを裏付ける加盟当時のギリシャの負債はGDPの113%、財政赤字も加盟の為の条件3%を大幅に上回って13%を記録していたのであった。
その結果、ギリシャはPASOK政権下の2010年とND政権下の2012年の2回に亘って欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカから金融支援を受けねばならなくなったのである。その後もギリシャの経済の後退は続き、失業者も増加。40年続いた2大政党による政治に国民からの不満が一挙に爆発して金融支援の返済条件の再編や雇用の回復などを訴えたSYRIZAの台頭を促すことになったのである。
2015年にSYRIZAは政権に就いたが、トロイカと負債の返済再編を交渉するどころか、逆に3回目の融資を受けねばならない羽目になったのであった。その前に、SYRIZAはトロイカを牽制する意味もあってユーロからの離脱やロシアからの融資を受ける用意があるといったことも指摘していた。
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■若者票で意外にも善戦した7月選挙のSYRIZA
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■ギリシャ3大名家の出である新首相
そのギリシャを引き受けることになった新民主主義党(ND)キリアコス・ミツォタキス新首相(51)のファミリーはギリシャで最も影響力のある3つのファミリーのひとつである。彼の父親コンスタンティノス・ミツォタキスは90年代に首相を歴任、姉は外相経験者。姉の息子は先月アテネの市長になっている。
キリアコスは経営学をハーバード大そして国際政治をスタンフォード大で学び、マッキンゼー社に勤務していた。2013年には自治改革大臣を歴任。彼の夫人マレヴァはアパレル企業の創業者である。(参照:「El Mundo」)
「ミツォタキスは私の最後の期待だ。もし彼がそれに応えられないとなると、誰が出来ようか?」と語ったのは年金受給者のジオルゴスだ。
またタクシー運転手のヨルゴスは「ミツォタキス一家のことは誰もが知っている。他に選択の余地があるかい?これがギリシアにあるだけだ」と語ってPASOKの元投票者である彼は中ば諦め気味に答えたそうだ。(参照:「Publico」)
■打ち出すのは「法人税&消費税減税」
ミツォタキスの政策の基本は減税である。法人税を2年で28%から20%に引き下げる。消費税も2%引き下げ、所得税で1万ユーロ(130万円)以下の年収者に対し22%から9%に引き下げる。また最低賃金の値上げ。また、外国からの1000億ユーロ(13兆円)の投資があることを目標にしているという。(参照:「El Periodico」、「El Mundo」)
ミツォタキスが提案している民営化の推進については、彼が何か秘策を持っているはずだと指摘しているのは政治評論家のディミトゥリス・ラピディスだ。チプラスも民営化を進めていたが、中途半端で終わっている。(参照:「El Congidencial」)
ミツォタキスが期待しているのはEU委員会のメンバーが今年後半に刷新されることだ。ECBの総裁にIMFの専務理事ラガルドが就任することになっているが、彼女はギリシャの負債の返済には再編が必要だと常々主張していた。またEU委員長に就任するフォンデアライエンはユンケル委員長よりもよりセンシブルだと評価して交渉し易い相手だとミツォタキスは期待しているという。(参照:「La Nacion」)
また、ミツォタキスの勝利に外国から最初に祝福したのは宿命的な敵とされているトルコのエルドアン大統領だったそうだ。(参照:「ABC」) <文/白石和幸>
7/16(火) 15:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190716-00197050-hbolz-int