https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190708-00010000-yom-sctch
地球温暖化の影響でシベリアの永久凍土がとけて、凍ったマンモスが数多く掘り出されるようになった。
体の組織を分析して進化や絶滅の謎を探るだけでなく、マンモスそのものの復活を目指す研究も進められている。
■寒さに強くなる遺伝子、探す試みも
アフリカにいたゾウの仲間が、約500万年前に毛のない原始的なマンモスへと進化し、ヨーロッパやアジアへ広がっていった。
「マンモス」として一般に知られているのは、「ケナガマンモス」という種類で、40万年前から1万年前にかけて、寒冷な草原地帯にすんでいた。
ケナガマンモス(以下、マンモスと略)が、密生した体毛や厚い皮下脂肪、小さくて丸い耳など寒さに強い特徴を備えているのは
保存状態のよい死骸からわかっていた。
だが、DNAなどを分析する最近の研究によって、身体機能も寒冷地仕様に進化していたことが明らかになってきた。
カナダの研究者らが、血液中のたんぱく質「ヘモグロビン」をつくる遺伝子の塩基配列を調べたところ、マンモスのヘモグロビンは
低温でも体の末端まで酸素を運搬できるタイプに変化していた。
また、米シカゴ大の研究者らは、温度感受性を調節する遺伝子が、マンモスでは低温に適応するように働いていたことを突き止めた。
毛の長さや脂肪の厚さにも影響したと推測している。
近畿大生物理工学部の宮本裕史教授らは、2010年にロシア北部・サハ共和国で発掘された2万8000年前のマンモスの核DNAの解読に挑み、
アフリカゾウと比較した。
その結果、配列の違う部分が約2700万か所もあったと、今年3月に発表した。
教授らは、この膨大な配列の中から、寒さに強くなる遺伝子を探し出そうとしている。
略
■近大、クローンに代わる計画を模索
近畿大と韓国の研究機関は、それぞれロシアと協力しながら、マンモスをクローン再生させる研究を進めていた。
マンモスの細胞核をアジアゾウの卵子に移植して細胞分裂を起こさせ、ゾウの子宮に入れてマンモスの赤ちゃんを誕生させようという試みだった。
だが、凍結マンモスの体は新鮮そうに見えても、DNAがずたずたの細胞核しか見つからず、近畿大は今年、クローン計画を断念することを明らかにしている。
いま注目されているのは、別の方法だ。
米ハーバード大のジョージ・チャーチ教授らが、ゲノム編集など生命工学技術を用いてアジアゾウの遺伝子を改変し、
マンモスの特徴を備えたゾウを作り出そうとしているのだ。
ただ、こちらの計画も順調とは言えない。遺伝子を改変するにはアジアゾウの卵子が必要だが、アジアゾウは5年に1度しか排卵しないため、
手に入れるのが難しい。
代理母となるメスのゾウを確保するのは、もっと困難だ。ハーバード大は、マンモス用の人工子宮の開発にも取り組んでいるという。
一方、クローンに代わる計画を模索している近畿大は、卵子よりも入手しやすいアジアゾウの皮膚の細胞を改変し、
まず「人工マンモス細胞」(図参照)を作り出す研究を検討している。
◇
東京都江東区の日本科学未来館で開催中の「マンモス展」(読売新聞社など主催)では、マンモス絶滅の謎や近畿大の復活プロジェクトについても
ボードなどを使ってわかりやすく解説している。11月4日まで。福岡、名古屋、大阪でも巡回展を開く予定だ。
地球温暖化の影響でシベリアの永久凍土がとけて、凍ったマンモスが数多く掘り出されるようになった。
体の組織を分析して進化や絶滅の謎を探るだけでなく、マンモスそのものの復活を目指す研究も進められている。
■寒さに強くなる遺伝子、探す試みも
アフリカにいたゾウの仲間が、約500万年前に毛のない原始的なマンモスへと進化し、ヨーロッパやアジアへ広がっていった。
「マンモス」として一般に知られているのは、「ケナガマンモス」という種類で、40万年前から1万年前にかけて、寒冷な草原地帯にすんでいた。
ケナガマンモス(以下、マンモスと略)が、密生した体毛や厚い皮下脂肪、小さくて丸い耳など寒さに強い特徴を備えているのは
保存状態のよい死骸からわかっていた。
だが、DNAなどを分析する最近の研究によって、身体機能も寒冷地仕様に進化していたことが明らかになってきた。
カナダの研究者らが、血液中のたんぱく質「ヘモグロビン」をつくる遺伝子の塩基配列を調べたところ、マンモスのヘモグロビンは
低温でも体の末端まで酸素を運搬できるタイプに変化していた。
また、米シカゴ大の研究者らは、温度感受性を調節する遺伝子が、マンモスでは低温に適応するように働いていたことを突き止めた。
毛の長さや脂肪の厚さにも影響したと推測している。
近畿大生物理工学部の宮本裕史教授らは、2010年にロシア北部・サハ共和国で発掘された2万8000年前のマンモスの核DNAの解読に挑み、
アフリカゾウと比較した。
その結果、配列の違う部分が約2700万か所もあったと、今年3月に発表した。
教授らは、この膨大な配列の中から、寒さに強くなる遺伝子を探し出そうとしている。
略
■近大、クローンに代わる計画を模索
近畿大と韓国の研究機関は、それぞれロシアと協力しながら、マンモスをクローン再生させる研究を進めていた。
マンモスの細胞核をアジアゾウの卵子に移植して細胞分裂を起こさせ、ゾウの子宮に入れてマンモスの赤ちゃんを誕生させようという試みだった。
だが、凍結マンモスの体は新鮮そうに見えても、DNAがずたずたの細胞核しか見つからず、近畿大は今年、クローン計画を断念することを明らかにしている。
いま注目されているのは、別の方法だ。
米ハーバード大のジョージ・チャーチ教授らが、ゲノム編集など生命工学技術を用いてアジアゾウの遺伝子を改変し、
マンモスの特徴を備えたゾウを作り出そうとしているのだ。
ただ、こちらの計画も順調とは言えない。遺伝子を改変するにはアジアゾウの卵子が必要だが、アジアゾウは5年に1度しか排卵しないため、
手に入れるのが難しい。
代理母となるメスのゾウを確保するのは、もっと困難だ。ハーバード大は、マンモス用の人工子宮の開発にも取り組んでいるという。
一方、クローンに代わる計画を模索している近畿大は、卵子よりも入手しやすいアジアゾウの皮膚の細胞を改変し、
まず「人工マンモス細胞」(図参照)を作り出す研究を検討している。
◇
東京都江東区の日本科学未来館で開催中の「マンモス展」(読売新聞社など主催)では、マンモス絶滅の謎や近畿大の復活プロジェクトについても
ボードなどを使ってわかりやすく解説している。11月4日まで。福岡、名古屋、大阪でも巡回展を開く予定だ。